第四章 -加藤 vs アルフレッド- 41 『一瞬の出来事』
ギャリィィィィ・・・ッ!! と、加藤の白刃とアルフレッドの腕が交錯して、鈍色の火花が散った。
鋼の日本刀と人の腕。物質も硬度も異なる 2つがぶつかり合ったとは思えない現象が 2者の間で巻き起こったが、アルフレッドの魔法の力を持ってすれば 何も驚く事ではない。
「ーーーっ!!」
加藤は、日本刀を防いだ、アルフレッドの腕をまとう光のオーラを見た。まるで、刃物のように鋭利に尖り、形態変化した そのオーラ。間違いなく魔法の類だ。
(ーーーマズった! 魔法で防がれる事を予想して、《部分強化》で日本刀を強化するんだった!)
基本的に、魔法というのは 同じ魔法でなければ破壊できない。もちろん、他にも様々な攻略方法もあるにはある。加藤の《部分強化》も、そのひとつだ。
物体の強度や性能を格段に上げる加藤の《部分強化》は、同時に、強化した場所に強力な魔法耐性を帯びる効果がある。
つまり、物理的に破壊不能な魔法を、加藤が強化した日本刀ならば破壊できるという事だ。
(くそッ! 今度は、強化して斬り付ける!!)
このままでは ダメージが与えられないと判断した加藤は、咄嗟に日本刀を引き、アルフレッドと距離を取る。
そして、《部分強化》で日本刀を強化。魔力耐性を付与した状態で、アルフレッドに再び攻撃を仕掛けるーーー、が、事は そう上手くは運ばなかった。
《覚醒者》が自分の能力を使う際、高い集中力を要するものだ。そして、集中に至る時間には 当然個人差があり、それは、その時間が短いほど差が顕著に出てくる。
つまりーーー、
「ーーーっ!?」
アルフレッドから素早く身を引き、斬り返すまでの刹那な時間の中で、加藤は集中して能力を発揮しなければならない訳だが、それは、他人より集中が苦手な加藤にとっては、不可能に近い芸当だった。
(ーーーだめだ・・・っ。上手く日本刀が強化されてねぇ・・・っ!!)
日本刀が強化できず 魔力耐性が付与されない以上、再びアルフレッドに斬り掛かった所で結果は同じだ。また、魔法で防がれるだけ。
そのため、攻撃準備が整うまで、加藤はアルフレッドの目の前で待たなければならない。と言っても、時間にして1秒〜2秒ほどだ。
だがしかしーーー、
「ーーー《暗黒武闘》」
アルフレッドが、自分の前で 1秒以上 動きを止めている獲物を むざむざ見逃すはずがない。
魔法で、自分を中心とする超重力を発生させたアルフレッド。
瞬間、3メートルほど離れた位置にいた加藤が、突如、アルフレッドへ引き寄せられていく。
「ーーーっ!?」
まるで、高所から地面に落下するような感覚に包まれた加藤は、瞬時に理解した。
「さっきの引力の技か!!」
加藤はアルフレッドへ引き寄せられまいと、咄嗟に足を踏ん張る。
だが当然、人の脚力のみで、“重力” という圧倒的な力に争い続ける事は難しい。
「ーーーっ!!」
瞬間、ガクンッ と身を揺らした加藤は、踏ん張りも虚しく、アルフレッドの元へと引き寄せられて行ってしまう。
「やべ・・・っ」
加藤の脳裏をよぎるのは、先ほどアルフレッドに喰らった超重力のパンチだ。
あの強力無比なパンチを再び喰らうとなると、まず無事ではいられない。大ダメージ必至。最悪、即死もありえる。
そうならないためにも、加藤は 頭をフル回転して活路を探る。
そして思いついたのはーーー、
(ーーー攻撃が避けられねぇなら、ダメージ覚悟でぶった斬ってやる!!)
アルフレッドの引き寄せる力を利用して 高速で接近。その勢いを殺さずに、刃をアルフレッドに突き立てて、鋭い突きの一閃を浴びせるーーー、という手だ。
カウンターというには お粗末すぎる特攻攻撃のような手・・・だが、アルフレッドの重力に囚われた今では、加藤に取れる手はこれしか無い。
と、覚悟を決めた矢先だ。
パァン!! という劈くような音が響き、アルフレッドへ引き寄せられていく加藤の真横を“何か” が高速で通り過ぎた。
「ーーー!?」
「ーーーなんだ!?」
加藤とアルフレッドの双方が、飛んできた物体に気を取られる。
その物体の正体はーーー、アゲハが放った弾丸だ。
無作為に放たれたように見える弾丸だが、次の瞬間、その軌道は、アルフレッドを中心に発生する超重力に引き寄せられていく。
そして、まるで隕石が地球に落ちるかのごとく、ギュイン と方向を転換した弾丸は、アルフレッドの身体へと突き進んできた。
「ーーーチッ」
次の瞬間、《暗黒武闘》の超重力を解いたアルフレッド。
それに合わせて、加藤が重力の波から解放される。
「ーーーぷはっ!!」
元の重力に戻った加藤は、ガクンッ と身を揺らした後ーーー、すぐさま地を蹴り、背後にあった瓦礫の影に身を隠す。
ちなみに、アゲハが放った弾丸は、アルフレッドの数センチ手前で弾け飛び、彼には破片も届かなかった。
「・・・助かったのか?」
まさに一瞬の出来事だったが、アゲハのおかげで、加藤は命を拾う事に成功した。




