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復讐開始

その光を見上げたまま、俺は小さく息を吐いた。


「……で、どう動く。」


現実に引き戻すように、旭が口を開く。


少し緩んだ空気が、再び引き締まる。


当然だ。


気持ちだけでどうにかなる相手じゃない。


「相手のこと、どこまで分かってんだ。」


壮志郎が地面を軽く蹴りながら言う。


「人数は?」


「昨日見たのは、5人だ。でも、まだ他に仲間がいるかもしれねぇ。」


壮志郎の問いかけに、龍心が即答する。


「しかも全員、慣れてた。」


あの動き。


躊躇のなさ。


今回が初めてではないだろう。


他にも同じような目に遭っている人がいると思うと、腹の底から、こう沸々と何かが沸き上がる。


「場所は……例の路地か?」


旭の問いに、俺は首を横に振る。


「いや、多分もういねぇ。ああいう連中は、同じ場所に長くはいねぇ。サツにマークされたら困るからな。」


「じゃあどうすんだよ。」


壮志郎が少し苛立ったように言う。


その時だった。


「……いる場所なら、分かるかもしれませんよ。」


それまで、黙りこくっていた柊輝だった。


ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、少しだけ目を細めている。


「どういう意味だ。」


壮志郎が鋭く聞く。


柊輝は少しだけ間を置いてから、口を開いた。


「あいつら、多分——“東区の連中”です。」


その言葉に、空気が一気に重くなる。


東区。


この辺りじゃ知らないやつはいない、有名な無法地帯だ。


破壊、暴力事件はもちろんの事、稀にその地の所有を主張する族同士の抗争も起こっている。


「……マジかよ。」


旭が小さく呟く。


「あそこ、結構やべぇとこだぞ。」


「だからですよ。」


柊輝は淡々と言う。


「昨日の動き、あれ普通じゃねぇですよ。明らかに戦い慣れてるやつの動きです。」


確かにそうだ。


ただの喧嘩、というよりかは、“狩り”みたいな、そんな感じだった。


「拠点、知ってんのか。」


俺が聞くと、柊輝は軽く頷いた。


「だいたいは、噂程度にですけどね。ただ……」


言葉を切る。


その先を、全員が待った。


「行くなら、覚悟してくださいよ。」


静かで、ドスの効いた声だった。


ただでは済まないだろう。


「引き返せる場所じゃない。」


沈黙が落ちる。


だけど——


「……上等だろ。」


壮志郎が笑った。


どこか、吹っ切れたような顔で。


「最初からそのつもりだ。」


「だな。」


旭も肩を回しながら言う。


「ここでビビってたら、さっきの話、全部嘘になるしな。」


龍心も無言で頷いた。


そして、最後に俺。


「……行こうぜ。」


短く、それだけ発する。


もう迷いはなかった。


その瞬間、遠くで、バイクのエンジン音が鳴り響いた。


嫌に耳に残る音。


その音はだんだん大きく、近づいてくる。


全員が反射的に顔を上げる。


「……来るぞ。」


龍心が低く呟いた。


次の瞬間、角の向こうから数台のバイクが姿を現した。


その先頭にいた男と、目が合う。


——昨日のやつらだ。


口元が、ゆっくりと歪む。


「……見つけた。」


背筋が、ゾクッと震えた。


でも——


今度は、目を逸らさなかった。




「さて、どうします?」


柊輝はそう小さく聞く。


奴らと俺達の距離は、10メートルと言ったところだ。


今は物陰に隠れているからいいものの、音を立てるとバレかねない。


「決まってんだろ。」


壮志郎はそう指を鳴らしながら答える。


小刻みに動き、興奮が抑えきれていない。


「だな。」


龍心も同じ考えのようだ。


こいつもこいつで、今にも飛び出しそうな雰囲気を感じる。


