第四章 -加藤 vs アルフレッド- 38 『アルフレッド、復活す』
ボゴンッ! ボプンッ! ボゴボゴォンッ!! という破裂音に似た歪な音を上げながら、アルフレッドの《暗黒領域》に吸い込まれていった四門の土塊巨人。
30メートルを超す巨人であるため、吸い込まれていくのに 多少なりとも時間は掛かったがーーー、
「ーーーふん」
一度、《暗黒領域》の重力に囚われれば最後。四門に 1年もの寿命を《贈命》された土塊巨人は、瞬く間に この世ならざる亜空間に姿を消してしまった。
「破壊できぬのなら、他所へ飛ばしてしまえば良いもの・・・大した脅威にはならなかったな」
30メートルの土塊巨人を跡形もなく消し去り、広くなった青空を揺蕩うアルフレッドは、スゥ と、指揮者が曲を先導するように軽やかに指で空を切る。
その瞬間、青空にぽっかり と空いていた真っ黒な大穴ーーー、《暗黒領域》が、まるで絵の具が水に溶けていくかのように、フワッと青空に解けて消えていく。
「ーーーだが、ま。これだけの質量を亜空間に飛ばすとなると・・・やはり、よほどの魔力を食うものだな」
最上級の空間魔法を行使し、思いの外、血中内の魔力を使ってしまったアルフレッドは、自らの震える手に目を落とした。
「ーーーチ。軽度だが、《魔力欠乏症》の症状が出ていやがる・・・これだから、魔力の解放は嫌なんだ」
《魔力欠乏症》ーーー血中内の魔力値が急激に減少すると起こり得る魔道士特有の症状。
手や足の末端部位の痺れなどの症状に初まり、中期では、四肢の感覚不全に吐き気と眩暈などが頻発する。
最後、末期症状に至ると、脳に深刻なダメージを受けると同時に、多臓器不全を起こし死に至る。
基本的には、末期症状に至るのは稀だが、血中魔力濃度が高い魔道士が初期や中期の症状を飛び越えて、末期に至り突然死する事例も報告されている。
「ーーーこのまま無視して戦い続けると、最悪 自滅する危険もあるな・・・加藤 兵庫と戦う前に回復しておくかーーー、《次元窓》」
次の瞬間、ブゥンッ と軽やかな音が鳴り、アルフレッドの真横の空間に横向きの亀裂が走った。かと思えば、その亀裂は、瞬く間に小さな窓ほどに広がる。
アルフレッドは、空間に開いた その窓に手を入れて、中から紫色の液体が入った瓶を取り出した。そのまま、キュッ、、ポンッ と軽やかな音を立てて瓶の栓を抜くと、中の紫色の液体を一気に飲み干す。
刺激ぐ強い飲み物なのか、液体を飲み干したアルフレッドの目頭は涙で潤っている。
「ーーープハッ」
刺激物が通った喉を労るように、新鮮な空気を肺に送り込んだアルフレッド。
その瞬間だ。
瞬間の最大値が 4億を超す アルフレッドの常人離れした血中魔力濃度が、一瞬でMAXまで回復した。
「・・・ふっ、、ふはは・・・やはり素晴らしいな。《英雄級》の魔道士の魔力も一瞬で全回復させる《最上級魔力回復薬》の効果は・・・っ」
次の瞬間、アルフレッドの身体の表面に稲妻のごとし紫色の電流が迸る。
バチィ、バチバチィ・・・ッ と暴力的に迸る紫の稲妻は、アルフレッドの周囲の空気を焦がし、空となった瓶を粉々に破壊する。
「これで元通りだ・・・っ」
現状に満足したように、犬歯を剥き出しにして暴力的な笑みを顔に浮かべたアルフレッドは、地上のある一点に目を向ける。
そう、先ほど加藤の姿を見た場所だ。
土塊巨人を消し去った《暗黒領域》の巻き添えを嫌ったのか、先ほど見た場所に加藤の姿は既に無かった。だが、短期間で そう遠くに逃げれはしない筈だ。
必ず、近くに加藤がいる事を確信したアルフレッドはーーー、
「ーーー《流星闘技》」
シュィィー・・・ッ という軽やかな音と共に、身体から光を発して、夜空を駆る流れ星のごとく高速で地上に突っ込んでいった。
今度こそ、加藤 兵庫を確実に殺すために・・・。




