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第四章 -加藤 vs アルフレッド- 35 『流れ込むダメージ』


「ーーーんジャ、いっちょやるカ! オメーら気合い入れろよナ!」


 遠くで、アルフレッドと 四門(しもん)が創り出した30メートル超ある土塊巨人(ゴーレム)が戦っている音を聞きながら、シャノンは加藤を復活させるため、《致命傷回避(クリティカル・シフト)》の魔法を唱えようとしていたーーー、が、直前で ぴたり と手を止めてしまう。


「・・・ト、一応、最後に確認しておくガ、オイラが今から唱える《致命傷回避(クリティカル・シフト)》つぅのハ、回復魔法じゃなク、ダメージを他所(よそ)へ移す魔法ダ。本来なラ、同じ人物の身体の中でしか移せないダメージヲ、オイラが調整してカトウからオイラたち6人に均等に分けるんだガ・・・」

「・・・? なんだい、歯切れが悪いね?」


 語尾に行くにつれて口ごもるシャノンに、五島(ごとう)が突っかかる。


「・・・いヤ、意思を確認する前に言っておくべきだったナ、ト・・・。一度、移したダメージは何度も移し替えられネェ。それでモ、お前ら やるカ?」


 つまり、一度、加藤のダメージを肩代わりすれば、アルフレッドとの戦いが終わった後、他の人物に移したり、加藤にダメージを返したりは出来ないのだ。

 請け負ったダメージは、そのまま、自分が責任をもって回復していかなければ ならない。

 最後の最後、シャノンが試すように言った言葉に、他の5人・・・島田、アゲハ、斑鳩(いかるが)、五島、志摩(しま) (うみ)は、一瞬 息を呑みこんだ。

 だがしかしーーー、


「今更だな。俺は加藤のダメージを受け取るよ」

「あぁ・・・ここで加藤に復活してもらえなきゃ、アルフレッドに対抗する(すべ)はないしな」

「私も、意思は変わらないかな。兵庫(ひょうご)が苦しんでるなら 助けてあげたいし」

「・・・たくっ、先に言いなよ。まぁ、私も意思は変わらないけどね。魔道士なんかと戦うよりかは、だいぶマシだろうしね」

「せやんなー。私もルアンちゃんと同じ意見や」


 5人の意思は変わらないようだ。

 みんな、加藤のダメージを受け入れる覚悟ができていた。

 こうなれば、遠慮は失礼にあたる。

 シャノンも、他の5人同様 覚悟を決めた。


「そうカ・・・分かっタ。それなラ、みんなオイラの身体に触れてくレ。オイラを通しテ、みんなに加藤のダメージを流し込ム」


 指示を受けた5人は、それぞれが無言で頷き、言われた通りにシャノンの身体に触れる。

 その際、島田が、しれっとシャノンの胸あたりに手を触れそうになって、アゲハに蹴り止められたりもしたが、概ね、すぐにダメージ移動の準備は完了した。


「よシ・・・それなら行くゾ」


 そう言って、加藤に手を触れたシャノンはーーー、


「ーーー《致命傷回避(クリティカル・シフト)》!!」


 魔法の文言(マントラ)を唱えた。

 その瞬間、シャノンを通して 各5人に、得も言われぬ不快な感覚が流れ込んだ。

 まるで、ドロドロとした濁った血液を輸血されているかのような感覚・・・絶対に身体に悪いと確信できる感覚だ。


「なん・・・だぁ、これ!?」

「ぅ・・・気持ち悪っ」

「吐きそう・・・」

「チッ・・・クラクラするね」

「あばばばばば」


 時間にして10数秒ほどだろうか。

 シャノンが加藤の身体に蓄積したダメージや疲労を吸い上げて、各6人に均等に分け与える。

 そしてーーー・・・。




***************




『ーーー・・・ククッ。(あるじ)様は、いつも手酷くやられるのぅ』


 真っ白な精神世界で、加藤は馴染みがある声を聞いた。耳元で囁かれるような、身体の中に響いてくるような・・・そんな声を。


「うるせーな。見てたんなら助けろよ」


 もう何度も精神世界で邂逅(かいこう)を果たしている その声に、加藤は驚かなくなってしまっていた。

 なれた様子で、悪態をついて言葉を返す。


『ククッ・・・前も言うたじゃろて。(わらわ)から主様へ手を貸す事は もうせんよ・・・いつまでも妾に おんぶに抱っこでは主様の格好がつかんじゃろ?』

「おんぶに抱っこ って・・・お前は俺の一部なんだろ? だったら、いちいち俺が頼む前に動けよ」

『主様が妾の“力”を使うには、それなりの手順がいるのじゃて・・・真名()を呼び、妾を屈服させる手順がのぅ・・・』

「名を呼ぶ・・・」

『ト、話はここまでじゃ。外から迎えが来たようじゃのぅ』

「ーーー!」


 次の瞬間、真っ白な空間に亀裂が入った。

 そして、薄氷が割れるかのように、瞬く間に空間 全土にヒビが伝播する。


『ーーー先ほども言ったように“真名()”を呼ぶのじゃ、主様よ。そうすれば、あの只人(ただびと)の魔道士に対抗できる力をくれてやる』

「ーーーおい、、ちょっと待てよ!」

『いつまでも()()()()()に囚われておらず、妾の力を使えよなーーー、じゃて』


 それだけ言うと、声はぴたり と止んでしまった。

 そして、加藤は精神世界から現実へと引き戻されていく。

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