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第四章 -加藤 vs アルフレッド- 42 『曲がる火の玉』


「・・・これは」


 時間にしては、2〜3秒ほどしか無かっただろうか。

 アルフレッドが魔法の力で加藤を引き寄せ、加藤も引き寄せられる力を利用して突っ込み、カウンター狙いの刺突を繰り出したーーー、かと思えば、アゲハが援護射撃を放ち、アルフレッドを銃撃した。

 その後、アルフレッドは魔法を解除し、加藤と ぶつかる事は無かった。

 一見すると、アゲハの援護で加藤が難を逃れたようにみえる動きだったのだが・・・。


「ーーーどういう事だ?」


 島田の目には、アルフレッドの異質な行為が焼き付いていた。


「・・・むぅ」


 数瞬ばかり、アルフレッドの行動理由を考え込む島田だがーーー、


「・・・情報が足りないな。だが、俺の推察が正しいのならば、あるいは・・・」


 今の段階では、彼の考えは 推察の域を出ることはなかった。


「ーーー斑鳩(いかるが)さん」

「! なんだ?」


 だから、島田は隣にいた斑鳩に助けを求める。


「今、《受信(キャッチ)と送信(アンドリリース)》でシャノンに通信を図ることは出来ますか?」

「ーーーシャノンにか?」


 斑鳩は、ちらり とシャノンが居るであろう方向に目を向ける。アルフレッドが地上に降り立った時、焦って別々の場所に身を隠してしまったが、シャノンが居る だいたいの方向は斑鳩も理解している。


「ーーーまぁ、だいたいの方向と距離が分かってるからな。通信する事は可能だが・・・」

「なら、今すぐに繋いでくれませんか? 確かめたい事があるんです」

「・・・“確かめたい事?”」

「はい。もしかしたら、奴・・・アルフレッドの弱点・・・とまでは行きませんが、隙を見つける事ができると思うんです」

「ーーー!」


 島田の言葉を聞いた斑鳩は、すぐさま《受信(キャッチ)と送信(アンドリリース)》を用いて、シャノンに通信を図る。




***************




「・・・チ」


 加藤を超重力から逃したアルフレッドは、自分の手に目を落として、苦々しく舌打ちを繰り出した。


「ーーーデフォでは、《防御装(カルバリア)》を設定していたのが裏目に出たか・・・まぁ、よい」


 目を落とした手を、ぐぐぅ と握り込んだアルフレッドは、ちらり と加藤が身を隠したであろう方向を見た。

 ゴツゴツとした瓦礫が いくつも折り重なるように倒れ込んでいる。隠れる場所ならば、いくらでも ありそうな風景だ。

 実際、アルフレッドは、すでに加藤の姿を目視では見失っていた。

 だがしかしーーー、


「また、捕えれば良いだけの話だ」


 アルフレッドの魔力感知は、瓦礫の影に身を隠した加藤の魔力を しっかりと補足している。

 先ほどと変わらないゴツゴツした瓦礫の山の一角・・・倒壊した大きな建物の裏に、色の濃い赤い魔力と、ぼんやり と光る水色の魔力を見たアルフレッド。


「ーーーそこか」


 その2つの魔力に向かって、再び《暗黒武闘(ダークマター・ブドー)》を発動するーーー、その時だ。


「ーーーっ!?」


 ボボボボンッ!! と別の瓦礫の影から、いくつかの火の玉が噴き出した。


「魔法・・・《火球(イグニ・バルス)》か。あの《獣人種(パットフット)》が放ったものか。だがーーー、」


 魔法が噴き出した場所は、先ほどアルフレッドが《五芒星(ボー・ガロン)》で爆破した瓦礫の影ーーー、つまり、シャノンと五島がいるであろう場所だ。

 アルフレッドは、突如 放たれた魔法に、とりあえず警戒する。

 だがーーー、


「ーーーどこへ放って・・・?」


 シャノンが放ったであろう複数の《火球(イグニ・バルス)》は、アルフレッドではなく、あらぬ方向へ飛んで行ってしまう。


(ーーー陽動か? いや、それにしても・・・)


 空に向かって勢いよく打ち上げられた《火球(イグニ・バルス)》を目で追うアルフレッド。次の瞬間、打ち上げられた《火球(イグニ・バルス)》が曲線を描いて、アルフレッドの元に降り注いできた。


「ーーー!!?」


 咄嗟に 地を蹴り、《火球(イグニ・バルス)》の着弾予想地点から身を引いたアルフレッド。

 正直、《達人級(マスタークラス)》でもないシャノンが放った魔法攻撃など、アルフレッドにとっては躱すまでもない。魔法で防御するなり、軽くあしらうなりすれば良いだけのモノだ。

 ならば なぜ、アルフレッドは、わざわざ魔法を回避する道を選んだのかーーー、その理由は、《火球(イグニ・バルス)》の あり得ない動きに、アルフレッドが 一瞬の混乱したからだ。

 通常、《火球(イグニ・バルス)》などの基礎攻撃魔法には、軌道を操るなどという手段ない。つまり、放ったら真っ直ぐ飛んでいくだけで、軌道が大きく曲がったりなどはしないのだ。

 だがしかし、シャノンが放った《火球(イグニ・バルス)》は 打ち上がり、空で向きを変えてアルフレッドに向かってきた。

 その歪な動きに違和感を覚えたため、アルフレッドは、わざわざ身を引いて躱したのだ。


(ーーー追尾機能を持った《火球(イグニ・バルス)》だと!? そんなもの、聞いた事がない・・・だが、実際 この目で見た以上、何らかの仕方がーーーッ!!?)


 瞬間、空から落ちてきて、地面に激突する筈だった《火球(イグニ・バルス)》のいくつかが、追突スレスレで、ぐんっ とアルフレッドの方に向きを変えた。


「ーーーなっ!?」


 突然の事で驚いたアルフレッドだが、何ら不思議な事はない。空で軌道を変えたのならば、地面スレスレでも軌道は変わる筈だ。

 次の瞬間、軌道を変えた《火球(イグニ・バルス)》が、アルフレッドに直撃する。

 ボゴォォォンッ!! という爆音を響かせて、熱風と衝撃波が辺りに撒き散らされた。

 と同時にーーー、


「よっしゃ!!」


 《火球(イグニ・バルス)》の発信源である瓦礫の影ーーー、つまりシャノンと五島がいる場所から高らかな声が聞こえてきた。


「やったぜ、シャノン! あのヤロゥに 1発かましてやった!!」

「アァ。だガ、あの程度で《達人級(マスタークラス)》の魔道士は倒せなイ! 今のうちニ、シマダやカトウたちと合流するゾ! 何やラ、シマダに秘策があるみたいだからナ!」

「ーーーおう!」


 快活にシャノンへ言葉を返した五島は、トドメと言わんばかりに、アルフレッドが居るであろう方に唾を吐いて 中指を立ててみせる。

 そう、一連の 曲がる《火球(イグニ・バルス)》は、シャノンと五島の合わせ技だ。

 シャノンが発動した《火球(イグニ・バルス)》に五島が触れて《必中(ザ・ヒット)》の能力を付与する。すると、敵を追尾する強力な火の玉ができあがるという訳だ。

 実際は、これは島田が考えた案なのだが、自分の能力でアルフレッドに一矢報いる事ができた五島は、上機嫌で島田たちとの合流に向かった。

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