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第四章 -共闘- 1 『魔法発動の法則』


「・・・」


 シャノンは、崩壊した《岐阜の街》の中から 西の空を見上げた。今、彼女の縦に裂かれた瞳孔には、青空だけが映り込んでいる。

 だがしかし、シャノンは魔力感知を発動して、同じように西の空を見る。

 するとーーー、


「ーーー!」


 まるで夕焼けのように、西の空が真っ赤に染まっていた。


(・・・だいぶ やべぇ数のモンスターが岐阜に攻め込んでいやがるんだナ・・・。魔力の色合いからザコばかり ぽいけド、数えらんねぇくらい数が多イ)


 現在、西から攻め込んで来ているのは、アルフレッドの高魔力に錯乱した低級モンスターたちだ。まるで光につられる虫のように、アルフレッドの魔力に引き寄せられて、《岐阜の街》に向かってきているのだ。

 その大群を、櫻井が指揮する冒険者の軍団で堰き止めているのだが・・・。


(・・・万が一、キヨカが指揮する冒険者たちがモンスターの大群に敗れて、大量のモンスターが岐阜に傾れ込んできたりしたラ、岐阜にある4つの街は滅びちまウ。そうなリャ、アルフレッドが どうとか言ってる場合じゃネェ・・・《日本復興党》が軍を出すような大事になル。正直、今、岐阜の街々の存亡はお前に懸かってんダ・・・頼むゼ、キヨカ)


 心の中で、遠く奮闘している友人に激励をくれるシャノンは、意識を今に向ける。

 実際、今のシャノンには、櫻井の心配ができるほど余裕はない。


(ーーーオイラ モ、キヨカの弟子の力になるため頑張るからヨ!)


 これから、低級モンスターの大群とは比べ物にならないほど強力な魔道士と戦い、生還しなければならないのだから。

 その魔道士の標的が、岐阜にある各街々や《日本復興党》ではない事が唯一の救い・・・というか、気楽な部分ではあるが。


「シャノン」

「ン? なんダ、シマダ?」

「みんなで共闘する事に決まった今、シャノンにいくつか確認しておきたい事があるんだが・・・この質問の答え次第では、俺の作戦がうまくいくか どうかが決まる」

「オォ・・・責任重大じゃねぇカ・・・なんでも聞いてくレ」

「それなら、単刀直入に聞くが・・・魔道士ってのは 2つ以上の魔法を同時に扱えたりするのか?」

「・・・!」


 島田の問いに、シャノンは数瞬ばかり黙り込む。質問の意図や答えに悩んでいるから黙っているのではない。

 一言では答えられないような質問だったため、応答に詰まってしまったのだ。

 シャノンは、困ったように三角猫耳が生えた銀髪を、ガシガシ と掻きむしる。


「・・・なんて言えばいいかナァ〜・・・同時に使える時もあるシ、使えない時もあル」

「ーーーと言うと?」

「魔道士の練度にもよるガ、魔法を扱う時にハ、それなりの集中力を要するもんなんダ。1つの属性の魔法を使用するよりモ、2つの属性を使用する時の方が集中しなきゃだシ、3つ4つとなってくるト、もっとダ」

「なるほど・・・」


 シャノンの答えを聞いた島田は、指で(あご)(しご)きながら、先ほどアルフレッドが見せた行動を思い起こす。


(ーーーなら、さっきアルフレッドが見せた行動は集中力不足によるもの? 一斉に攻撃を仕掛ければ・・・あるいは? いや、だが現実性が乏しい気が・・・)


 頭から黒いモヤを出して、「うむむ〜っ」と悩む島田。


「ァ! あト、デフォルトで発動魔法を事前に決めてる時とかハ、自動的に その魔法が優先的に発動する時があるナ。そん時ハ、複数の魔法を使用していてモ、全部キャンセルされちまうナ」

「ーーー!? それは・・・どういう?」

「魔法を扱うにハ、頭ん中で魔法の構築式を作り上げテ、外界に魔法陣を展開しテ、んで発動するって手筈がいるんダ。だけド、これは時間が食うかラ、ほとんどの魔導士が いくつかの魔法の構築式を事前に頭ん中で作り上げテ、瞬時に発動出来るようにしてんダ」

「RPGのショートカットツールみたいな感じ? いちいちアイコン開いて魔法を選択して放つんじゃなくて、コントローラーのボタンひとつで即発動できるイメージだよね?」

「そうそウ。そんな感じダ、アゲハ」


 シャノンがTVゲームという文化を知っているかは謎だが、アゲハのうまい例えに激しく同意する。


「マァ、アゲハが言ったようなショートカットしテ、即魔法を放てるように設定できるんだガ、これには ひとつ欠点があル」

「順当な手順を踏んで発動した魔法より、優先して発動されてしまうーーー、という点か」

「そうダ。よく分かったナ、シマダ。例えバ、防御魔法をデフォルトで設定しちまっているト、発動条件下ーーー、つまリ、攻撃を受けた際、今 発動している魔法がキャンセルしテ、防御魔法が展開されちまうって訳ダ」

「・・・! なる、、ほど」


 次の瞬間、何やら ブツブツ と呟きながら考え込む島田。10秒ほど、島田の呟き思考が続いただろうか・・・そしてーーー。


「加藤。お前、アルフレッドに何発入れたら倒しきれる自信がある?」

「! 何発って・・・?」

「俺たちの中じゃ、アルフレッドにまともにダメージを与えられるのは 加藤か四門(しもん)くらいだ。今回の作戦では、四門には守りに入ってもらいたいから、実際の攻撃は加藤に任せたいんだが・・・加藤は何発でアルフレッドを倒せる? その答えによって、俺の作戦は変わっーーー、」

「ーーー1発だ」


 島田の言葉を遮るように、加藤は短く答えた。


「どデカい一撃をくれてやれば、確実に倒せる自信がある」


 ぐぐぅ と日本刀(かたな)()を握る手に力を込めた加藤。

 そんな姿を見た島田は、ニッ と力強く口元に弧を描いた。


「よし! それなら、俺が考えた作戦をみんなに伝える! かなり危険だが、うまくいけばアルフレッドを倒せるはずだ!!」

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