第四章 -共闘- 5 『隙だらけ』
四門が 2年もの寿命を《贈命》して創り出した土塊人形との肉弾戦を嫌って、空へ陣取ったアルフレッド。
圧倒的高所からの魔法爆撃で、土塊人形を一方的に粉々にしようと画策するがーーー、
「ーーーご、、が・・・っ」
シャノンと五島の合わせ技である《曲がる火球》に、一瞬ばかり気を取られた隙を突かれて、土塊人形の接近を許してしまったアルフレッドは、相手の硬い拳を 顔面に受けてしまう。
瓦礫や石などが ぐちゃぐちゃに混じり込み、四門の高魔力で固められた土塊人形の拳だ。
アルフレッドと言えど、モロに喰らえばダメージは必至だろう。
「ごは・・・っ」
顔のどこからかは分からないが、鮮血を吹き出したアルフレッドは、大きく身体を仰け反らせ。
その隙を、さらに突いてーーー、
「ーーーっ!?」
ボゴォンッ!! と、今度はボディに その硬い拳を打ち出した土塊人形。
瞬間、アルフレッドの すらりと長い体躯が、《く》の字に折れ曲がった。
「ご、、、ぱ・・・っ」
今度は、明確に口から血を吹き出したアルフレッド。
土塊人形を操る四門も、近くでアルフレッドの流血を見た志摩 海も、一連の攻撃に確かな手応えを感じていた。
だがしかしーーー、
「ーーー鬱陶しい!!」
この程度で、《達人級》の魔道士が倒せるはずがない。
さらなる追撃を加えようとする土塊人形に向かって、アルフレッドは無造作に手を振り払った。
その瞬間、アルフレッドと土塊人形の間にある空間で、大規模な爆発が巻き起こる。
ボボボボボォンッ!!! と空気を揺らして衝撃波を撒き散らした爆発によって、土塊人形は遥か後方に吹き飛ばされてしまう。
「ーーー《大回復》」
その隙を突いて、アルフレッドは自分に回復魔法を掛ける。瞬間、シュッゥゥンッ という軽やかな音を立てて、薄緑色の淡い光がアルフレッドの身体を包み込んだ。
ものの数秒で、アルフレッドの傷は完全回復してしまう。
その光景を、斑鳩の《受信と送信》を通じて見ていた島田はーーー、
「ーーーやはり、ちまちまダメージを与えても、直ぐに回復されてしまうな・・・回復できないほどの速度で、強力な一撃を与えるしかない・・・斑鳩さん、加藤に連絡してください。出番だと」
ついに、加藤を戦場に出す決断を下す。
島田の指示を《受信と送信》で聞いた斑鳩は、『了解』と短く応じて、遠くーーー、《岐阜の街》の外で待機している加藤に通信を図った。
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チチチッ という機械的な音が加藤の脳内に流れる。この音は、斑鳩の《受信と送信》の合図だ。
「はいーーー、こちら加藤!」
斑鳩からの通信の音を聞いた加藤は、“待ってました” と言わんばかりに、即通信に応じる。
『加藤。直ぐに出番が来る。準備はいいな』
「当たり前だ。もう待ちくたびれてるぜ」
闘志を多分に含んだ声音で応じた加藤は、今、《岐阜の街》の外ーーー、住民が避難している避難所から少し離れた廃墟に身を隠していた。
『そうか、分かった。それじゃ、タイミングは空に伝えるから、お前は いつでも攻撃に入れるように気を練っておけ』
「了解」
そう、志摩 海の双子の姉である志摩 空と共に・・・。
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アルフレッドに吹き飛ばられた土塊人形は、一度、地上に舞い戻った。
そして直ぐに 地を蹴り、空中に陣取るアルフレッドに向かって、再び接近する。
その速度たるや、まるで砲弾のように高速だ。
だがしかしーーー、
「また、性懲りもなく向かってくるか。鬱陶しいとーーー、言っているだろうが!!」
真っ直ぐに突っ込んでくる敵を、何もせずに待ち構えてやるほど アルフレッドは優しくはない。
「ーーー《断空刃》」
アルフレッドが手刀で空を斬り裂くと、そこから、鋭い かまいたちが出現して、突っ込んでくる土塊人形へ真っ直ぐに飛んでいく。
刹那ーーー、斬!! と土塊人形の片腕が飛んだ。
腕を犠牲にして、ギリギリのところで かまいたちの軌道を変えたのだ。これで、本体が両断される事を防いだ土塊人形は、そのままの勢いでアルフレッドへと突っ込んいく。
「チッ! うざったい・・・っ!!」
アルフレッドを攻撃可能領域に入れた土塊人形。
だがしかし、空中の機動力ならば、アルフレッドの方が格段に上だ。
「ーーーふん」
軽い声と共に、身体を横へ ズラしたアルフレッド。
当然、空を飛ぶ能力がない土塊人形は、進行方向から目標が消えても・・・、
「この私に空中戦を挑んだのが間違いのようだな」
それを追う手段がない。
ゴォ!! と勢いよく真横を通り過ぎた土塊人形を、アルフレッドは、そのまま見送る。
そしてーーー、
「空中では避けようがあるまい。死ねーーー《六星座》」
真上で、もがくように空を掻いている土塊人形に攻撃を仕掛けるーーー、その瞬間だ。
急に方向を転換して地上に目を向けたアルフレッド。
「そうだよなぁ・・・初め、私に近づいてきた泥人形は2体。ならば、1体が気を逸らし、もう1体が隙を突いて私に攻撃を仕掛ける。そう言う作戦だよなぁ」
地上に向けられたアルフレッドの目に映るのは、何やら攻撃を仕掛けるそぶりを見せる もう1体の土塊人形だ。
「残念だな。この私が、そう何度も隙を見せるものか」
「ーーーいや、どう見ても隙だらけだ」
「ーーーっ!?」
突如、見知った声が頭上から聞こえてきて、アルフレッドは咄嗟に上を向いた。
アルフレッドの頭上には、先ほど攻撃を躱した土塊人形が居たはずなのだが・・・何故だか今はーーー、
「ーーー加藤 兵庫!?」
土塊人形は消えて、アルフレッドの頭上には加藤の姿があった。




