069●生死を越えた存在?
スティーブは、冷たくなった遺体に静かに目を落とした。
科学情報局から派遣された彼の任務は、この常識では説明できない矛盾、
「ジョン・スミスの遺体」と
「生存しているスミス」の真実を見極めることだった。
同行するエージェントは生化学の専門家であり、博士号も取得している。
埋葬に‘待った’をかけ、入念に調べるが遺体は確かにスミス本人で、
特別に不審なところは見当たらない。
「撃たれたのは影武者ではない」という情報が裏付けられた。
スティーブは遺体の見分を任せて、情報を集め始める。
「そうなんです。あれは確かに、スミスさんでした。実際に会ったのですから。」
「その時、あなたはスミスさんが、既に亡くなっているとご存じだったのですか?」
「いいえ。彼とホテルのロビーで会話して別れた後に、僅か1時間ほど前に死亡した、と知らされて。」
「ということは、あなたが話したのはスミスさんではなかった、ということですね。」
「いえ、あれはスミスさんでした。まちがいなく・・・ジョン・スミスさんでした。手を差し出され、握手までしたんです。あの、いつも通りの彼でした。」
「では、亡くなったのが別人ということですね。」
「わかりません。葬儀で棺の中に見たのも、間違いなくスミスさんでした・・・。自分でも変だとわかっているんです。・・・もしかしたら。」
「もしかしたら?」
「スミスさんはもう、生死を越えた存在なのかも・・・幽霊?・・・精霊?・・・いや、彼は人間だ・・・どうなってるんだ?!」
「落ち着いてください。・・・誰か、水を持ってきて差し上げろ。」




