第四章 -共闘- 6 『作戦の概要』
時は遡り、加藤たち一行がアルフレッドに攻撃を仕掛ける少し前・・・。
「ーーーんで、さっさと作戦の詳細を話しなよ。島田」
五島の急かすような声に後押しされてーーー、
「ーーーあぁ、分かってる。時間もないし、早速、俺の作戦をみんなに伝える」
島田は、頭の中で組み立てた “アルフレッド討伐戦” の概要を話し始める。
「まず、作戦の大前提として、加藤がアルフレッドを1撃で倒せるという仮定の元で動く。つまり、大まかな流れは、俺たちでアルフレッドの隙を作り、加藤の攻撃に繋げるーーー、という感じだな」
「ーーーちょい待ち。いきなり言葉を挟ませて貰うけど・・・加藤、アンタ本当に、あんな化け物みたいな奴を 1撃 倒せんのか?」
「・・・そ、そうだよね・・・い、いくら加藤くん でも、、ぁ あんな強い敵を、、い 1撃で倒せるなんて・・・ぃイメージ沸かない、、かな・・・」
早々に口を挟んできたのは、五島と四門の2人だ。
だが、2人の心配も分かる。
RPGのボス戦だって、よほどのレベル差がなければ、ワンパンKOなんて不可能だ。そこらのスライムやゴブリンではないアルフレッドを、1撃で倒せるイメージなど、ここにいる者の ほとんどが湧かないのが当然だろう。
そんな五島と四門の問いを受けて、島田は、ちらり と加藤に目を向ける。仲間から疑問が出たが、“応え” はあるか という目だ。
その目を受けて、加藤は降り始めた雨のように、ポツポツと自分の考えを話しだす。
「・・・確かに、アルフレッドは強力だから、はっきり言って 1撃で倒すのは難しいと思う」
「だったら私たちの連携で、少しずつダメージを与える作戦にした方がいいんじゃないか?」
「ーーーいや、それじゃダメだ」
「ーーー!」
「さっき、1対1で戦ってみて分かったが、ちまちまダメージを与えても、奴は直ぐに全回復しちまう。多少のダメージなんて、奴には無意味なんだ。だからーーー、」
加藤は、チャキ・・・と、鞘に収めた日本刀を みんなに見えるように前に出した。
「ーーー奴が回復する暇がない、圧倒的な 1撃で即殺する・・・勝つにはコレしかない」
「・・・!」
「な、なるほど・・・」
加藤の理屈は筋が通っている。
敵は、RPGに出てくるボスではなく、実際に生きている人間だ。首を刎ね飛ばせば死ぬはずだし、心臓を串刺しにしても同じことだ。
ダメージゲージがない以上、加藤の言う圧倒的な1撃が決まれば、そこで勝負はつく。
「ーーーゴホン。それじゃ、俺の作戦の話に戻っていいか?」
五島と四門が納得したのを見て、島田が話を元の軌道に戻す。
「はいはい。話の腰を折って悪かったね。続けて」
「それじゃ 話を戻すが、俺たちはアルフレッドの隙を作って、加藤の 1撃に繋げる。そのためには、まず・・・加藤がアルフレッドに悟られずに、出来るだけ奴の近くまでいく必要があるんだが・・・それは、海の《入れ替え》でやる事にする」
「ーーー! 私の!?」
突然、名前を呼ばれた志摩 海は、驚いたように自分の顔を指差し、島田に真ん丸な瞳を向ける。
「そうだ。海が気づかれないようにアルフレッドへ近づき、そして、姉の空と居場所を《入れ替え》する。加藤を連れてな」
「えぇ・・・責任重大やん。ちゅうか 私、アルフレッドに近づける自信ないねんけど」
「それについては、ちゃんと考えてあるーーー、四門」
「ぅ、、、な、何?」
「四門には土塊人形を 2体 創ってほしい。強力な奴と、もう1体は そうでもない奴」
