邂逅
ファルザドがシャフリヤール王に出仕してしばらくが経ちました。王はファルザドの持つ、底の知れない深い知性を完全に信頼するようになり、国政に関わる難解な問いを次々と彼に投げかけるようになっていきました。
時にはファルザドも「その件につきましては即答できかねますので、明日までに資料を綿密に集め、熟考して参ります」と一度下がることもありました。しかし、次の日の朝には必ず、数字に裏打ちされた明確な根拠と、非の打ち所がない現実的な良案を携えて王の前に現れるのでした。
その並外れた仕事振りに、当初は余所者として警戒していた家臣たちも、「さすがは一国の宰相補佐まで務めた高潔な人物だ。実力が違いすぎる」と、今では多くの者が彼に一目置き、深く尊敬の念を抱くようになっていました。
ある日の午後、いつものようにアラジンが豪奢な貢物をしっかりと抱え、誇らしげな笑みを浮かべて宮殿の廊下を歩いてきました。すると、向こうから上質な絹の官服を綺麗に着こなしたファルザドが、静かに歩いてくるのが見えました。
アラジンは男の顔を見た瞬間、驚愕のあまり目を見開き、抱えていた包みを落としそうになりました。
「あっ、お前は……あの洞窟の近くで、俺から大切なランプをたった金貨三枚で買い叩こうとした薄汚い魔法使いじゃないか。なぜこんな高貴な場所に居るんだ!」
突然怒鳴りつけられたファルザドでしたが、取り乱す風もなく、衣服の袖を軽く整えながら平然と答えました。
「私がこの国に正式に出仕し、シャフリヤール王の事務官を務めているからに他ならない」
アラジンは、その言葉でようやく思い出しました。ここ数ヶ月の間に王の厚い信頼を勝ち取り、宮殿内で急速に頭角を現しているという、遠い異国からやってきた極めて優秀な新任の官僚がいるという噂を。それがまさか、あの時の魔法使いだったとは夢にも思わなかったのです。
「この悪党め、おおかた魔人に美味い貢物でも作らせて、王の機嫌を取って取り入ったんだろう。あの時、俺からあんなに価値があるランプを強引に取り上げようとしたみたいにな」
アラジンの敵意に満ちた言葉を真っ向から受け止め、ファルザドは深くため息をついて、憐れむように首をゆっくりと振りました。
「勘違いをしないでもらいたい。魔人が魔法の力で無から作り出す物など、所詮はうたかたの幻に過ぎないのだよ。いくら見事な黄金や宝石をその場に現そうとも、魔力が完全に切れれば、それらはすべて元のただの砂へと戻ってしまう。束の間の腹を満たし、目を楽しませるだけの一時の娯楽なら問題はないが……。さあ、アラジン。君が本当にあの気高い王女の未来を想うならば、ランプを私に渡し、もうこのような危険な偽りの王子ごっこは止めて家に帰りなさい。君には、そのランプよりもずっと安全で、君の身の丈にふさわしい、別の魔法の道具を差し上げるから」
アラジンは、この痩せた魔法使いの言葉を聴きながら、激しい怒りと共に一つの確信に至っていました。この男は、自分が手に入れた極上の幸運と、王女との幸せな関係を羨み、それを汚い言葉で騙してランプごと奪い去ろうとしているのだと。
「結構だ。お前のような奴にランプは絶対に渡さない。俺はこれまで何度もランプを使ってきたが、一度だって作った物が砂に変わるような事はなかったんだ。もし本当に砂になるというなら、一体いつそれが出現から何日後に砂に変わるのか、明確に言ってみろ!」
アラジンに詰め寄られたファルザドは、苦痛に満ちた表情でわずかに視線を落としました。
「それは……私にも正確な時期まではわからない。魔力の源がどこまで持つかによるのだ」
その曖昧な返答を聴いたアラジンは、勝ち誇ったように鼻でせせら笑いました。
「フン、そうだろうな。やっぱり口先だけの詐欺師め。お前の脅しには乗らないさ」
アラジンは完全にファルザドを見くびり、肩をそびやかしてその場から立ち去ろうとしました。その無防備な背中に向けて、ファルザドは一段と低い、警告の混じった声を投げかけました。
「そこまで言うなら、今はまだそのランプは君が持っているといい。だが、魔法というものは時に酷く残酷な牙を剥く。魔人に禁じられた事だけは、絶対にさせようとしてはならないぞ」
ファルザドは、自分の忠告に耳を貸そうともせず、足早に遠ざかっていくアラジンの背中を見つめながら、宮殿の冷たい廊下で、もう一度大きなため息をつくしかありませんでした。




