第11話 魔法大会の裏側で思い出す
今日は魔法大会の日。
魔法を使いこなす優秀な人材を発掘する場所だ。
その裏で――
会場が学院内にあるため、商業科にとってはかきいれどきのイベントであった。
もちろんリアも屋台を出していた。お手製のエプロンを身につけ、お客を待つ。
そこにブロンドの髪色の男が一人。
「セドリックさん。一緒に座りますか?」
リアは屋台にある椅子に案内した。
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「故郷の特産品を置いているんですよ」
「売れるのか?」
「まあ、見ての通りで……。でも人気の時もありますよ、ちゃんと。今日は地元メインで観光客の人が少ないですからね」
すると目の前に女子生徒が現れた。
「あの〜よかったら選んでいただけませんか?」
どうやらセドリック目当てのようだ。
セドリックは無言で指さす。
「それにしますわ!おいくらですか?」
「あ、ごひゃく……」
「二千だ」
明らかに盛っていた。しかし。
「まぁ。そんなにお安いのですね。そちら一つお願いします」
(お安い……?)
アクセサリーを紙に包んで渡すと、喜んで帰って行った。
「……ちょっとセドリックさん!!」
「お前は“売れないから”と、値段の付け方を甘くしすぎだ」
「でも……」
「価値があるならその分上げろ。値段で価値がつくこともある」
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彼の言うとおり、次々にお客が集まってきた。「すみませーん。見てもいいですか?」「はい、どうぞ!」そんなやり取りが続いた。
彼が指輪をはめれば指輪が。
彼が花冠を頭に乗せれば髪飾りが。
薬草の余りで作った厄除けの壁飾りまでもが売れ出した。「魔法のご利益ありそう!」と言って。
値段は全部、彼がその場で決める。
だけど。
「お兄さん魔法科の方ですよね。今日の大会出場されないんですか?お名前教えてくださいよ!」
「……」
こういう時だけ無視を貫き通す。
それでも諦めない女性がいる場合、こちらに視線を向けてきた。「お前がなんとかしろ」と言わんばかりに。
「セドリックさん、制服……上脱いでください。これ、私の上着です」
一般クラスの上着を肩に羽織ったとたん、ぴたりと客足が途絶えた。
再びセドリックが魔法科の制服姿で座る。
それだけで信用度が上がり――売り上げが伸びるということがよくわかった。
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「セドリックさんって商売上手……」
「もうこれで仕事は終わりか?」
屋台に設置した机や棚の中を見渡した。
「商品が少しだけ残っているので、まだいようかなと。後片付けもありますし」
「何が食べたい」
思わぬ言葉に「え?」と聞き返してしまった。
「買ってきてやる」
「苺のピスタチオサンド……専門店が来てるらしくて」
「…………分かった」
一瞬、怪しい間があった。
「えっ。セドリックさん、ピスタチオサンドって何か知ってますか」
「パンか何かだろ」
「洋菓子です……苺のクリームが薄い黄緑色のクッキーで挟んであるんですよ」
彼は頷くと買いに出かけた。
(大丈夫かしら……)
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目の前には売れ残っている商品たち。
馬のブローチはあとで自分で買おう、と思い手に取った。
「可愛いのに……」
そこへ仲の良いクラスメイトがやって来た。
「リアんとこの魔法科のイケメンさんすごいなぁ。従兄弟なんやろ?」
「あ、うん……」
「私、店番手伝うから、三十分くらい離れてもええで」
「いいの?」
友人にエプロンを託して、セドリックを追いかけた。
人混みに紛れて、背の高い男が一人見える。
ブロンドの髪色が太陽の光で輝いていて、すぐに見つかった。案の定、専門店の場所が分からず闇雲に歩いていたようだ。
途中で女性から声を掛けられても無視をしていたが、迷子の子供には『光の花』を渡して泣き止ませていた。
(意外と面倒見がいいのかしら……)
思わず隠れて後をつけたが、彼が振り返った。
声を掛け、迷子の子供を届け――
二人で専門店を探した。
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「こんなに並ぶのか」
「人気店ですからね」
「疲れるだけだろ」
「それが楽しいんですよ。お喋りしたり、本を読んだりして。ここからなら大会も見れますよ」
「セドリックさんは楽しくないですか?」
「……」
「私、今とっても楽しいですよ」
(もうすぐ買えるから)
彼は不思議そうな顔をした。
会場からドコンドコンと爆発音が聞こえる。
「水中爆発だな。誰かが水と炎を操ったんだろ」
「へぇ……わ、こっちまで水しぶきが……あ!虹が見えますね」
二人で行列に並び、無事に買えた後、彼はそのまま別の任務に行ってしまった。まるで嵐のように去っていく。
夜に一緒に食べましょうと約束したから、リアもそれまではお預けだ。手元には甘い香りがする袋が二つ。
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店に戻ると、友人が接客を終えたところだった。
「リアお帰り。何個か売れたで」
「店番ありがとう!これお土産のピスタチオサンド」
「ほんまに? リア、ピスタチオサンドのことパンって言ってたのによく買えたなぁ」
「そのことはいいの!」
「あれ……?」
箱の中を見ると売れ残っていた馬のブローチが消えていた。
「最後のブローチ、誰が買ってくれたのかしら」
「男の子が買っていったよ」
「そうなんだ」
少し嬉しかった。
馬のモチーフを見ると、なぜか昔を思い出す。
あれは十三歳の時――
* * *
魔力災害後、久しぶりに開催されるお祭りにアレンを誘ってみた。
その日のお祭りは第三殿下が十八の成人を迎えられたお祝いのもの。反対意見も多かったのか、実際の生誕の日より遅れて開催された。
「アレン、今日は帽子と眼鏡をかけてるのね」
「……変かい?」
「ううん。探偵みたいでかっこいい!」
すると、手作りの小物を販売している露店があった。
「アレンに選んで欲しいな」
「何が欲しいんだ?」
「お財布!」
彼はお店を見渡し、少し考えて一つの財布を手に取る。
「これは……君にはまだ早いか」
しっかりした革の、高級そうな財布だった。
隅には走る馬の刻印が押されていた。
私は彼と財布を交互に見合わせる。
「それにするわ!」
目がキラキラ輝く。
「他にも可愛いのが沢山あるよ?」
「それがいい!これ下さい」
「はいはい。まいど」
* * *
貯めてきたお給金を使い、初めて財布を買った。
アレンが選んでくれて、心が飛び跳ねるように嬉しかったのを覚えている。
懐かしい思い出。




