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第四章 -加藤 vs アルフレッド- 33 『復活の手立て』


「ーーーハッ。バルーン人形と同じだな。魔力という空気で膨れ上がっただけのハリボテにすぎん」


 アルフレッドと拳を交えた瞬間、土塊巨人(ゴーレム)の巨大な腕が粉々に砕け散った。

 ドドドドドドドドドドドドドドドォォォー・・・ッン!! と地響きを上げながら、腕を形成していた土塊や瓦礫が地に落ちていく。

 だが次の瞬間ーーー、


「ーーー!?」


 突如、土塊巨人(ゴーレム)の砕けた腕の周囲に、旋風のような歪な風が吹き荒れた。その風は、砕けて地に落ちていった土塊や瓦礫を掬い上げてーーー、瞬く間に、土塊巨人(ゴーレム)の腕を再生させる。


「再生しただと?」


 ものの数秒で、破壊された腕を元通りに直した土塊巨人(ゴーレム)は、“先ほどの借りを変えさん” と言わんばかりに、その巨大なーーー、今度は両の腕をアルフレッドに向かって振り上げる。

 そして、ゴォォッ!! と暴風を纏いながら、再びアルフレッドへ その両拳を振り下ろした。その速度は、30メートルの巨体を持つ巨人に付いている腕とは思えないほど早い。


「ーーーチ。《流星(スターダス)闘技(ト・ファイト)》」


 刹那、シュイィィィィン!! という軽やかな音を上げて、身体から光を発したアルフレッド。

 次の瞬間、まるで夜空を駆る流れ星のように、高速で飛び立ち、迫り来る土塊巨人(ゴーレム)の両拳を縫うように躱す。


「ーーー再生したというのに、内在している魔力量も大して減ってはいない・・・これほどまで強力な《魂付き(マンマーラ)》の術があるとは・・・」


 光の筋となって 土塊巨人(ゴーレム)の周囲を飛び回るアルフレッド・・・そんな彼の顔は、ひどく歪んでいる。

 苦しんでいる訳ではない。喜んでいるのだ。

 口元を吊り上げて、暴力的な犬歯を剥き出しにしたアルフレッドは、内に秘める強力な魔力を外界に溢れ出した。


「・・・くっ、クフフ・・・ッ。面白い・・・加藤(かとう) 兵庫(ひょうご)を殺すために こんな辺境の島国に来たのだが・・・よもや、これほどの玩具に出会えるとは・・・」


