第四章 -共闘- 7 『王手』
「ーーーなっ!?」
突如、自分の真上に加藤が現れた事に、理解が追いつかないアルフレッド。
(ーーーなぜだ!? なぜ加藤 兵庫が 私の真上に!?)
それも そのはずだ。
さっきまで、アルフレッドの真上にいたのは、2メートル半ほどの土塊人形だけ だったはずだ。
それが一瞬 目を離した隙に、加藤へ姿を変えたのだ。
(ーーー泥人形の中に隠れていたのか!? いや、それなら加藤 兵庫がまとっていた土塊まで消えてなくなるのは おかしい!? という事はーーー、《瞬間移動》の類で姿を現したのか!? だが、加藤 兵庫の能力は、そんなモノでは無かったはず・・・ならば、あの《獣人種》の仕業か!? いや しかし、奴は遠方から《火球》を放っているはず? 距離を置いて、他者を正確な座標に飛ばせるはずがない! では、なーーー・・・)
刹那の間、アルフレッドの脳内では、加藤が姿を現した理由について幾つもの推測が飛び交う。
だがしかしーーー、
(ーーーだめだ! そんな事より、この位置はマズい!!)
悠長に頭を働かせているほど、アルフレッドの状況は落ち着いていなかった。
この時、アルフレッドは地上15メートルほどの上空で、地面を向く形で浮遊していた。つまり、突如として真上に姿を現した加藤に 背を向けていたのだ。
加藤は、すでに日本刀を抜刀して、最上段で構えていた。
攻撃態勢が整った相手に、いつまでも無防備な背中を晒している訳にはいかない。
(面倒だが、、今は一旦 態勢を整える!!)
と言っても、上空での移動手段は アルフレッドに分がある。
「ーーー《流星闘技》」
次の瞬間、アルフレッドの身体から、眩い光が発せられた。そしてーーー、
「どうやって私の背後に姿を現したか分からんが、移動手段がない上空に のこのこ現れたのが間違いだったなぁ!!」
夜空を駆る流れ星のように、アルフレッドは高速で移動するーーー、事はなかった。
「ーーーここぉ!!」
刹那、地上にいた土塊人形の身体が、バガァ と開いて、中からアゲハが姿を現した。
アゲハの手には二丁拳銃が握られており、その銃口は、上空で光を発するアルフレッドに向けられている。
瞬間、《第六感》を発動して、どの角度、どのタイミングで発砲すればアルフレッドに銃弾が当たるのかを感じ取ったアゲハは、その引き金を迷わず引いた。
鳴り響いた乾いた音を置き去りにして、上空に向かって高速で空を切り裂いて行く2発の弾丸はーーー、
「ーーーなっ、、にぃ!?」
見事、アルフレッドの眉間と心臓部を弾道上に捉えた。
あとコンマ1秒もしたら、アルフレッドはアゲハの銃弾によって、身体に風穴を開けられるだろう。
だが当然ーーー、アルフレッドに物理攻撃の類は効かない。
《防御装》と呼ばれる、汗腺から放出される魔力の層によって、魔法耐性がない物理攻撃は自動的に弾かれてしまうのだ。
事実、アゲハが放った2発の銃弾は、アルフレッドの皮膚スレスレで《防御装》によって弾き飛ばされてしまった。
「くそッ!!」
絶好の不意打ちが不発に終わって、苦々しく言葉を吐き捨てたアゲハ。
だがしかしーーー、
「ーーーなぁんて、ね」
これで良いのだ。
アルフレッドは、デフォルトで《防御装》を はじめとする防御魔法を、即発動に設定している。
つまり、防御魔法が発動されたという事は、背後にいる加藤から逃げようと思い 発動した《流星闘技》が自動的にキャンセルされて しまったという訳だ。
「ーーーマサルが言ってた 私の重要な役目って、これだったのね。アルフレッドが逃げようとした時に、足止めするっていう」
その時だ。
アゲハの脳内に、島田の声が鳴り響いた。
『ーーーアゲハ!! 今直ぐに そこから離れろ!!』
「! マサル?」
『加藤のどデカい 1撃が来るぞ!!』
そこで、ブツンッ と島田との通信が切れて、それを合図に、アゲハが潜んでいた土塊人形が突如、元の人型の形に戻って走り出した。
「ーーーわ、わっ!」
多少、強引に戦場を離脱したアゲハ。
こうして、《岐阜の街》の中央に展開された戦場には、アルフレッドと加藤・・・と、海と《入れ替え》で加藤を運んできた志摩 空だけが取り残された。




