第四章 -加藤 vs アルフレッド- 29 『鉄の雨』
「・・・っ」
水蒸気爆発によって舞い散った水蒸気が 島田たち3人の周囲を包み込む。
「いったい何が・・・!?」
「ちょ、、何かしたの!? シャノン!」
突然のアルフレッドとの遭遇。シャノンの連続の魔法発動。そして、この爆発・・・島田とアゲハが混乱するのもムリはない。
「ーーー説明は後ダ。2人とモ、今は こっちへ来イ」
だがしかし、シャノンは 説明を後回しにして、混乱する2人の手を引いた。
「ちょ・・・ッ」
「何なんだ!?」
「いいかラ・・・今は身を隠すゾ!」
シャノンに手を引かれて、近場にあった大きな瓦礫の影に身を潜めた3人。
すると徐々に、辺りを取り巻く爆発の煙が晴れていく。スゥー・・・と周囲の景色が明瞭になって行く中、先ほど起こった事を、シャノンは淡々と説明する。
「オイラは さっキ、魔法を組み合わせて水蒸気爆発を引き起こしたんダ」
「水蒸気爆発・・・って、水が急速に気化して巻き起こる爆発の事か?」
「アァ。目の前に現れたアルフレッドを《水牢》・・・水の檻で閉じ込めテ、そこに高温の《火球》を投げ込んダ。結果、アルフレッドを捕らえていた《水牢》の水が急速に沸騰しテ、大爆発が巻き起こったつぅ訳ダ」
「すご・・・あの一瞬で、そこまで やってのけたの?」
「まぁナ。反射神経には自信がある方だかラ、これくらいは軽いヨ」
アゲハの賞賛を素直に受け取るシャノン。だが、シャノンの顔には、焦りと恐怖の色が浮かんでいた。
「・・・なぁ シャノン。なら、なんで隠れるんだ? 今の話を聞いてる限り、アルフレッドは爆発で吹き飛んだと思うんだが・・・」
島田の疑問も もっともだ。
身体を包み込んでいた水が、そのまま水蒸気爆発を巻き起こしたのなら、中にいたアルフレッド・・・人間など五体がバラバラになってもおかしくはないだろう。
だがしかしーーー。
「・・・バカ言うなよ、シマダ」
「ーーーは?」
「今やったオイラの一連の動きガ、《達人級》の魔導士にとって攻撃になる訳ねぇだロ」
「ぇ、、いや・・・あの爆発を近距離で受けるんだぞ? 攻撃で無けりゃ なんなんだよ!?」
「ーーー煙幕だヨ。オイラたちが身を隠す時間を稼ぐためニ、一瞬、アルフレッドの視界を防いだに過ぎなイ」
「はぁ?」
次の瞬間、シャノンの鋭敏な耳と魔力感知が、嫌な感覚を捉えた。まるで 空を突き抜けるような魔力・・・それが、瓦礫の向こう側から感じられたのだ。
アゲハの《第六感》が発動したのも、その刹那だ。
「ーーー上ぇ!! ヤバいのが来る!!」
「ーーーッ!!」
「上!?」
アゲハの声に釣られて、空を見上げるシャノンと島田。
視線の先には、何の変転もない青空が広がっている・・・否。
「! 何か降ってくるぞ!!」
「おいおイ・・・マジかヨ」
青空に穴が開くように、チラチラ と小さな光りが見えてきた。その数は、100個近くあるだろうか。いや、1000、2000・・・もっとだ。
「ーーー《流星闘技》の《衛星流雨》じゃねぇカ!!」
次の瞬間、パァン! と柏手のように両手を打ち鳴らしたシャノン。すると、合わせた両手から 半透明な膜が広がり、瞬く間に、島田とアゲハを含めた3人を すっぽりと覆い込んだ。
「ーーー《魔法障壁》」
シャノンが出現させたのは、魔法攻撃を防ぐ《魔法障壁》という魔法だ。
刹那、3人を覆い込んだ《魔法障壁》に、無数の鉄の矢が降り注いだ。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!! と、まるでトタン屋根に打ち付けられる豪雨のように、五月蝿いくらいの音が3人を襲う。
「何だこれ!!?」
当然の疑問を叫んだのは島田だ。
「ーーー《衛星流雨》つぅ最上級魔法ダ。空から無数の鉄の矢を降り注グ・・・言っちまえば単純な攻撃魔法なんだガ・・・その威力と範囲は一般的な攻撃魔法の比じゃネェ」
「2人とも あれ見て!!」
アゲハが《魔法障壁》の外を指し示した。外は、地獄絵図もよいところだ。
雨のごとく天空から降り注いだ鉄の矢が、瓦礫を砕き、地面を深々と突き刺しているのだから。
その数は数えられないほど多い。地面が鉄の矢で見えなくなるほどだ。
「ーーーぅ」
そんな針地獄ーーー、否。鉄の矢地獄のごとし景色を前に、島田は冷や汗が止まらない。
「ヤバいな・・・シャノンが攻撃を防いでくれなかったら、俺たち今頃、蜂の巣どころかハリネズミみたいになって死んでたぞ」
「感謝すんのハ、この攻撃が止んでからにしロ。多分、もうすぐ次が来るゼ」
「・・・次?」
シャノンの言う通り、アルフレッドは次の一手を用意していた。
「・・・」
魔力感知を発動した双眸で、ジッ と周囲を観察するアルフレッド。鉄の矢が際限なく降り注いでいるアルフレッドの周囲は、まるで白煙をあげる豪雨の時の様に見通しが効かない。
だがしかしーーー、
「!」
魔力を限定的に感知するアルフレッドの目は、無数の矢と瓦礫で隠れていたシャノンの姿を捉えていた。
「ーーーそこか」
スゥ と指揮者が指揮棒を振るうように、手で空を切ったアルフレッド。
刹那、ただ重力に従い空から落ちてくる、幾つかの鉄の矢が、くんっ と向きを変える。
そしてーーー。
「ーーーっ! シャノン!! 前から強い攻撃がくるよ!!」
一瞬早く、アゲハが《第六感》でアルフレッドの行動を感じ取った。
「アァ! オイラも感じタ!!」
次の瞬間、アリの眉間を射抜くような、局所的で鋭い鉄の矢の波状攻撃がシャノンの《魔法障壁》の一点に注がれる。
ズドドドドドドドドドドドドドドドッ!!! という揺れを伴う衝撃を一点に受けるシャノンの《魔法障壁》。
「ッ・・・グゥ・・・ッ」
数秒ほど、アルフレッドが放つ《衛星流雨》の集中攻撃を食い止めたのだがーーー、刹那、ピシィィィ・・・ッ と嫌な音をあげて、《魔法障壁》にヒビが入った。
「ーーーマズッ」
そこからは一瞬だった。
薄氷が割れるかのように、瞬く間にシャノンの《魔法障壁》が砕け散る。そして、無数の鉄の矢が3人の身に降りかかった。




