第四章 -加藤 vs アルフレッド- 28 『それぞれの理由』
「あーぁ・・・言っちまいやがったな、斑鳩」
頭頂部だけ黒髪の頭を、ガシガシ と掻きながら、戦場に戻る斑鳩の背を眺める五島。
正直言って、本気で斑鳩と加藤の身を案じるならば、強引に連れ戻したほうが良いのだろうが・・・。
「ま、実際の生き死には置いといて、自分の命を賭けるかどうかを決めるのは、結局 自分だからね。他人が強制することじゃないよね・・・」
半ば、諦めたように そう溢した五島は、ちらり と隣に立つ四門に目を向ける。
先ほどから黙ったままの四門。だが、付き合いが長い五島は 彼が考えている・・・否、思い悩んでいる事に気がついていた。
「・・・四門。私は、アンタに危ない事はしてもらいたくはねぇ」
「ーーー! ご、五島さん」
「けどな。さっきも言ったように、自分の命を賭けるか決めるのは自分だ。他人に強制されたり、誘導させられるモンじゃねぇ」
「・・・っ」
「ーーーアンタも・・・アンタ自身が斑鳩について行きたいと思うなら、行きなよ。」
「ーーーぅ」
五島の ぴしゃりとした言い方に、四門は、つい固まってしまう。彼女が言った一言は、四門が頭の隅に追いやって、考えないようにしていた事だからだ。
それを目の前に、バンッ と提示されたのだから、数瞬ばかり思考が停止してしまうのも仕方がないだろう。
四門は、数秒ほど言葉を詰まらせた後、訥々と自分の気持ちを吐き出し始める。
「・・・しょ、正直・・・ぼ、僕は、加藤くんを、、命を賭けてでも、、助けたいとは思わないよ・・・出会って、、そ それほど時間も経ってないし・・・」
「そりゃそうだね。私だって思わないよ。つぅか、私は、加藤に1発もらってるならね。その点では、斑鳩と同じく 加藤に“借り”があるかもね」
五島は、「たははっ」と乾いた笑みを付け足した。
「うん・・・でも、僕は斑鳩さんは助けたいと思ってるんだ・・・《覚醒者》として、世紀末の世で目を覚ました僕たちを、、いろいろと面倒を見てくれたのは斑鳩さんだから・・・」
「・・・」
「・・・だから、その・・・」
ここで、再び 口ごもる四門。そんな煮え切らない彼を見た五島は、「チ」と小さく舌打ちをした後ーーー、バァンッ と四門の背中に平手を叩きつけた。
「ーーー痛っ!!?」
「あーーー〜ッ、もう! 鬱陶しいね! 斑鳩を助けに行きたいなら 行きなよ!! ついでに加藤に手も貸してこい!!」
「ぇ・・・いや、でも・・・僕は2人を街の外に・・・」
「土塊人形さえ貸してくれれば、私らは勝手に逃げるよ。つっても、四門が斑鳩について行くなら、私もそっちに行くけどね」
「ぇ、、ぇえ?」
「むふふ・・・ルアンちゃんは、相変わらず しもっちに ゾッコンやねぇ」
「うるせーぞ、海。つぅか、アンタはどうすんの? 街の外に避難したいなら四門に土塊人形でも借りなよ。ぶん投げて壁越えさせてもらいな」
「アグレッシブな脱出すぎるでしょ・・・2人がガルガルについて行くなら、私も行くよ。仲間はずれは嫌やし・・・仲間見捨てるんは、もっと嫌やから」
「ちょ、、ちょっと、危ないよ! 2人とも!!」
「それは重々承知だよ。けど四門、アンタは斑鳩について行くんだろ。だったら私らも行く。けど、勘違いすんなよ。斑鳩が加藤のために命を賭けるように、四門が斑鳩のために命を張るように、私らも私らの理由で戦場に向かうんだ。これで死んだって、別に文句は言わないよ」
「私は死ぬ気はないし、死んだら死んだで化けて出るかもやけどー・・・まぁ、しもっちの所為ではないから ルアンちゃんの言う通り、気にする必要はないでー」
「ぅ・・・2人とも・・・」
どうやら、斑鳩の強固な意思に触発されたのは、四門だけでは無かったようだ。
皆、それぞれがそれぞれの理由で、命を賭けて守りたいモノがあって、そのために動こうとしていた。




