メアリス、遺体を天に召す
「それは……、証拠はあるのでしょうか?」
恐る恐る聞いてみると御婦人は首を横に振った。
「明確な証拠はありません。 使用人の何人かが噂をしていた程度ですが遺体を見て確信しました」
確かにスザック様の体には暴行の後がある。
「スザックは階段から転げ落ち打ち所が悪く亡くなった、と聞きました。 しかも重い荷物を持たされた、と聞いてます。もし高い所から突き落とされたとしたら……」
なるほど、落とされても受け身も取れない状態にした……。
「それでしたら遺体に証拠が残っているかもしれませんね」
私はスザック様の遺体をひっくり返した。
背中に赤い手の跡が残っていた。
「これは確実に誰かに突き落とされた証拠ですね」
「やっぱり……」
「どうしましょうか? 憲兵に訴えますか?」
「いえ……、きっともみ消すでしょうし使用人の1人が亡くなっても憲兵は動かないでしょう」
そう言って悲しそうな表情をした。
「ただ、このまま人殺しと一緒に暮らす訳にはいきません。私は夫と離縁して修道院に入ってスザックを一生弔っていきます」
「そうですか……、これは慰めではありませんが神様は常に見ています。きっと神罰が下るでしょう」
そして、夜になり御婦人に見守られつつスザック様の遺体は天へと召された。
スザック様の骨は一部は御婦人が持ち帰り骨壷に入れ墓地へと埋葬した。
(僕は愛されていたんですね……)
「えぇ、良かったですね、貴方はずっと母親に見守られて生きてきたんですよ」
(それがわかっただけでも良かったよ……)
そう言ってスザック様の魂は天へと昇って行きました。
きっと来世は幸せになるでしょう。
それから1ヶ月後、とある公爵が離縁した、と新聞の記事になっていた。
奥様は長年公爵に愛人がいて蔑ろにされていた、と訴えた事で公爵の評判は急落、しかもご子息も周囲の評判が悪く孤立状態に。
良くない事は更に続き屋敷に雷が落ち火事になって屋敷は全焼、公爵と愛人、ご子息その他使用人は全身大火傷を負い表舞台から姿を消す事になった。
「天罰覿面ってこういう事を言うのね……」
密かにガッツポーズをしながら私は御婦人の幸せを心の中で祈っていた。




