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決意と決別

病院を後にし、外に出ると、さっきまでの曇り空が少しだけ崩れていた。


薄く光が差し込んでいる。


だが、その光は俺には届いていない気がした。


「なぁ。」


歩きながら、壮志郎が低い声で言った。


「昨日のこと……このままで終わらせる気か?」


その言葉に、全員の足が止まる。


振り返ると、壮志郎は真っ直ぐな目でこちらを見ていた。


逃げ場を与えない目だ。


「終わらせるって……どういう意味だよ。」


旭が眉をひそめる。


壮志郎は一瞬だけ視線を落とし、すぐに上げた。


「このまま何もせずに過ごすのかって言ってんだよ。」


その言葉は強く、怒りが含まれている気がした。


「……それは。」


言葉が続かない。


本当は分かっている。


このままじゃダメだってことくらい。


でも——


「じゃあどうすんですかぃ。」


柊輝が少し強めの口調で言った。


「あいつらにやり返すんですか?それでも逃げた事実は変わりませんよ?」


その言葉に、空気が一瞬張り詰める。


けれど壮志郎は引かなかった。


「変わるかどうかじゃねぇ。」


一歩、前に出る。


「俺は、もう逃げたくねぇんだよ。」


その目はどこか遠くを見ている、静かな声だ。


でも、その言葉にははっきりとした芯があった。


俺達の間を風が吹き抜ける。


誰も言葉を発さない。


その沈黙の中で、俺はさっきの湊の言葉を思い出していた。


『やっぱ……助けてほしかったな。』


胸の奥が、強く締めつけられる。


——あの時、動けなかった自分。


——目を逸らした自分。


その全部が、今もここに残っている。


「……俺もだ。」


気づけば、口が勝手に動いていた。


全員の視線が、俺に集まる。


「もう、あんな思いはしたくねぇ。」


拳を強く握る。


「次は……逃げねぇ。」


自分でも驚くくらい、はっきりした声だった。


しばらくの沈黙のあと、


「……ははっ。」


龍心が小さく笑った。


「やっと言ったな。」


その顔は、どこか安心したようにも見えた。


「俺も同じだ。」


龍心が頭を掻きながら言う。


「正直、めっちゃ怖かったけどな。なんなら、今も怖ぇし。」


苦笑する龍心の表情は、どこか清々しく見えた。


「まぁ……正直俺もムカついてますよ。」


柊輝はそうそっぽを向いたまま呟くように言う。


最後に、全員の視線が壮志郎に向いた。


壮志郎は小さく頷く。


「決まりだな。」


ようやく、“逃げ続ける自分”と決別できたような気がした。


視線を上げると、曇っていた空の隙間から、少しだけ強い光が差し込んでいることに気づく。


その光は、さっきよりほんの少しだけ、近くに感じた。

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