謁見
アラジンはジーニーに向かって、部屋を埋め尽くすほどの山のような金貨を出させました。彼はその潤沢な資金を使って市場から多くの奴婢を買い集めると、彼らに見栄えのする上等な衣装を着せて自らの即席の従者へと仕立て上げました。そして、溢れんばかりの宝物を詰め込んだ袋を従者たちに担がせ、貢物としてシャフリヤール王への拝謁を願い出たのです。
荘厳な謁見の間へと進み出たアラジンは、一歩ごとに絹の擦れる音を響かせ、王の前に跪きました。
「お初にお目にかかります、名高きシャフリヤール王。私は諸国を巡り見聞を深めるため、はるか遠き国から旅をしてまいりました、アラジン・シリンザル第二王子と申します。以後お見知りおきを」
アラジンが合図を送ると、控えていた従者たちが担いでいた重い袋を床に降ろし、その口を大きく開きました。袋の中から溢れ出た、精緻な金細工の王杓や、色とりどりにきらめく大粒の宝石が、玉座に座るシャフリヤール王の目を大きく見開かせました。
「こちらを、我が国とお近づきの印にお贈りいたします」
王は並べられた財宝を鋭い眼差しで見つめ、低く威厳のある声で問いかけました。
「しかし、これほどの宝物、其方の国にとっても至宝の類ではないのか。いくら第二王子とはいえ、これほどのものを持ち出して他国に簡単に手渡してよいものでもあるまい」
アラジンは、王が何を馬鹿なことを言っているのだとでも言いたげに、不敵な笑みを浮かべました。そして、自らの身分をいささかも疑っていない様子で、堂々と言い切りました。
「我が国にとって、この程度の宝物など大したものではありません。お望みなら、明日にでもこれと全く同じ量をお持ちいたしましょう。シリンザルとは古い言葉で甘美な黄金を意味する通り、我が国は金の採掘に関しては一切の不自由をしていないのです」
「シリンザルという国は、かくも豊かなのであるな」
王の顔に驚嘆と満足の入り混じった笑みが浮かびました。
「よし、今宵は歓迎の宴を開こう。この王宮の歓待ではそなたの国の宮殿には及ばぬかもしれぬが、ゆるりと過ごすがよかろう」
その夜、王宮の大広間ではきらびやかな明かりが灯され、アラジンは大いに歓迎されて楽しい時を過ごしました。賑やかな宴の最中、給仕される極上のワインや料理を楽しみながら、アラジンは席の近い王女ロクサーナから乞われるがままに、異国の旅の話を聞かせました。
「シリンザル第二王子はいろいろな国を巡られたのでしょう。何か興味深い物はございましたか?」
ロクサーナのきらきらとした美しい茶色の瞳が見つめてくるのに胸を高鳴らせながら、アラジンはかつて荷運びの仕事をしていた頃、市場の旅人たちから聞きかじった遠くの国の物語を思い出し、さも自分が経験したかのように誇張して語り始めました。
「西の果てには、すべて塩でできた未知の大地がありました。見渡す限りの白い原野で、そこには塩の結晶でできた奇妙な木々が立ち並び、風が吹くたびに細かな塩の粉が舞い上がって、生きとし生けるものを絶望的な渇きへといざなうのです」
「まあ! なんて恐ろしい場所なのでしょう!」
王女は小さく悲鳴を上げ、白い手を胸元に当てました。
「ええ、その通りです。旅の途中、従者の馬が深い塩だまりに足を取られ、悲しげないななきを上げたかと思えば、風にのって瞬く間に塩が集まり、従者もろとも生きたまま塩の像と化してしまったのです。私は厚い布を馬と自分の口に強く当て、なるべく目を開かぬよう、ただ太陽の方角だけを目指して必死に進みました」
「なんて勇気のある行動でしょう!」
ロクサーナが熱を帯びた声で褒め称えるのに気を良くしたアラジンは、さらに言葉を滑らせて続けました。
「塩の原野をようやく抜け出し、後ろを振り返ると、そこにはいくつもの歪な塩の柱がそびえ立っておりました。それらは全て、あの塩の大地に囚われ、塩の柱と化した憐れな犠牲者たちの成れの果てだったのです」
あまりの怪奇な話に、王女は口を小さな手で押さえて黙り込んでしまいました。アラジンはその様子を見て、今度は安心させるように声を一段落として優しく語りかけました。
「もちろん、旅はそんな危険な場所ばかりではありません。時に旅人の集まる賑やかな酒場で、気のいい老婆が癖の強い馬乳酒を振る舞ってくれたり、夜には吟遊詩人が松明の火に照らされながら、はるか遠い時代の英雄譚を朗々と歌い上げたりすることもありました」
ロクサーナはその楽しげな様子を頭の中で想像したのか、今度はパッと頬をほころばせました。
「王女殿下、私のことはどうかアラジンとお呼びください。よろしければ、今度は貴女のお話も聞いてみたいものです」
「わたくしのことも、王女殿下などという堅苦しい肩書きではなく、ロクサーナとお呼びくださいませ」
彼女は少しはにかみながら、アラジンに促されるまま、高い壁に囲まれた退屈な王宮での日々の生活について語り始めました。
アラジンは、目の前で楽しそうに話す美しいロクサーナの姿を見つめながら、彼女を妻に迎え、この王宮の主となる輝かしい未来の光景を思い描き、満足感に満ちた微笑みを浮かべていました。




