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黒い魔法使いと死なない契約  作者: 日曜日更新
【第一章】
13/20

第13話 衣装

 部屋で一人になるとリアは招待状を開けた。


「上手くいきすぎて、不安……こんなに都合よく進むなんて。あ……!」


 リアはクローゼットの中を調べた。


「どうしよう……舞踏会なんて初めてだから」


 シャッシャッと服をかき分けても季節ごとの制服と、数着の私服しかなく、リアは呆然とした。


「着ていくドレスがない……」


 思わずその場で立ち尽くす。キィ……と音を立ててクローゼットを閉じた。とぼとぼと歩き、ベッドに腰を下ろす。


「さすがに制服じゃダメよね」

「クラスの子に貸して貰おうかな……」


(舞踏会と言えばダンス……)


(第三殿下……どんな女性を選ぶのかしら)

(もし私だったら――)


 胸が少しだけ高鳴った。

 けれど次の瞬間、強く押し潰されそうになる。


(魔力なしだって知られたら、不敬罪で追放されるかも……)


「死にたくない……」


 こんな時、騎士団に所属している“あの人”だったらどうするだろうか。


「アレンに……聞いてみようかな」


 彼の顔を思い出すと、ぱぁっと心が明るくなった。


 その気持ちも……長くは続かない。


「やっぱり、やめておこう……」


 先日決意を固めたのに、それでも、アレンに会いたいと思ってしまう。




 * * *


 リアはいつの間にか眠りについた。


 それは白い空間の中。

 目の前には光り輝く大木。


「くれるの……?」


 妖精は、彼女に光の実を分け与えてくれる。


 リアは「ありがとう」と言い、その美味しそうな果実を受け取った。


 一口食べると甘酸っぱく、体中に優しい温かさが広がった。光り輝く木が、一瞬だけ揺らぐ。


 ほんのわずかに砕け、光の欠片が宙を舞う。


「大丈夫……? でも、綺麗……」


 涙が出るくらい神秘的だと思った。リアは妖精を抱き寄せ、その美しい光景を一緒に眺めていた。


 それが良いことか、悪いことかは、この先の未来で知ることとなる――


 * * *


 そして昨夜も同じ夢を見た。


 もしかしたら、本当に神話の妖精かもしれない。リアは思わず笑みを浮かべる。


「ふふ。なにかいいことでも起こるのかしら」


 そんな日に限って、予感は外れる。


 ---


 舞踏会当日。開催時刻よりも早めに寮を出発し、リアはおしゃれな店内に身を置いていた。


 そこは街で一番大きな仕立て屋で、到着するなりセドリックがドレスを指さす。


「好きなのを選べ」

「いいんですか……!?」


 色とりどりの衣装が並び、リアは思わず目移りした。彼も今日の舞踏会に参加するため、いつもと違う服装だった。前髪も上げている。


「……俺は付き合いだ」


 リアは目を細めた。彼にとってこれは『極秘任務』かもしれないから。


「分かってます。でも、一人だと寂しいからあなたがいてくれた方が私も安心です」


 セドリックはそっぽを向いてしまった。


「汚した場合、買い取りだからな」


(うぅ。汚さないように気を付けないと……)


 ---


 広い店内を見渡す。この店ではドレスの販売だけでなく、貸し出しも行っているらしい。メイク道具や装飾品まで一式揃えてあった。


 すると、一着のワンピースが目に入った。


(わぁ……あの灰色の衣装、綺麗……)

(少し、着てみたい)

(ロング丈のシルエットが可愛い――)


 ひと目で心を奪われ、真っ先に近寄った。棚に手を伸ばし、優しく生地に触れる。心が弾んだその瞬間、本来の目的を思い出した。


(これ……借り物じゃないわよね。それに舞踏会だし、色付きの物を選ばなきゃ……)


(……セドリックさん、こういうのは似合わない、場所を考えろって指摘しそうだもの)


 後ろを振り向くとセドリックと目が合って、リアは慌てて目を逸らした。「早く選べ」と言わんばかりの顔をしていた。慌てて他の衣装を探す。


「じゃあ……着替えてきますね」


 衣装が決まり、リアは試着室に入る。


 その間……彼はさりげなく棚に手を伸ばし、とある衣装のタグに目を落としていた。


 彼女が一番気にしていた衣装を。

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