 次の瞬間、ブゥゥン・・・ッ とアルフレッドの周囲に光の球体がいくつか出現した。


「ーーー加藤 兵庫が見つかるまでの暇つぶしだ。遊んでやる」


 アルフレッドは、土塊巨人(ゴーレム)を惑わすように その周囲を高速で飛び回る。その状態でーーー、


「ーーー《七星の刃(シャルルンガ)》」


 光の刃を7つ身体に纏わせると、その強力な攻撃魔法を 土塊巨人(ゴーレム)の全体に浴びせていく。

 ボゴゴゴゴォォー・・・ッン という魔法の爆撃に晒された土塊巨人(ゴーレム)。だがーーー、


「ふん。やはり、すぐに再生するか」


 多少 表面を削り取っただけでは、四門が使役する土塊巨人(ゴーレム)にはノーダメージだ。

 ゴォ!! と旋風が吹き荒れて、魔法によって破壊された箇所が瞬く間に再生していく。


「ちまちま削り取るだけでは (らち)があかぬか・・・む!」


 刹那、ゴォ と暴風を伴いながら、土塊巨人のパンチがアルフレッドへ迫ってきた。

 その速度は、やはり30メートルの巨体には似合わず高速だ。おそらく、一般人の反射神経では躱せない速度だろう。

 例えるなら、新幹線ほどの速度・・・と表したら分かりやすいか。

 だがしかし、流れ星のごとく高速で空を駆るアルフレッドにとってはスローすぎる速度だが・・・。


「ーーーおっと」


 アルフレッドは、軽い感じに 横へ飛び退き、土塊巨人(ゴーレム)のパンチを躱す。


「私の攻撃は奴には効かんし、奴の攻撃は私に届かん・・・このまま行くと平行線になるな」


 すらり と長い指を顎に這わせて、「ふむ」と土塊巨人(ゴーレム)の攻略法を考え込むアルフレッド。

 だが次の瞬間ーーー、ビュッ と空気に穴が開くような音が響いて、“何か” がアルフレッドの脇腹を抉り抜いた。


「ーーーッ!!?」


 鮮血が空に舞ったと同時に、アルフレッドは脇腹に鋭い痛みを感じた。


「ーーーこれは?」


 それもそのはずだ。

 アルフレッドの脇腹には、大きな風穴が空いていたのだから。その大きさは、拳大ほどだろうか。常人なら 痛みで失神して、そのまま死に絶えるほどのダメージだ。

 だが、当のアルフレッドに焦った様子はない。

 調べるように、脇腹に空いた風穴に手を触れたアルフレッドは「ふむ」と呟く。


「ーーー奴め・・・身体を形作る瓦礫や石を礫として放ったな。器用に魔力耐性まで付与しおって・・・初見とは言え、まんまと喰らってしまったわ」


 次の瞬間、アルフレッドは中級回復魔法である《大回復(ルナ・ソール)》を風通しが良くなった腹部に掛ける。

 ふぁああ〜っ という軽やかな効果音が鳴り響き、アルフレッドの腹部が翠色の光に包まれる。瞬間、拳大ほどの風穴が空いていた脇腹が、綺麗に治癒した。


「ーーーくふっ・・・面白いではないかっ」


 瞬く間に 傷を治癒したアルフレッドは、さらに凶悪な笑みを顔に貼り付けて、目の前の土塊巨人を睨みつけた。




***************




「ーーーのワーッ!? カトウ!?」


 四門(しもん)に促されて、降りそそぐ鉄の矢の中から脱出したシャノン、島田、アゲハの3人は、後方に控えていた斑鳩(いかるが)たちと合流を果たすーーー、と同時に、死にかけの加藤とも対面を果たした。


「斑鳩。やばいだろ・・・この傷。加藤は生きてるのか?」

「生きてはいる・・・っ。《受信(キャッチ)と送信(アンドリリース)》で、加藤の心の声が俺には聞こえてるからな。だが、それも・・・徐々に小さくなっていやがる・・・っ」

「ちょ、、シャノン! 早く兵庫(ひょうご)に《回復(ソール)》を掛けてあげて!」

「ォ、、オォ!」


 アゲハに言われて、横たわる加藤の隣に座ったシャノン。


「・・・ッ」


 医学の詳しい知識がないシャノンが見ても、今の加藤は重症であることが よく分かった。

 身体の彼方此方(あちらこちら)に内出血の跡が見て取れる。小さな切り傷に至っては、数えきれないほど身体に刻み込まれていた。

 命に直結するような大きな傷がない事は幸いだが、どうやら加藤は酷く衰弱しているように見える。ぐったりとして 呼吸も浅く、ぴくりとも身体を動かさないのだ。


「やべぇナ・・・《絶対的魔(アブソリュート)法防御装(・マジカルガード)》を 始めとする5つの付与魔法が全て破壊されてやがル。こリャ、かなりの反動がカトウの身に降りかかったナ」


 とりあえず、シャノンは初級回復魔法の《回復(ソール)》を加藤に掛けてやるがーーー、


「ーーーチッ」


 今の加藤には焼石に水もいい所だった。


「どうだ シャノン? 加藤は・・・助かりそうか?」


 斑鳩が縋るような目をシャノンに向ける。

 だがしかしーーー、


「だめダ」


 シャノンが返したのは非情な一言だ。


「ーーーっ!」

「おい、シャノン・・・どういう事だよ?」

「ぇ、、ぇえ?? 兵庫、助からないの!?」

「オイラの《回復(ソール)》ジャ・・・今のカトウを回復させるのは不可能ダ。ダメージが大きすぎテ、焼石に水もいい所だからナ」

「それじゃ・・・兵庫は・・・」


 世界の終わりのような顔を見せるアゲハ。他の2人・・・島田と斑鳩も気丈に振る舞っているが、下唇をはんで 眉を寄せている。

 だがしかしーーー、


「落ち着けヨ。回復は不可能って言っただけダ」

「ぇ・・・? どういう事?」


 シャノンには、加藤を復活させる手が まだ残っているようだ。


「ほぼ反則みたいな技だガ・・・死んでねぇなラ、カトウを復活させる手ガ、あと1つだけあル」

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