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第四章 -加藤 vs アルフレッド- 27 『仲間の声』


「ーーーちょ、、しもっち! あれ ガルガルちゃう!?」

「ーーーぇ? あ!!」


 四門(しもん)土塊人形(ゴーレム)で、ちょうど《蔦壁(つたかべ)》の天辺まで登り切った時、志摩(しま) (うみ)が地上の瓦礫の上に 斑鳩(いかるが)の姿を見つけた。

 斑鳩は肩に人を担ぎ、なにやら大声で叫んでいるように見えるが・・・体力が限界に近いのか、うまく声が乗っていない。


「斑鳩・・・何を言ってんだ?」


 斑鳩が伝えようとしている事が聞き取れず、五島(ごとう)も眉を寄せる。


「何でもエェよ! しもっち! 一回 降りてぇ!! ガルガルと・・・あと、誰かな・・・ぐったりしてる人おるから!!」

「ーーーぅ、うん!」


 海に促されて、せっかく天辺まで登り切った四門の土塊人形(ゴーレム)は、3人を連れて来た道を舞い戻る。

 その途中でーーー、


「! ん・・・あの担がれてる奴って、もしかして・・・」


 五島が ある事に気がついた。




***************




「ーーーぃ 斑鳩(いかるが)さん!!」


 ものの数秒で、地上の瓦礫の上に舞い戻った四門たち3人は、急いで斑鳩の元に駆け寄る。

 対する斑鳩は、よほど張り詰めた状況下だったのか、近づいてくる3人を見るや否や、ガクンッ と腰を落としてしまった。


「・・・お前ら、、無事だったか・・・」


 自分の中で張り詰めていた空気を抜くような、「フゥーッ」という息とともに、それだけ言った斑鳩。


「は、はい・・・ま、街が吹き飛んだ瞬間、僕の土塊人形(ゴーレム)でみんなを守りましたから・・・っ」

「そうか・・・流石だな、四門は」

「つぅか、斑鳩よ。アンタが担いでる ソイツって・・・」


 斑鳩の無事を確認できた以上、当然 3人の意識が持っていかれるのは、彼が肩に担いでいる人物だ。

 まるで死んでいるかのように、ぐったり と運ばれているのはーーー、加藤(かとう) 兵庫(ひょうご)だ。


「か、加藤くん!?」

「ホンマや! ヒョーゴンやん! なんでなん!? 今、魔導士と戦ってるんとちゃうん!?」

「ちょいと、斑鳩。なんで加藤がここに居んのさ? 今、シャノンたちが加藤の加勢に行くって息巻いて、魔導士のところに向かって行ったばかりだよ?」

「・・・っ。シャノンが街に戻ってきてるのか!?」

「・・・ん? あぁ、加藤と一緒にね」

「ーーーくそッ!!」


 次の瞬間、ガンッ と瓦礫に拳を打ちつけた斑鳩。

 その突飛な行動に、目の前にいた3人は、ビクゥ と肩を震わせる。


「なんなんだい・・・急に?」

「入れ違いかよ!! くそっ、、急いでシャノンの元に戻らねぇと・・・」

「ちょ、、何してんの!? ガルガル!?」


 突然、加藤を担ぎ上げたまま立ち上がった斑鳩。彼の身体は、彼方此方(あちらこちら)に内出血や切り傷が見られる・・・言わば重症と言って差し支えがない状態だ。

 その状態で シャノンの元・・・つまり、アルフレッドの元に舞い戻ろうなど正気の沙汰ではない。

 当然、四門たち3人は、斑鳩を止めようとするがーーー、


「離せ!! 今すぐ加藤をシャノンに診せねぇと危ねぇんだ!!」


 斑鳩は、彼らを振り切って足を前に進めようとする。


「ーーーちょ、、どういう事なん!? ガルガルもヒョーゴンもケガしてんのよな!? だったら、私らと一緒に街の外の避難所に行こうや! そこでなら、2人とも治療してもらえるかもやで!?」

「そうだね。まぁ、どっちにしろ加藤が無事だったって事を シャノンらに知らせなきゃだけど・・・それは、アンタの《受信(キャッチ)と送信(アンドリリース)》がありゃ、1発じゃん。今、知らせなよ」

「そういう事じゃねぇんだよ・・・今、街を襲ってる魔導士は、たとえ加藤が どこに逃げても追ってくる。俺は、肌で それを感じた・・・っ」


 そう言った斑鳩は、先ほどアルフレッドから放たれた鉄骨の事を思い出していた。

 攻撃・・・などという表現では計り知れない強い殺意を感じさせた一撃。確実に、加藤を この世から存在ごと消し去ろうとする意志を感じた。

 きっとアルフレッドは、加藤がどこへ逃げ隠れしようとも、必ず追ってくる。

 斑鳩は、そう確信していた。


「・・・だから、今のうちに加藤を回復させて、アルフレッドが追ってきても戦えるようにしてやりてぇんだ・・・でないと、加藤は絶対に死んじまう」

「・・・いや、でも・・・」


 斑鳩の強い意志を受けた四門たち3人は、もう彼を止めようとは思わない。

 だがしかしーーー、


「ちょっと回復しただけで・・・ヒョーゴンは その魔導士と戦えるん? もうボロボロやで?」


 斑鳩の意思とは反して、加藤の身体はボロボロだった。

 身体中が傷だらけで 意識もない。一見すると、“死んでいるのか?” と思えるほどだ。


「海の言う通りだな。加藤は もう戦えない。逃げれる時に さっさと逃げるべきだな」

「・・・っ」


 五島の諫めるような声音に、一瞬ばかり、斑鳩は心が揺らいだ。

 だがしかしーーー、


「悪いな・・・」


 斑鳩の意思は変わらないようだ。

 加藤を担ぎ上げたまま、3人に(きびす)を返して 戦場の方へ足を向ける。


「な、、なんで・・・!?」

「ーーー!」


 ここで ようやく、口を閉じていた四門が言葉を発した。


「ぃ、斑鳩さんは・・・な、なんで そこまでするんですか? このまま魔導士の元に戻れば、斑鳩さんの身だって、、ぁ、危ないですよ・・・」

「・・・それはーーー、」


 四門の問いに、数瞬ばかり考え込んだあと、斑鳩はふと口を開いた。


「・・・俺は《(オーガ)》戦で加藤に借りがある・・・そいつを返してぇつぅのが 1つだな」

「・・・っ!」

「あとは・・・加藤は、俺たち《岐阜の街》の仲間だろ・・・その仲間が、心ん中で必死に“戦いてぇ”、“仲間を守りてぇ” って叫んでんだよ」

「・・・? そ、それは・・・どういう意味ですか?」

「言葉通りの意味だよ。俺の《受信(キャッチ)と送信(アンドリリース)》は、繋がった相手の考えが読める。だから 加藤が・・・意識を失っても、俺たち《岐阜の街》のために“戦いてぇ” って言ってんのが分かんだよ」


 斑鳩は、ずり落ちかける加藤の身体を、ぐいっ と担ぎ直す。


「こんな状態になってでも、仲間の身を案じるコイツの心意気・・・同じ仲間なら買ってやりてぇじゃねぇか・・・だから俺は、コイツの意志を尊重して戦えるようにして やりたいんだ」


 次の瞬間、島田たちが向かった先で、大規模な爆発が巻き起こった。


「ーーーっ! やべぇ、長く話すぎた!! 俺は もう行く! お前らは 先に逃げてろ!!」


 それだけ言うと、斑鳩は四門たちに背を向けて、再び戦場の火の中へ身を投じに行く・・・仲間である加藤の意志を胸に秘めて。

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