「クソっ、展開早ぇな。」


旭は苦笑しながらそう言うも、準備は万端といった様子で、こちらを見る。


「それじゃあ――」


俺は少し間を置き、その覚悟を確固たるものにする。


「勝つぞ。」


俺がそう低く呟くと同時、全員がそれぞれ走り出すした。


人数は5人とこちらも互角だ。


「なんだ、お前ら!?」


奴らは少し遅れて俺達の存在に気がつく。


奇襲は成功だ、だが…


「フンッ!」


俺のスピードと全体重を乗せた初撃は、ゴッという鈍い音を立て、防がれる。


「クソッ!奇襲でこれかよ……!」


やはり、反応速度が段違いだ。


「お前……」


相手の男はこちらを見て何か呟く。


そうして、思い出したように口角を上げる。


「昨日の子のお友達じゃん。あの子、大丈夫だったの?」


そう気味の悪い薄ら笑いを浮かべて話しかけてくる。


明らかな挑発だ、乗るはずがない。


だが――


「今さら仇討ちに来たの?昨日見捨てたのに?」


「……っ!」


逆鱗をなぞるようにして発せられるこいつの声は、俺の感情を弄ぶ。


「死ねっ!」


物騒な声と同時に、ドガッという鈍い音が聞こえる。


壮志郎だ、男を一人殴り飛ばしている。


男はそのまま地面に叩きつけられ、伸び切っている。


空手を習っていると聞いていたが――


「あいつ…こんな強かったのかよ…!」


思わずそう口から溢れ出す。


「潦哉!前!」


旭の声が聞こえ、焦って振り返ると、ゼロ距離まで距離を詰めた男がいた。


いつの間にか、その手には、昨日と同じ金属バットが握られている。


そのバットは高く振り上げられていて、今、振り下ろされようとしていた。


「っ!」


身を(よじ)りなんとか(かわ)す。


振り下ろされた地面には、小さなクレーターができていた。


「早いね、けど――」


男は今度はバットを横に引く。


(避けられねぇ!!)


そう察した俺は反射的に男に飛びついていた。


「!?」


予想外の事態が故に、相手の動きが一瞬鈍る。


その隙を見逃さない。


俺は頭を思い切り引き、そのまま振り抜く。


ゴッ!!


鈍い衝撃が額から突き抜けた。


一瞬視界が白く弾ける。


だがすぐに回復し、男から離れる。


「うっ……!」


俺の支えを失った男は、そのまま意識を失い、仰向けに倒れ込む。


「中坊舐めんな。」


俺も少しダメージを負ったが、上出来だろう。


他の皆の様子を確認する。


壮志郎、柊輝は戦闘を終えたようで息を整えていた。


龍心と旭は未だ戦闘中だ。


二人の援護に入ろうとするも、よろけを感じて、その場で踏み止まるので精一杯だ。


思ったよりも、頭突きのダメージが自分にも入っていたらしい。


仕方無く、その場で静観する。


龍心はカウンターで、旭は相手の攻撃を躱し続け、スタミナが切れたところに一発を入れ、それぞれの戦いに勝利する。


「まぁ、余裕でしたね。」


柊輝がそう服装を正しながら言う。


「昨日逃げたのが馬鹿みてぇだ。」


壮志郎はそう頭を抱えた。


「いや、まだだ。」


龍心は意味深にそう言う。


「どういう…」


旭が口の前に人差し指を立てる。


言葉を止めて耳を澄ますと、バイクのエンジン音が再び聞こえる。


「まさか……。」


そう、そのまさかだった。


援軍だ。


なぜかわからず、思わず辺りを見渡す。


柊輝とやりやっていた奴だ。


手にはスマホが握られている。


恐らくそれで仲間に連絡したのだろう。


「仕留めきれてなかった……。くそっ!」


柊輝はそう苛立ちをあらわにし、その男を思い切り踏みつける。


男から苦しそうな呻き声が漏れ出すが、今は雑音にしか聞こえない。


そしてかすれた声で言う。


「第2ラウンドといこうじゃねぇか……!」

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