第四章 -加藤 vs アルフレッド- 32 『山のごとし一撃』
巨大な土塊の手の影に隠れる事で、豪雨のごとく降りしきっていた鉄の矢に射抜かれずに済んだ島田、アゲハ、シャノンの 3人。
3人は数瞬の間、いったい なぜ助かったのか理解できないでいたのだがーーー、
「ニャー・・・シマダ、分からねぇのカ? こいつハ、どっからどう見てもシモンの《贈命》の能力ダ」
「《贈命》の能力!? これほど巨大な土の塊が四門の能力だってのか!?」
3人の身を守るように翳された巨大な土塊の手が、四門の能力で創り出された土塊人形の一部である事に気がついたシャノンと島田。
《贈命》ーーー《覚醒者》四門 要の能力で、自分の寿命を10秒単位で無機物に付与できる。四門から命を与えられた無機物は、与えられた命の時間が長ければ長いほど強力になる。
目安としては、寿命5分で野生のクマを殴り殺せるくらいの強さ。
「カナメの能力・・・って、こんな大きな物まで操れるの!?」
島田の言葉を聞いたアゲハは、つい疑うような眼差しを 頭上に現れた土塊の手に向けてしまう。
それもそのはずだ。
彼らの頭上に現れた巨大な手は、指先から手首まで 優に5メートルはある。四門が常日頃から操っている土塊人形の大きさは約2メートルほど。
つまり、手だけでも倍以上あるという訳だ。
「ぅ、うん・・・ぁ、与える寿命が、、多ければ・・・これくらいの大きさも操れるよ・・・」
「ーーーっ!?」
突如、聞こえてきた訥々とした声に 振り向いた3人。
すると、3人を翳している巨人な手に、いつの間にか腕が伸びており、その腕の影を通るように四門が こちらに向かって歩いてきた。
「ーーー四門!」
「ぶ、無事で良かった・・・し、島田くん。でも、まだ あんまり動かないで。ぼ、僕が使役している土塊巨人の影から、で 出ると・・・鉄の矢を喰らっちゃう・・・」
四門の言う通り、巨大な手の外では、まだ豪雨のように鉄の矢が降りしきっている。一瞬でも手の傘の外に出ると、ハリネズミのような死に体を晒すハメになるだろう。
「つぅカ、助かったんだけどヨ・・・なんでシモンがここに居るんダ? お前、街の外に避難したんジャ・・・?」
「ぃ 色々と聞きたい事があるかもですけど、、ぃ今は時間がありません! しゃ、シャノンさん・・・急いで ここを通って、、鉄の矢の範囲外まで行ってください!!」
そう言った四門は、今 自分が歩いてきた腕の影の道を指し示す。
そう、島田たちを鉄の矢から守っている巨人な土塊の手から伸びた腕は、そのままアルフレッドの《衛星流雨》の範囲外まで伸びているのだ。
この腕の影に隠れて進んで行けば、鉄の矢に晒されず、安全に後退できるだろう。
「ァ、アァ・・・分かっタ」
「し、島田くんとアゲハさんも・・・っ」
「おぉ、了解」
「うん・・・」
四門に促されて、尻餅をついていた腰を上げた3人。そのまま、巨大な土塊の手から伸びた腕の影を通って《衛星流雨》の範囲外から脱出しようとするーーーが・・・。
「ちょち待テ。シモンはどうする気ダ?」
「ぼ僕は、こ、ここに残って、奴・・・アルフレッドを足止めします」
「ーーーんナ!? だったらオイラも残るゼ。子供だけに危ない役 押し付けテ、逃げられるカ!」
「ぃ いえ・・・シャノンさんは後退してください。あ、貴方を必要としている人が、、背後に居るんです」
「ーーー!?」
***************
時間は、アルフレッドが土塊巨人に殴り飛ばされた後に戻る。
「ククッ・・・たかだか土塊に、どれほどの魔力を詰め込んでおるのやら」
突如として、目の前に現れた土塊巨人を前に、アルフレッドは胸の内から溢れるように笑みを溢した。
アルフレッドの目の前に現れた土塊巨人・・・その大きさは優に30メートルを越えている。まさに、大怪獣と言っても差し支えがない巨大さだ。
「ーーーふん」
アルフレッドは、魔力感知を通じて 土塊巨人を観察する。
瞬間、土塊巨人の内部に、ドクドクと脈打つ赤黒い魔力の渦が見えた。その山のごとし見た目も相まって、まるで噴火直前の火口を目にしているかのような感覚にアルフレッドは捉われる。
「・・・加藤 兵庫とは魔力の質が違う・・・やはり、別の魔人による攻撃か・・・しかし、この詰め込まれた魔力の量。《魔導騎兵・改》10機ぶんはあるのではないか? まったく・・・バカげた奴も居たものだ」
「ククッ」と笑みを噛み殺したアルフレッド。
その瞬間、四門の土塊巨人が動いた。
「ーーー!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ と地響きを上げながら、巨大な拳を振り上げた土塊巨人。アルフレッドの位置から見たら、その拳は雲に届くのではないか、と思えるほどだ。
「来るか。単調な攻撃だがーーー、」
刹那、アルフレッドへ向かって、巨大な拳が振り下ろされた。
ゴォ!! と、拳がまとう衝撃波だけでも 人が死ぬほどの破壊力がある一撃だ。アルフレッドといえど、真芯で喰らえば大ダメージ必至な一撃だろう。
だがしかし、いくら強力とはいえ、劣等人種と見下す相手からの 堂々たる一撃を、アルフレッドが躱す訳がない。
真っ向から受けてーーー、その上で破るつもりなのだ。
「ーーー、威力は充分。躱す理由がないわ」
ブォン・・・ッ という重苦しい音がアルフレッドの右腕から鳴り響いた。
「ーーー《暗黒武闘》」
瞬間、空から降ってくる巨大な拳めがけて、アルフレッドは《暗黒武闘》を まとった拳を振るう。
2者の拳が交わった瞬間、土塊巨人の腕に、上向きの強烈な重力が掛かった。
通常とは逆の重力と、自らが奮った拳の威力が、土塊巨人の腕の中で混ざり合い、一瞬で圧倒的な破壊力が生まれた。
そして次の瞬間ーーー、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォン・・・ッ という地響きを鳴らして、土塊で出来た巨大な片腕が粉々に砕け散った。




