第四章 -加藤 vs アルフレッド- 39 『勘違い』
土塊巨人を消し去り、魔力回復を果たしたアルフレッドは、万全の体制を整えて 地上に潜む加藤の元まで飛んでいく。
「ーーーいろいろと邪魔をくったが、ようやく、あの薄汚い劣等人種を殺せるな」
シュィィー・・・ッ と光をまとったアルフレッドが地上へ降り立つ。
だがしかしーーー、
「・・・身を隠したか」
アルフレッドが降り立った場所に、加藤の姿は無かった。すでに、この場を後にして身を隠したようだ。
「ムダな行為をしやがって。全くもってイラつく劣等人種よ」
だが 身を隠した所で、アルフレッドの魔力感知には加藤の魔力が しっかりと記憶されてある。
「ーーー魔力感知」
アルフレッドは、魔力感知の網を周囲に張り巡らす。次の瞬間、まるでソナーのように、アルフレッドを中心に周囲に散らばっている魔力を感知した。
だがしかしーーー、
(! 辺りに幾つもの魔力反応があるだと・・・?)
アルフレッドの魔力感知は、瓦礫の影に隠れている複数の魔力反応をキャッチした。その数は 6つだ。
(《複製魔力》か? いや、ダミーなら もっと数を増やしても良いものを・・・。それに、瓦礫に隠しているとはいえ、こう密集させてはダミーを撒く意味はない・・・)
魔法と戦闘の知識が豊富であるが故か、ただ純粋に身を隠しただけの加藤たちに 行動を制限されてしまったアルフレッド。
「・・・っ」
そんなアルフレッドの慎重な対応に、加藤たちは とりあえず救われていた。
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「・・・なんだ? どうしたんだ?」
建物の瓦礫の影に アゲハと共に身を隠した加藤は、攻撃をしてこないアルフレッドに眉を寄せる。
「ーーーもしかしてだけど・・・姿が見えない私たちを警戒してるのかも」
アゲハは《第六感》でアルフレッドの行動理由を予測するがーーー、
「そんな訳ねぇだろ。俺たちを警戒するなんて、アルフレッドらしくない」
加藤としては、アゲハの予想には賛同しかねる他ない。
「奴が その気になりゃ、この辺りをまとめて吹き飛ばせる筈だ。そうしない理由はなんだ・・・?」
「兵庫は、アルフレッドが止まっている理由が他にあると思うの?」
「・・・っ」
加藤は、アゲハの問いに無言を返すしか無かった。
「分かんないなら、サンタローの《受信と送信》でマサルに繋げてもらって聞いてみれば? マサル賢いし。多分、アルフレッドの行動の理由が分かると思うよ」
「・・・ぅ」
「それか、シャノンとかでもいいし」
「・・・っ」
淡々としたアゲハの言葉に、加藤は、一瞬ばかり言葉を詰まらせる。
「・・・んな、迷惑かけられるか。つぅか、アゲハたちは、俺が隙を作るから もう逃げろ。ここに居るのは危険すぎる・・・っ」
「ーーーは? なにそれ?」
「そもそも この戦いは、俺とアルフレッドの戦いだ。下手に手を出さない限り、お前らが奴に狙われる理由はねぇ。だから、さっさとみんなを連れて逃げろ。アルフレッドに目をつけられない内にな」
アゲハとしては、アルフレッドの顔に唾を吐きかけて、すでに殺害リストの上位に名を連ねているだろうから、加藤の この施しは無意味と言うしかない。
だからーーー、
「・・・何 言ってんの? 兵庫を置いて逃げれる訳ないじゃん」
この場から去り、アルフレッドから逃げる手は、アゲハにとって あまり意味はない。いずれ、先ほどの唾吐き行為でアルフレッドから命を狙われる身なのだから。
と言っても、アゲハが この場から逃げないのは、また別に理由がある。
「兵庫さ・・・アンタ、なんか勘違いしてない?」
アゲハは、いままで自分の心の内で蟠っていた、加藤へ対する“不満” をぶつけ始めた。
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「・・・ふむ」
アゲハの直感通り、アルフレッドは姿が見えない加藤たちを警戒していた。
と言っても、“姿が見えない” こと自体を警戒しているのではなく、“姿が隠しているのに、あからさまな魔力反応を隠していない” ことに警戒しているのだ。
言わば、捻くれ者が他人の親切を素直に受け取れないような感じだろうか。“何か裏があるのではないのか”、“騙されているのではないのか” と疑っている状態なのだ。
(・・・この周囲に感じる魔力反応。《複製魔力》ではなく、加藤 兵庫以外の魔人の魔力と考えれば合点がいく・・・だがしかし、もし《複製魔力》の場合だと、まず間違いなく罠が仕掛けられているだろう・・・)
アルフレッドは、魔力感知で 再び辺りに目を配る。
(ーーー《複製魔力》による罠・・・普通なら、私が気にするほどではないが・・・その罠を張ったのが、加藤 兵庫に《絶対的魔法防御装》を施した《獣人種》ならば・・・っ)
豊富すぎる知識によって 推測に推測を重ねてしまったアルフレッドは、やはり、その場から簡単には動けなくなった。
腕を組み、「ーーーふむぅ」と考え込むアルフレッド。
その時だーーー、
「ーーーん?」
突如、アルフレッドの背後の瓦礫を押し除けて、ボゴォンッ!! と土塊人形が姿を現した。
「先ほど《暗黒領域》に飛ばした土塊の小型版か。術者が新しく使役したのか」
アルフレッドの推察通り、彼の背後に姿を現した土塊人形は、四門が新しく寿命を《贈命》した個体だ。
土塊人形は、完全にアルフレッドの死角と隙を付くように姿を現した。そしてーーー、その硬い拳で、再度 アルフレッドを殴り飛ばしにかかる。




