32話 高速展開Ⅱ
「んじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
「行ってくる!行ってくるねぇ!!」
ということで今度は俺がランにおぶられる。
あれから結局コイツは4時間ぐらい睡眠を決め込み俺とデュークさんはその間仲良くティータイムを続けていた。
「しっかりつかまっててねえ!しゅっぱ〜つ!」
「安全運転でぇえええええ!!??」
言い切らないうちにすごい速度で玄関口から飛び出し空をかける。
やっていることは多分脚力で思いっきり地面を蹴って飛んでいるんだろう。
後ろを見ると玄関がえぐれていた。修理はデュークさんだろう。南無
というかそんな悠長なことを言ってられねぇ。
「rぁ!」
声が出ない。というか口から空気が出せず逆流してくる。
当たり前だ正確な速さはわからないが何度か下に竜者が見えたということは大体の早さは車以上、もしかしたら新幹線レベルかもしれない。
そんな速さに身をおいて無事なわけがない。
空気がランの肩に抱きつく手に当たり痛む、本当に痛い、折れてるかもしれない。
呼吸も出来ない、空気を吐こうとしても入ってくる空気が強すぎて押し返され逆流する。
肺で空気が処理しきれていないのか腹が苦しくなる。
嘔吐感、腹痛に襲われる。辛い。
できるだけ当たる面を減らすため腕をランの背中に持ってきてその間に頭を潜り込ませる。
ただの移動なのに久しく忘れていた死の辛さを思い出す。
頭を腕に当て確かに折れていない腕の骨の硬さを確かめて身を守る。
一体どれだけ耐えなければいけないのだろう。
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「とうちゃぁっく!」
ランが一気に体を止めてその反動を地面をえぐりながら庭の草木が受け止める。
「カハァ!はぁ…はぁ…」
「ん?どしたのどしたの!辛そうだね!」
「ハァハァハァハァ」
返事ができない、とりあえず地獄に落ちろのジェスチャーとして親指を立て地面に向けておく。
「わっは〜!ご不満たっぷりみたい!」
「ハァ…ふぅ…ふぅ…そりゃ…そうだろ⋯しぬぞ⋯おれ⋯」
「ひんじゃく!」
くっそどこぞの吸血鬼みたいなこと言いやがって⋯
俺は時も止められなければプラチナでもねえんだぞ畜生。
「ふぅ…よし、息もどってきた」
「大丈夫そう!もどろもどろ!」
「わかった、わかったから手を引っ張らないでくれ。」
死にかけの奴にすることかなんて考えをしてる間に手を引っ張られ城内に連行される。
というかこの犬を制御してた二人は何者なんだよ。
「誰も居ない?リン!ユメちゃん!」
「まぁ確かに誰も居ないな⋯上の客室にでも居るんじゃないか?」
「ん〜ん!人の反応がないの!呼吸もない!」
嫌な予感が頭に起きる。原因は知らない。でも確かに思うこと。
あの時の、ディルム戦の時の背筋をなぞられるような感覚。
「で、出かけてるだけだろ?」
「ん〜ん!出てない!」
「なんで分かるんだ?」
「傘が玄関においてあるの!ユメちゃんはこれがないと外に出ないの!」
ピースが埋まる、状況証拠はさらに嫌な方に向かう。
まだ、まだだ。
「じゃぁ…全員バルコニーにいるとかは?」
「そこなら着地するときにみえる!」
「地下室とかは!」
「ない!」
出かけているだけであって欲しい。駆け出す。
近くの適当なドアを開け放す。
「居ない」
隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」
「ラン向こう見てくる!」
一回の西側はすべて見たはず。東はランが向かっているなら2回だ。
中央の玄関口に戻り大広間から階段を駆け上がる。
おなじことをする。
一つ扉を開ける「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」隣も「居ない」
借りる予定の自室に着く。そこを思いっきり開け放す。
臭い。鼻が曲がりそうだ。
錆びた鉄の匂いが何百倍にも圧縮されたような匂い。
これは血だ。気付いちゃいけないことに気付く。
駄目だ、進むな。
警鐘をどれだけならしても体は動かない。
見えてしまった。倒れている頭が。2つ。
緑色と水色、先程の何十倍の嘔吐感に襲われうずくまり。床に溜まったものをぶちまける。
が、胃液しか出てこない。
その場から逃げ出す。それしか出来なかった。
三人。まだランとトートとリンが走り出す。
一番生きているであろうランと合流しろ。
階段を駆け下り東側へ、行く必要はなかった。
先ほども嗅いだ匂いが漂い、ナイフが一本落ちている。
拾って確認する。血が、湿っている。
吐き気、もはや吐く物もなく感覚だけで俺を苦しめる。
駄目だったんだ。ヒーロー気取りでこんなところに来ては。
左側を見る。絶望、3つの頭が転がっているだけ。
体は確認する気にもなれない。
ゆっくり体を立たせ外に出ようとする。
まだ、助けを呼べば助かる。そう思わないと。思いたい。
そう思った直後目の前が暗くなる。
死ぬんだ、死。
でも、良いのかもしれない。
どうせ戻る。俺が関わるべきではなかったんだ。
眼の前の一箇所に光が灯る。その光を眺める。
暖かく、守りたいと思うような。そんな光
そうだ、最後にこれだけでも、守らなくてはいけない。
何が何でも。誰を敵にしても




