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いつかの世界の転移生活  作者: 双眼鏡
一章ワタシの国々 1幕 異世界の夕暮れ

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18話 たかだか一発の勝敗

息を切らしながらアテネは剣を杖代わりに立ち上がる。

ディルムが倒れたのを確認した後アテネに駆け寄り支えようとする。


「来るな。誰だ」


「アテナ…?」


一歩近づく。が足が止まる。

眼の前の友人に剣を突きつけられる。

不意に懐かしさが出てきて笑ってしまう。


「最初にもやったよなこれ。」


「ッ…!」


それもそうか俺は5ヶ月の入院期間があったがアテネからしたらたった一ヶ月前の話。

そんな懐かしくは無いか。いや俺からしても半年だけどな。


「さっき死んでいたやつが生き返るわけ無いだろう…!死者を…友人を馬鹿にするのも大概にしろッ!」


「……ごめんそれはそうだわ。なんでこうなってんだろ」


アテナが剣を下ろす。それは納得からくるものではなく疲労からくるものであることは見て取れた。

駆け寄りアテナの肩を持って立たせる。


「一旦偽物でもいいから休もうぜ?」


「…あ……あぁ、わかった」


少しつっかえながらもその言葉を吐き出す。さすがのアテナも疲労が溜まっていたのだろう。

そしてアテナを壁まで持ってきて腰を下ろさせる。


「で、ディルムなんだけど」


「………即死だ、ろう…」


直接ではないとはいえ人を殺すのに加担した。

その事実が重いのか目をつぶり。拳を握りしめ。途切れ途切れつぶやく。

それでも警戒だけはしなくてはいけない。

襲撃者がディルムだけとは限らないから


「マジで言ってんのか…」


そこには血だらけで立っているディルムの姿があった。

喉が潰れているのか口から泡を出しながらディルムが二人めがけ走り出す。

とっさに銃を構えてしまう。ただの虚仮威し。

マガジンは使い切っている。それでもだ


「ッ!」


「ァ!コォ…コォ」


なにか言っているようだがわからん。

もはや風山が歩きでも抜かせるレベルで走り近寄ってくる。

蹴りを構える。まだ銃は構えない。


「殺れ…もはや行きている方が辛いだろう。」


「わかった…」


銃を構える。

手が震える。

これで本当に良いのか?

殺せるのか?俺に?

前撃ったのは生き残るためとアテナを助けるための無我夢中の行動だ。

今回は違う。

とどめを刺す。

刺さなければならないんだ。

そうだ。何をためらっている。2度も俺を殺した相手だ。

躊躇する必要がどこにある。

ない。

手の震えが消える。

今はただ目の前の相手を殺すことに意識を向ける。

殺す。

命を絶つ。

それでいいんだ。

それが正しいんだ。

引き金を引き切る。

用意したマガジンの弾はすべて撃ち切っている。

違う。残していた。

最初のマガジンで一発、薬室に残してからリロードしたんだ。

殺せる。


発射された。発射されてしまった凶弾がディルムの胸を貫く。

ディルムはそれを受け貫通した胸から取り出した小さな石を掲げ仰向けに倒れる。

事切れる直前か石が割れる。

淀んだ思考を吐き出すようにため息を吐く。


「死んだ…な」


「あ…あぁ…殺したんだ…」


アテナがゆっくり立ち上がる。

すこしだけ休みたい。考えたくない。

手に付いた返り血を服で拭う。


「言ったのは私だが…撃てたんだな。」


わからない。答えられない。なぜ撃った。

撃たなくても死んでいた。

恨み?だとするなら撃たないほうが正しい。

誰も喋らない。死体もアテネも風山も。

誰がわかってくれるだろう。

今の一発は残っていなかったはずだ。

だって最初に風山はすべて打ち切っていた。

ハッタリなんてする余地はなかった。


ならなぜ薬室に一発隠していた?


「…ま…!…ぜやま…!風山!」


聞こえたアテナの声。

落ち着け。そんなこと…そんなことではない

が一旦後回しだ。


「どうした?」


「しくじった…死んで発動するそういう罠だ。多分誘導された!」


納得した。させられた。殺意を持たされていた。

そういう話だ。普段の俺なら絶対に撃つことをしなかった。


「その通り、彼が死ぬと僕が出てくるそういう話さ。」


その男は体を白青の鎧で包み、赤色のマントで彩られた。

17歳ぐらいだろうか自信満々と言わんばかりの顔をした青髪の青年。

腰には二振りの剣を携えておりその片方に右手が添えられている。


「デンライ…ッ!」


「ご存知だったかい?まあそうかい僕はなぁんていったってこの国の…」


剣を抜き放ち空へ掲げる。

そうして胸を張り高らかに叫ぶ。


「僕こそ英雄!デンライの統一者その名も!」


それを聞いたアテナも風山も震える、この男には戦っちゃだめだ。

警笛を鳴らすただ名乗られただけだ。それなのに心臓の鼓動が強くなる。

ここから始まるのはラウンド2なんかじゃく強者が弱者を

像が蟻を潰すかのような。一方的なことだ。

威圧感も恐怖感もない。あるのは勝てないという確信だけ。

それをわかった瞬間。アテナが低い声で叫ぶ。


「アルサイト・ディメルバ…!!!」


英雄はただそこに有っていた。

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