「ぅ、うん・・・良いけど・・・なんで?」
「海とアゲハを、アルフレッドまで近づけるための鎧にするためだ」
「ーーー!?」
「ぇ? 私も近づくの?」
今度はアゲハが、島田の言葉に反応した。
「あぁ。順を追って説明するから聞いてくれ。まず初めに、シャノンと五島さんが、さっきの《追尾する火球》をアルフレッドの周囲に落として、奴の視界と魔力感知を鈍らせる。魔力の発生源が近くにある時、アルフレッドが うまく魔力感知で俺たちの姿を捉えられないのは、さっきのシャノンと五島さんの陽動で確認済みだ」
「・・・!」
その瞬間 シャノンは、先ほどアルフレッドから逃れられた時の事を思い出す。
五島の《必中》との合わせ技を使って、魔力を含んだ炎をアルフレッドの周囲に撒き散らした時、アルフレッドは 炎の魔力に惑わされて、加藤や その他《覚醒者》の魔力を見失っていた。
(ーーーシマダの奴・・・あんな一瞬の出来事デ、アルフレッドの魔力感知の精度が高くない事を見抜いたのカ・・・末恐ろしい奴だナ)
密かに、島田を賞賛するシャノン。
だが島田は、そんな事に気づくはずもなく、変わらず作戦の詳細を話し続ける。
「その次に、炎が撒き散らす煙と魔力に紛れて、四門の土塊人形に潜んだ 海とアゲハがアルフレッドに接近する。これも さっき、四門の土塊人形なら アルフレッドの魔法を防げる事を俺の目で確認したから大丈夫だ」
「あぁ〜 確かに! さっき、それでシャノちゃんとルアンちゃん助かってたね」
ポンッ と掌の上で軽快な音を打ち鳴らしたのは海だ。
「ーーーちょい待ち。海を土塊人形に潜ませてアルフレッドに近づけんなら、加藤を直接 潜ませた方が手っ取り早くないかい? 島田の予想なら、アルフレッドは魔力感知を使えないんだろ?」
「それは俺も考えたんですが、ギリギリまで、加藤の存在をアルフレッドに気づかせたくないので、海の《入れ替え》を使うことにしました。アルフレッドも、多少は魔力感知を使えると思うんで、万が一、加藤の魔力を気取られたら、この作戦は おじゃんになりますし・・・」
「・・・なるほど。分かったよ」
「んふふ! ルアンちゃん、私の心配してくれたん? やっさしー!」
「ばか、違うよ! 島田の作戦に穴がないか確認しただけだ!」
心配した事を茶化された五島は、海の頭部にチョップをくれてやる。
次の瞬間、ゴンッ という鈍い音が海の頭の中で反響して、口や鼻、耳といった穴という穴から外に漏れ出す。
「それで話を戻すが、土塊人形を着込んだ海がアルフレッドに近いた時ーーー、《入れ替え》を発動して、街の外で待機する加藤と姉の空と居場所を入れ替える。そうすればーーー、」
「アルフレッドにしたら、俺が突然 目の前にあらわれた事になるわけか・・・」
「そうだ。この作戦は タイミングがシビアになるから、全ての合図は 斑鳩さんの《受信と送信》を 用いて行う。ーーーうまくいけば、アルフレッドの虚を突き、最強の1撃を喰らわせられるかも知れない」
「あの・・・ちょっと待って」
「!」
島田の説明が終盤に向かう中、おずおずと挙手をしたのはアゲハだ。
アゲハは、申し訳なさそうに上目遣いで島田を見てーーー。
「ーーー私の出番 無くない? ウミちゃんと一緒にアルフレッドに近づくだけで、特に何もしないっぽいけど?」
「アゲハには、海が確実に近づけるようにアルフレッドの気を引いて欲しいのと、もうひとつ。大事な役目があるよ」
「! 大事な役目?」
「あぁ。それはーーー・・・」




