第四章 -共闘- 2 『作戦開始』
「ーーーむ?」
更地となった《岐阜の街》の中央に陣取るアルフレッドは、街の壁際のーーー、ある一点から感じた高魔力に眉をひそめる。
と、ほぼ同時に、魔力を感じた場所から、ボボボボボンッ!! と複数の火の玉が打ち上がった。
「ーーー《火球》。あの《獣人種》の魔法か。だとすれば・・・これはまたーーー、」
アルフレッドが察した通り、打ち上がった複数の《火球》は、空で何度も軌道を変えてーーー、
「ーーー曲がる火球か」
街中央に居座るアルフレッドに向かって落ちてくる。
その動きは、さながら 生きた鳥のようだ。
火の鳥のごとき縦横無尽で、空を焦がして駆ってきた複数の《火球》は、余す事なくアルフレッドへ直撃する。
瞬間、身を焼くような熱風と、激しい衝撃波がアルフレッドを襲う。
だがしかしーーー、この程度の基礎魔法攻撃で、アルフレッドが倒れる訳がない。
「ーーーさしずめ、《曲がる火球》と言ったところか・・・この魔法の原理、このアルフレッドを以ってしても分からんが・・・」
モウモウ と立ち昇る黒煙。
その中で、アルフレッドは美しい所作を以って 、指で空を切った。その瞬間、ゴゥッ! と激しい風が吹き荒れ、アルフレッドを包み込む黒煙が彼方へと霧散する。
「この程度の低級魔法では、私に擦り傷ひとつ付ける事はできん」
アルフレッドは、相変わらずの無傷な姿を現した。
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「ーーーちょ、、ぜんぜん効いてないみたいだよ、島田!」
シャノンの《火球》が直撃しても尚、無傷のアルフレッドを見た五島は、この作戦を立案した島田に抗議の念話を送りつける。
するとーーー。
『シャノンと五島さんの《火球》は、あくまで撹乱が目的ですから、気にせず打ち続けてください』
斑鳩の《受信と送信》を通じて、島田の声を脳内に受け取った五島は、苦々しく舌を打ち鳴らした。
「ーーーんな事、言ったって・・・こうも焼石に水じゃ、作戦がうまくいくか不安になるぜ・・・ッ」
「ーーーまぁマァ、そう言うなゴトウ ヨ。オイラたちが作戦の第一関門なんだから しっかりやろうゼ。この後ノ、他の奴の行動が上手くいくかハ、オイラたちの働きに掛かってんだかラーーー、よっト」
言いながら、火の玉を複数個 出現させて、五島の前で浮遊させたシャノン。
「ーーーんジャ、また頼むゼ、ゴトウ」
「くそッ・・・これ熱ぃから嫌なんだけどな」
すると五島は、メラメラ と焚き火のごとく燃える火の玉の炎に、ちょん と指先を触れる。そのまま、シャノンが出現させた火の玉すべてに指を触れた五島。
これで、シャノンの《火球》に 五島の《必中》の能力が付与された事になる。
「ーーーうっシ! んジャ、今度も しっかり操作しろヨ、ゴトウ!」
「分かってるよ。アルフレッドの視界と魔力感知を塞ぐように落とすんだろ」
次の瞬間、ボボボボボンッ!! と《火球》を空へ打ち上げたシャノン。五島は、すかさず、その《火球》を操作してーーー、
「おらぁーーー、死ねぇ!!」
相変わらず、街中央に居座っているアルフレッドの元へ叩き落した。
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「ーーーよし。これでいい」
シャノンと五島の合わせ技である《追尾する火球》がアルフレッドを襲うのを、遠くの瓦礫の影から見ていた島田は、小さく そう呟いた。
「火の玉が巻き上げる黒煙に、魔力が宿った炎・・・これで充分、アルフレッドの視界と魔力感知を鈍らせられた筈だ」
そう言うと、島田は頭の中で念じて、少し離れた位置にいる斑鳩に通信を図る。
(ーーー斑鳩さん。第一準備は整いました。そろそろ《受信と送信》で四門に繋げてください)
『おう、了解だ。少し待ってろ』
瞬間、ジジジ・・・ッ というノイズが島田の脳内で響いたと思ったらーーー、
『し、、島田くん・・・っ』
四門の訥々とした声が、島田の頭の中に聞こえてきた。
「ーーー四門、出番だ。やってくれ」
『りょ、了解!』
やはり、訥々とした自信なさげな声で、島田の指示に了解した四門。島田は、四門の弱気な声を聞いて、一瞬、彼を疑ってしまったがーーー、
(ーーー落ち着け。四門なら確実に上手くやってくれる・・・っ)
常に、言葉より行動で結果を残してきた四門ならば大丈夫だと自分に言い聞かせる。
(必ず上手くいく・・・今のところ問題はない。どうにかアルフレッドを欺いて・・・加藤の一撃に繋げる・・・っ)
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「ーーーチッ」
先ほどと同じように、絶え間なく打ち上げられる《火球》が、まるで生きた鳥のように縦横無尽に空を駆り、アルフレッドへ迫ってくる。
正直、基礎攻撃魔法の《火球》程度では、いくら放ったところで、アルフレッドにダメージを与える事は不可能だ。
アルフレッドの敵ーーー、シャノンも それはよく理解しているはずだ。
だからこそーーー、
「ーーーなぜ、先ほどから《火球》ばかり放つ? あの《獣人種》ならば、より高度な攻撃魔法を扱えるはずだろう・・・っ」
アルフレッドは、度重なる《火球》の猛襲に眉をひそめるしかない。
「まさか、本当に《火球》しか放てんのか? いやしかし、《絶対的魔法防御装》を扱えるほどの術者が、これほど早く魔力が尽きる訳があるまい・・・っ。ならば、なぜーーー、」
まったくの無意味と言って良い《火球》の炎に囲まれながら、アルフレッドは敵であるシャノンの意図を図る。
だがしかしーーー、
「ーーーむ?」
考えがまとまるより早く、アルフレッドは答えに行き着いた。
「・・・なるほど。爆音と魔力を宿した炎で、こいつらの接近を悟らせないためか」
モウモウ と立ち昇る黒煙と、魔力を多分に含んだ炎の向こう側から、2体の土塊人形が悠然とした歩みでアルフレッドへ近づいてきた。
「ーーーふはっ。加藤 兵庫よ。また、くだらん泥人形を私にぶつけて、己は逃げ隠れするつもりか」




