第13話 衣装
部屋で一人になるとリアは招待状を開けた。
「上手くいきすぎて、不安……こんなに都合よく進むなんて。あ……!」
リアはクローゼットの中を調べた。
「どうしよう……舞踏会なんて初めてだから」
シャッシャッと服をかき分けても季節ごとの制服と、数着の私服しかなく、リアは呆然とした。
「着ていくドレスがない……」
思わずその場で立ち尽くす。キィ……と音を立ててクローゼットを閉じた。とぼとぼと歩き、ベッドに腰を下ろす。
「さすがに制服じゃダメよね」
「クラスの子に貸して貰おうかな……」
(舞踏会と言えばダンス……)
(第三殿下……どんな女性を選ぶのかしら)
(もし私だったら――)
胸が少しだけ高鳴った。
けれど次の瞬間、強く押し潰されそうになる。
(魔力なしだって知られたら、不敬罪で追放されるかも……)
「死にたくない……」
こんな時、騎士団に所属している“あの人”だったらどうするだろうか。
「アレンに……聞いてみようかな」
彼の顔を思い出すと、ぱぁっと心が明るくなった。
その気持ちも……長くは続かない。
「やっぱり、やめておこう……」
先日決意を固めたのに、それでも、アレンに会いたいと思ってしまう。
* * *
リアはいつの間にか眠りについた。
それは白い空間の中。
目の前には光り輝く大木。
「くれるの……?」
妖精は、彼女に光の実を分け与えてくれる。
リアは「ありがとう」と言い、その美味しそうな果実を受け取った。
一口食べると甘酸っぱく、体中に優しい温かさが広がった。光り輝く木が、一瞬だけ揺らぐ。
ほんのわずかに砕け、光の欠片が宙を舞う。
「大丈夫……? でも、綺麗……」
涙が出るくらい神秘的だと思った。リアは妖精を抱き寄せ、その美しい光景を一緒に眺めていた。
それが良いことか、悪いことかは、この先の未来で知ることとなる――
* * *
そして昨夜も同じ夢を見た。
もしかしたら、本当に神話の妖精かもしれない。リアは思わず笑みを浮かべる。
「ふふ。なにかいいことでも起こるのかしら」
そんな日に限って、予感は外れる。
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舞踏会当日。開催時刻よりも早めに寮を出発し、リアはおしゃれな店内に身を置いていた。
そこは街で一番大きな仕立て屋で、到着するなりセドリックがドレスを指さす。
「好きなのを選べ」
「いいんですか……!?」
色とりどりの衣装が並び、リアは思わず目移りした。彼も今日の舞踏会に参加するため、いつもと違う服装だった。前髪も上げている。
「……俺は付き合いだ」
リアは目を細めた。彼にとってこれは『極秘任務』かもしれないから。
「分かってます。でも、一人だと寂しいからあなたがいてくれた方が私も安心です」
セドリックはそっぽを向いてしまった。
「汚した場合、買い取りだからな」
(うぅ。汚さないように気を付けないと……)
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広い店内を見渡す。この店ではドレスの販売だけでなく、貸し出しも行っているらしい。メイク道具や装飾品まで一式揃えてあった。
すると、一着のワンピースが目に入った。
(わぁ……あの灰色の衣装、綺麗……)
(少し、着てみたい)
(ロング丈のシルエットが可愛い――)
ひと目で心を奪われ、真っ先に近寄った。棚に手を伸ばし、優しく生地に触れる。心が弾んだその瞬間、本来の目的を思い出した。
(これ……借り物じゃないわよね。それに舞踏会だし、色付きの物を選ばなきゃ……)
(……セドリックさん、こういうのは似合わない、場所を考えろって指摘しそうだもの)
後ろを振り向くとセドリックと目が合って、リアは慌てて目を逸らした。「早く選べ」と言わんばかりの顔をしていた。慌てて他の衣装を探す。
「じゃあ……着替えてきますね」
衣装が決まり、リアは試着室に入る。
その間……彼はさりげなく棚に手を伸ばし、とある衣装のタグに目を落としていた。
彼女が一番気にしていた衣装を。




