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何で皆、当たり前みたいに付き合って結婚するのか

「何で皆、当たり前みたいに付き合って結婚してるんですか」


 少し苛立った声だった。


 探偵はコーヒーを飲む。


「当たり前じゃない」


「え?」


「そう見えるだけだ」


 相手は眉をひそめる。


「でも、周りみんなしてますよ」


「してるやつが目につくだけだ」


 探偵は言う。


「してないやつは、わざわざ言わない」


 少し間。


「それに」


「付き合って結婚してるやつも」


「全員が納得してやってるわけじゃない」


 相手は黙る。


「流れでやってるやつもいる」

「周りに合わせてるやつもいる」

「一人が怖いだけのやつもいる」


 コーヒーを置く。


「逆に」


「ちゃんと選んでるやつもいる」


 少し間。


「どっちが正しいって話じゃない」


 相手は小さく息を吐いた。


「……じゃあ、どうすればいいんですか」


 探偵は肩をすくめた。


「自分で決めろ」


「周り見て決めるな」


 カップを手に取る。


「何で皆、やってるのかって話なら」


 一拍。


「安心したいんだろ」


 相手は少しだけ目を見開く。


「……安心?」


「何となく、皆と同じだと安心する」


 少し間。


「それだけだ」


「それだけで、そんな大きな決断するんですか」


 一拍。


 探偵は答える。


「……する奴は多い」


 静かに言った。


相手はしばらく黙っていた。


 それから、小さく息を吐く。


「……そっか」


 少しだけ、肩の力が抜けたように見えた。


「ありがとうございました」


「どういたしまして」


 立ち上がり、軽く頭を下げる。


 来た時よりも、ほんの少しだけ、足取りが軽い。


 ドアが閉まる。


 探偵はソファに背を預けた。


「あとは」


 一拍。


「あんた次第だ」

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