38話 俺がお前で
「ここだよお姉ちゃん!気付いたら居なくなってたの!」
「わかりました⋯少し現場を確認します!」
目を閉じ集中、さっきの何倍も確認できるようにできるだけ意識をそちらに移す。
光が淡く現れる様になった瞬間周りを見渡す。
二階に二人、アテナとユメ。地下の3つは暗殺組だろう。横の2つはそのまま無視して周りを見渡す⋯
「庭地下に牢屋に入ってる三人以外に反応2つ!」
その方向を指差し敵とトートが居るであろう位置を指さす。
「わかりました!」
「私とえっと…トート様の友人様は後から追いかけます!」
「風山!」
ランの言葉を聞くとリンは床を蹴り全力で駆け出す。
その勢いのまま壁と床を貫通し地下に潜ってくる。
「私たちも行きましょう!かぜさん!」
「わかったけどルート分かんないから案内頼んだ!」
「なら背負ってく!その方が早い!」
そう言うとランは無理やり俺の右手を掴みえげつない力で背負い走り出す。
「探すのお願い!」
「わかった!」
えげつない風に体を殴られながら目を瞑り集中する。
屋内で短い距離だけの加速とはいええげつなく痛い。
光の位置を確認し続ける
「相変わらず動いてない!」
「光の方向どっち!」
「あっち!」
常に光の方を指を刺し出来るだけ場所を教える。
カーナビみたいな役割だな。言ってる場合じゃないよな。
ランが地下への石造りの扉をこじ開け進む
「よう!急いでどこいく⋯」
「ごめんまた後で!」
「何だったんだあいつ」
三人衆の馬鹿1を適当にあしらい探知に集中する。
更に奥の廊下へ走り出す。
廊下を何度も曲がり奥にお国へと進む
「もうその壁の奥!」
「わかった!」
するとランは壁の前で停まり俺を投げ落とす。
嫌な予感がしたので全力で下がるとランが思いっきり拳を構える。
「やったれ!」
「えーいぃ!!!」
ランが壁をぶち壊す。
石の崩れる音と揺れでえげつない振動と室内から出てくる大量の風が体を襲う。
舞い上がった砂埃が地面に落ち、視界がひらけるにつれその存在を確認できる。
「トート!リンさん!」
「お姉ちゃん!」
部屋の中はここまでの通路と同じように石造りの小さい部屋の中央にベットが3つとその奥の机、そしてその上に幾つもの溶けかけの燭が置いてある燭台、そして更にその奥に神棚のような物だけで扉は一切確認できない。
そして次に二人とも気絶して居るようでベットの右と真ん中で寝かされている。
が、ここでは終わらない。そのための探知だ。光は3つ。
「ラン!左前にもう一発!」
「えりゃぁあー!!!」
言い切るかどうかのタイミングでランが拳を振り抜く。
何かに攻撃があたったようで拳が振り抜かれるタイミングで奥の壁が凹み割れる。
「そのまま壁に倒れてる!」
「なら二人を!」
ランが二人を回収してる間にその吹き飛ばされたであろう場所に行きまさぐる。
部屋に入ると部屋の下側は刺すような冷たい風が流れ上部は生暖かい。
そして例の吹き飛ばされた相手を触ると感覚が残っており体を触り透明であることを確認し原因を探す。
「透明ならブレスレットか腕輪!あと指輪!あとあと衣服!」
それを聞くと片っ端から体をさわり飾りであろう物を見つけるたび剥がしていく。
そしてその中の一つ。腕であろう位置の場所から腕輪を取った瞬間体全体が現れる。
「かぜさん!?」
「どうみても俺!?」
現れた俺⋯風山 槙也。
「偽装とか幻術とかその当たりだろ!」
そう思い上着を脱がせ確かめる。
小学生の頃自転車でぶつかってついた傷跡や料理中の事故後の手術後も見える。
少し軽く押してみる。
「…違和感?まさか!」
自分の腹と風山の腹を交互に触り確かめてみる。
明らかに風山の腹がデコボコしており体中がぼろぼろであることを確かめさせられる。
「肋かどこか折れてる⋯死なれたらまずい!」
自分に見えるとして、もしも俺と同じ能力があったら?
俺に見える見た目までしてるんだ。能力や記憶までコピーできたとしたらおかしくない。
というより、この部屋自体が記憶がコピーされた説を強調しているかもしれない。
この部屋に扉はなくランが穴を開けると室内と廊下の空気が勢いよく入れ替わった事から密室であると考えられる。いや多分だけど。
そして燭台の蝋が幾つも溶けていることから先程まで大量の火がついていたはず。
つまり考えられるのは
「酸欠⋯一酸化炭素中毒?」
実際には違うのかもしれないがその可能性が高いだろう。
そしてこっちで文献を探した限り科学はそこまで進んではいないはず。
わからないがまだ罠がある可能性もある。何か起きる前にさっさと脱出した方が良さそうだ。
「ラン!これも持てるか!」
「ムーリー!」
「わかった!」
なんとか持ち上げ撤収しようとする。
が、体が重く持ち上がらない。どう見ても重いものは持っていないはずなのに。
「しゃーない⋯見捨てる!じゃあな俺!」
こんな状況じゃなきゃしっかり室内見てたんだろうけど流石に怖い。
なのでさっさとランの持っている二人を後ろから支えて急いで帰る。
「なんか甘い匂い⋯!」
「なんか仕込んでた!?」
後ろを振り返る。小さい煙が神棚であろう棚から吹き上がる。そこから見つけたのは見慣れたアイテム
「乾電池⋯!」
アルミホイルであろう糸に両端を繋げられた乾電池であった。
どうやって時限式な発火装置を⋯?甘い⋯
後で考えれば良いさっさと出ないと⋯!
「かぜやま!」
「はッ!?」
ランが突然持っている二人を投げたかと思うと俺に抱きつきそのまま押し倒す。
瞬間炎が廊下を包みランの体を焼かす。
「ランッ!おい!」
「だいじょう⋯ぶ!」
炎が消えたと同時にランを起こして抱き起こす。
「大丈夫か!?」
「うん⋯獣族はこの程度じゃ死なない⋯けど⋯回復しないと⋯だから⋯ちょっと⋯ねむるね?」
「あぁ⋯大丈夫だよ⋯ゆっくり寝てね。」
「後…お願いね」
そう言うとランは目を閉じ静かな寝息を立て始めた。
それを確認すると上着を脱ぎランを背負うとランと自分の身体を服で縛り離れないようにする。
そしてトートとリンの二人を左右に抱きかかえ。無理やり体を動かし歩き始める。
「クソ⋯やってくれたな俺⋯!」




