捌話 現実
目を覚ます。
知らない天井。
周りを見渡す。
殺風景な部屋、病室だ。
ベットから起き上がる。
身体を確認する。
「傷は…ない…」
一息つく、安心感に包まれて体の力が一気に抜ける。
あれは夢、少し長いだけの夢だったのだ。心の中で何度もそう言い聞かせる。
それでも体は分かってくれない、身に刻まれた恐怖を、少しずつ命が消えていく絶望を、わかってしまっていたから。
傷のあった場所を左手で撫でる。
しかし傷跡もあの痛みもない、でも手が震える抑えられない恐怖を何度思い出すことになるのだろう。そんな怯えの中思った、いや思ってしまった。
(もしもあのドアから誰か入って来たら)
一つまた一つと考えが増えていく、自分のいるベットの下、枕の中、天井の裏。
目に映るものすべてに自分を殺す何かがいるのかもしれない。
アニメのように死んで簡単に恐怖感が消えるわけではない。
そんな恐怖に心を少しづつすり減らす。
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しばらくの静寂
もはや寝る気も机にあるスマホにも手を伸ばすつもりにはなれない
眼の前の風景を眺め続けて動けないどんな態度でいればいいのか。
どこに手をおいておけばいいのか
足はまだ付いているのか
目見えているのか
舌は口内にあっていいのか
何もわからなくなる。
何をすれば死んでしまうのか、どうすれば何かあったときに大丈夫か。
ドアが開く。
風山にはその一瞬が永遠にも感じた。
「…!?」
「起きてたんだ。」
入ってきた友人の有田 美香を見て少しの安堵を覚える。
「美香…?」
「どうしたのよ、泣きそうな顔して。」
「何でも…やっぱある…」
「どっちよ」
そんな会話をしながら落ち着いてきた体を収め話し出す。
「夢を見たんだよ」
「そういう語り口調いらないから」
「黙って聞く流れだろ今の」
苦笑してもう一度呼吸を整え話し出す、
「めっちゃリアルな死ぬ夢見た。心折れそう」
「さっさとそれを言いなさい、まぁこれでも食べて落ち着きなさいな」
そういうと美香は手に持っていたリンゴを丸ごと一個投げる。
風山が慌てて落としそうになりながらもキャッチし齧る。
「丸ごとって…切れよ」
「文句ある?」
「ないっす」
一口齧る、甘い。美味しく感じる。
「あんたがそんな調子なら、帰ることにするよ。」
「ん、もうちょい居てもいいのに」
「何?告白?」
そんな馬鹿なやり取りをしながら美香は部屋から出ていく。
「まぁ、心が折れたときは良いなよ。殴って修正してやるから」
「流石っす姉御」
「あとこれ、あげるよ」
そういうとポケットから取り出したペンダントを風山に投げる
「投げるなよ…」
「じゃ、一応用は終わったから帰るわ~」
そういうと勢いよく扉が閉まり足音が遠ざかっていく
「…救われたけど…なんか釈然としねえ」
そういうとネックレスをつけて再び布団をかけ直す
「…リンゴ食いかけじゃん。」
そういうと二口齧った後のあるりんごにもう一つ後をつけた。
多分人生で一番甘く、しょっぱいそんなりんごだった。




