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一人の方が楽。でも、それだけじゃない
「一人の方が楽なんです」
相手はそう言った。
探偵は頷く。
「そうだろうな」
「人といると、面倒だ」
「気を遣って」
「合わせて」
「空気読んで」
コーヒーを飲む。
「一人なら、それがない」
相手は少し安心した顔をする。
「じゃあ、このままでいいんですかね」
探偵は少し考えた。
「一人は楽だ」
一拍。
「でも、寂しさとセットだ」
相手は黙る。
「人といるのは面倒だ」
「でも」
「寂しさは、少し忘れられる」
少し間。
「喜びもある」
相手は小さく息を吐いた。
「……基本は一人で、たまに遊ぶ友達がいるくらいがいいのかな……」
探偵は頷く。
「それもありだろうな」
一拍。
「浅い関係なら、傷つくことは少ない」
「その代わり、喜びも薄い」
相手はしばらく黙っていた。
「……これも、やっぱり」
探偵は頷く。
「どっちかは、削れる」
相手はしばらく黙っていた。
それから、小さく息を吐く。
「……そっか」
ほんの少しだけ、表情が緩む。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
立ち上がり、軽く頭を下げる。
来た時よりも、ほんの少しだけ足取りが軽い。
ドアが閉まる。
探偵はソファに背を預けた。
「楽な方ばっか選ぶと」
一拍。
「残るもんも、薄くなる」




