欲望
ランプを手にしたその日から、アラジンの生活は文字通り激変しました。
外から見れば、それは相変わらず貧民街の片隅に佇む、薄汚れてひび割れた日干し煉瓦の古い家でした。しかし、一歩その戸口をくぐれば、そこには誰もが目を疑う異空間が広がっていました。床は一面、太陽の光を吸い込んで白く輝く大理石に張り替えられ、その上には職人が何年もかけて織り上げたような、豊かな毛足の極上の絨毯が敷き詰められています。部屋の中央には、美しく磨き上げられた銀の猫足を持つ最高級の革張り椅子が、まるで王の玉座のように堂々と鎮座していました。
煤けていた土壁は色とりどりの見事なタペストリーや異国の絵画で覆い尽くされ、アラジン自身が身に纏う衣服も、以前の擦り切れた外套ではなく、肌を滑るような最高級の絹に変わっていました。
アラジンは玉座に深く腰掛け、ジーニーが生み出した極上の美酒に酔いしれながら、誰もいない部屋で傲慢に独りごちました。
「あの髭面のファルザドめ、何が金貨三枚だ。こんな夢のような生活が、たった金貨三枚で買えるわけがないだろう。あの強欲な魔法使いは、俺を騙してランプを巻き上げたら、自分だけでこの世の富を独占して、もっといい暮らしをしようとしていたに違いないんだ」
アラジンは歪んだ優越感に浸りながら、飲みかけの美酒を乱雑に床へと投げ捨てました。繊細なガラスの盃が硬い大理石に当たって甲高い音を立てて砕け散り、深紅の酒が純白の絨毯に痛々しいシミを作ります。しかし、アラジンは眉一つ動かさず、背後に控える虚空へと声をかけました。
「ジーニー、そこを片付けておいてくれ」
「かしこまりました、ご主人様」
感情を排した魔人の声とともにパチンと指を鳴らす音が響くと、絨毯に広がっていた赤い酒も、飛び散ったガラスの破片も、最初からそこになかったかのように綺麗に消え失せました。
「ハハハ、これは最高だ。まるで本物の王様になったようじゃないか。このランプがある限り、俺は一生這いつくばって働く必要なんてないんだ」
アラジンは部屋に響き渡る声で高笑いを浮かべました。しかし、どれほど贅を尽くした生活であっても、一週間も同じことが続けば、次第に新鮮さは失われ、退屈の虫が頭をもたげ始めました。
「毎日うまい飯を食って、きらびやかな飾りに囲まれて暮らすのも、やってみればこんなものか。王の生活というのも、存外つまらないものだな」
気怠そうに頬杖をついたアラジンの脳裏に、ふと一年前の記憶が鮮烈に蘇りました。それは、国中が歓声に沸いた国王生誕パレードの光景でした。重厚な錦の衣装をまとった国王シャフリヤールの乗る山車の後ろで、民衆に向けて可憐に微笑んでいた、あの美しい王女ロクサーナの姿です。
まばゆい陽光を浴びて輝いていた彼女の黒髪と、気品に満ちた瞳を思い出した瞬間、アラジンの胸に新たな、そして底なしの欲望が沸き上がってきました。
あの美しく高貴な王女を我が妻に迎えることができたなら、この退屈な毎日はどれほど刺激的で、楽しくなることでしょう。
アラジンは、自分がきらびやかな衣装を纏い、王女と手を取り合って暮らす大それた未来の光景を思い描きながら、暗い部屋の中でニヤリと下品な笑みを浮かべました。




