第四章 -加藤 vs アルフレッド- 31 『1年の寿命』
時は さらに遡り・・・シャノン、島田、アゲハの3人がアルフレッドの《衛星流雨》の鉄の矢に晒されている頃・・・。
「おいおい・・・なんだアレ!?」
四門、五島、志摩 海の加勢を得た斑鳩は、土塊人形に運ばれながら、遠くに見えるゲリラ豪雨のような光景に息を呑み込んだ。
「雨・・・じゃねぇよな? 何が降ってんだ!?」
「・・・針。いや、千枚通しみたいな鉄の矢だね」
「ーーー! 鉄の矢!?」
五島の言葉を聞いて、再びゲリラ豪雨のような光景に目を向けた斑鳩。
“ゲリラ豪雨” という表現は言い得て妙だろう。
斑鳩たちが向かう先に、雨粒のような物が視界が霞むほど降りしきっているのだ。あの降りしきっている物すべてが、五島が言う“鉄の矢” というのは、背筋が凍る情報だ。
「いや・・・よぉ見えるね、ルアンちゃん。現代っ子なのに、目ぇエェとか人類上位数%の特異体質やね」
「私の能力《必中》の副作用だよ。物を当てる対象をよく見るために、両目の視力が5.0になってんだ。世紀末の世に目覚める前は、普通にメガネ掛けてたよ」
「うわー、どういう理屈?」
「《覚醒者》の能力に理屈もクソもねぇだろ」
「まぁ、確かに」
「ーーーちょ、、ちょっと待って!」
「ーーー!?」
次の瞬間、集団の先頭を行く四門が足を止める。それに伴い、彼が使役する土塊人形も動きを止めて、上に乗っていた斑鳩も、ガクンッ と身を揺らした。
それは、意識なく土塊人形に運ばれていた加藤も同様だ。「・・・ぅ」と小さく呻きを上げて、身体を前後に揺らした。
「・・・ッ。四門、どうしたんだ!? 急に止まるなよ・・・」
「す、すみません・・・斑鳩さん」
「いや、止まるだろ斑鳩。アンタ、あの鉄の雨の中に突っ込んでくつもり?」
「そやね・・・このまま突っ込んでしもたら、雨や のぉて血で びしゃびしゃ になってしまうよ」
「・・・ぅ。だが、あそこにシャノンたちが居るんだろ? だったら早く行かねぇと・・・っ」
焦りに駆られた斑鳩は、ぐぐぅ と拳を握り込む。
「落ち着きなよ、斑鳩。アンタらしくもない。アンタ、島田に次いで戦力分析や作戦立案が上手いって、佐伯さんに言われてたでしょ」
「ぬぅ・・・っ」
「1回や2回、敵に殺されかけただけで 自分の強み 見失ってんじゃないわよ」
「・・・っ」
五島の辛辣な言葉に、歯を食いしばるしか出来ない斑鳩。
だが、確かに五島の言う通り、斑鳩は アルフレッドの圧倒的な実力を前に、冷静さを欠いていたのは事実だ。
理性的に頭が働かなくなった分、感情的な行動で穴を埋めようとしたのだろう。
「・・・悪かった。少し、冷静じゃなかったかも知れない・・・」
どうやら、恐怖と焦りでのぼせた頭に、五島の辛辣な言葉は冷や水となったようだ。幾分か落ち着きを取り戻した斑鳩は、努めて冷静に 今の状況を分析する。
「あの攻撃は アルフレッドのモノだろうから・・・シャノンたちが アソコに居るのは、まず間違いない」
「もう死んでるかもだけどな」
「ちょ、、ルアンちゃん!?」
「いや、それは無いな。アレは魔法攻撃だ。シャノンには《魔法障壁》がある。多少なりとも防げるはずだ。それに、すでに死んでいるなら、アルフレッドは、あの鉄の雨を止ませるはずだしな」
「なるほど!」
「街を こんなにした奴だよ? それに魔道士は私ら地球人に敵対意識を持っている。オーバーキルしてるって事もあるんじゃない?」
「! 確かに」
「アルフレッドの目的は、あくまで加藤だ。加藤を完全に殺したと分かるまでは、他の連中に意識は持っていかないだろ。邪魔な奴をサクッと殺せたら、姿を暗ました加藤を追うはずだ」
「ふぅん・・・なるほどね」
「おっしゃる通り!」
「海、うるせーぞ」
「あた!」
ゴチンッ と五島からゲンコツを食らった海。
「まぁ確かに、シャノンなら アレくらいの攻撃で死ぬ事はないね。だけど、どうする? シャノンが生きている内に アイツの元まで行くには、私らは あの鉄の雨に突っ込まなきゃだよ?」
「・・・っ。それは・・・」
五島に問われた斑鳩は 黙り込んでしまう。
どうやら斑鳩の頭では、雨のように降りしきる鉄の矢を掻い潜る策は思いつかないようだ。
だが その時だーーー、
「・・・す、すみません。じゅ、準備が整いました」
蟠る空気を切り裂くように、四門の訥々した声が聞こえてきた。
「準備?」
「ぅ、うん・・・ぎ、《贈命》で使役する対象が、、大きすぎて・・・ちょっと時間が掛かったんだ」
「なっ!? 四門、アンタまさか、また無茶して寿命を与えたの!?」
「こ、こんな非常時だからね・・・み、みんなを死なせない為にも、、ぼ僕も、少しくらいなら命を削るよ・・・」
次の瞬間、ゴゴゴゴゴゴゴゴッ と地面が揺れて、巨大な腕が瓦礫を押し除けて姿を現した。その大きさ、優に5メートルはあるだろうか。
四門が常日頃から戦闘に用いている土塊人形とは比べ物にならないほど巨大だ。
「ちょ、、手って事は、これ土塊人形の一部だろ!? 四門・・・いったい どれだけの寿命を与えたんだい!?」
五島の問いに四門は、ごきゅ と生つばを飲み込んだ。
これは、言いづらい事がある時に見せる四門特有のクセだ。
つまり、今から言う事は、四門にとって言いづらい事なのだ。まず間違いなく、五島が聞いたら怒ると思っているから。
それでも、意を決して四門は口を開く。
「ーーーい、1年」
「ーーーはぁ!? アンタ、1年も寿命を与えたの!?」
「ま、街を脅かす魔道士を、、ぁ相手にしてあるんだから・・・こ、これぐらいするよ!!」
「し、四門・・・」
刹那、地面から生えてきた巨大な手が、振りしきる鉄の雨の中に伸びていく。
「こ、これでシャノンさんたちを助けて・・・加藤くんが回復するまで、、魔道士を食い止める!!」




