第四章 -加藤 vs アルフレッド- 30 『九死に一生』
天空から雨のごとく鉄の矢が降りそそぐ魔法《衛星流雨》によって、シャノンの《魔法障壁》を破壊された。その瞬間、無情な鉄の矢が、まさに豪雨のように島田、アゲハ、シャノンの身に降りそそぐ。
「ーーーふん」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!! と、存分に降りそそいだ鉄の矢たち。
豪雨の時のような白煙が立ち昇り、島田たちの死に体はアルフレッドからは よく見えないが、今頃はハリネズミのように身体から鉄の矢を生やして絶命しているに違いない。
その後、10数秒に渡り《衛星流雨》は続き、そしてーーー、
「ーーー死んだな」
アルフレッドが、スゥと手で空を切ると、夏のゲリラ豪雨のように降りしきっていた鉄の矢が、ぴたりっ と止まった。
《衛星流雨》を受けた地面は、この世のモノとは思えないほど荒れ果てている。表現する適切な言葉が見つからないほどにだ・・・。
あえて・・・あえて無理やり例えるならば、地獄の針山が適切だろうか。
積み重なる瓦礫の山に、何百万本もの鉄の矢が突き刺さり、一見すると地獄の針山のように見える。
まさに、地獄の風景だ。
この空間で生きている者など、アルフレッド以外は皆無だろう。
だがしかしーーー、
「む!?」
アルフレッドの魔力感知は、歪な光景を目にした。
鉄の矢が覆い尽くす地面の真下・・・否、その地面自体に巨大な魔力の塊が見えたのだ。
「何だ、これは・・・」
アルフレッドでも理解できない、地面を這うように広がる魔力。
次の瞬間、ボゴォ!! と鉄の矢だらけの地面が隆起する。
「ーーーッ!?」
ゴゴゴゴゴゴ・・・ッ と地鳴りをあげて起き上がった地面。
ふと、アルフレッドは地面が人の形を形成しているかのように見えた。ーーーもしかしたら、起き上がった地面の一角に拳のような塊が見て取れたから そう感じたのかも知れない。
「これは・・・!?」
刹那、振り上げられた鉄の矢だらけの巨大な拳がーーー、
「ーーーぐぅ!!?」
ドゴォ!! とアルフレッドを殴り飛ばした。
そのままアルフレッドは、ゴツゴツとした瓦礫の上を、2度3度 転がり跳ねたのちーーー、
「ぐぅ、、がっ・・・グガァ!!」
横たわった建物の壁に背中から激突する。
瞬間、ボゴォ! とコンクリートの硬い壁が大きく窪み、巨大なクレーターのような跡が出来上がった。
だがそれでも、アルフレッドには大したダメージはない。
「・・・《防御装》が発動しない・・・っ。《自動回復》が無ければ危なかった・・・」
もちろん、まったくのダメージを受けなかった訳ではない。ダメージを受けた瞬間、一瞬の内に自己回復させたのだ。
「ーーー加藤 兵庫のように、魔法耐性を持った者の攻撃か・・・面倒だな」
ガララ・・・ッ と、壁に出来上がったクレーターから身を起こしたアルフレッドは、今しがた自分を殴りつけた相手を睨みつける。
「能力付与系・・・《人形操作》や《魂付き》の類の魔法だな。だが・・・」
瓦礫の地面に足をつけたアルフレッドは、空を見上げるほど 視線を上にあげる。
そうしなければ、姿を現した敵の全体像を拝めないからだ。
「ーーーこれほど大規模なモノは初めて見る」
アルフレッドの目の前に現れたのは、土塊と瓦礫を身に纏った巨人だ。その大きさは、優に30メートルを越えている。まさに、大怪獣と言っても差し支えがない巨大さだ。
「ん!」
不意に、土塊の巨人が拳を振り上げた。
たったそれだけの動作で、ゴゴゴゴッ と地鳴りが響き渡る。
「幼少の頃より、この程度の大きさのモンスターとは幾度となく相対したが・・・コイツはーーー、」
ブンッ と、魔力感知を発動して、自分を見下ろす土塊巨人を見たアルフレッド。
その瞬間、巨人の胸あたりに膨大な魔力を感知する。その様は、まるで噴火する数秒前の火口ように、ぐつぐつ と煮えたぎるエネルギーを内包しているかのようだった。
「ーーー内に どれだけの魔力を内包しておるか・・・っ。これほど高魔力を宿しておる巨人を相手にしたことなど、このアルフレッドですらーーーッ」
刹那、小山のごとし巨大な拳が、アルフレッドの頭上へ 真っ直ぐに落ちてきた。
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時は、数十秒前に遡る・・・。
「た、、助かったの・・・?」
鉄の矢に《魔法障壁》を破壊された瞬間、16年にも渡る人生を追体験したアゲハだが・・・どうやら彼女の人生も、後ちょっとだけ続くようだ。
「どうやら、そうみたいだな・・・」
「アァ・・・間一髪だったがナ」
寿命が伸びたのは、アゲハの隣にいた島田とシャノンも同様だ。
2人は、冷や汗を額に滲ませながら、彼らの命を救った存在を見上げる。
「・・・だけど、これはいったい!?」
島田たちの頭上に展開されているのは、土塊で出来た巨大な手だ。ちょうど、掌で覆うように、降りそそぐ鉄の矢から 島田たちを守っている。
「ニャー・・・シマダ、分からねぇのカ? こいつは どっからどう見てモ、シモンの《贈命》の能力だろうガ・・・」




