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063●メリー・クリスマス

もう金がない。冷蔵庫の食い物も、あとはモヤシが少しあるだけだ。

携帯端末を見る。わりのいいバイトはないか?できれば簡単なやつ。

だれがこんな格差社会を作ったんだよ。

怒りを通り越して、この理不尽な生活に愛想が尽きた。

見知らぬ誰かを道ずれにする犯罪って、やるやつの気持ちがわかるよなあ。


おっ、これいいんじゃないか?!

年齢、性別、学歴不問。

森の中の廃屋の処理、か。時給もいいじゃないか!

これこれ!連絡してみよう!


やってきたぞ、立派な部屋だ。

説明が始まる。ふーん、ちょっと遠方だな。

そりゃあ、そうだよな。廃村の処理だもんな。

・・・でも、あの装置のボタンを押して放り込むだけでいいのか。

簡単じゃーん!

ああ、そうか、行くまでが大変だから、食事も寝る場所も用意してくれるんだ。

それで、この報酬っていいよな!

集まった他の人たちも、なんかやる気になってるな。


総勢20名で車から降りる。

ここからは徒歩だな。

途中まではコンクリートで舗装されてたけど、

これ、ホントに道って言えるのか?


リーダーが少し休憩と言う。

助かった。もう、喉がカラカラだ。

年末の寒さなんて、どこかにいってしまったよな。

雪がチラついて来た。ああ、今日はクリスマス・イブなんだな。

そんなこと、まったく関係ないけど。

サンタを信じていたのは、何歳までだったろう?


すっかり日が暮れた。街灯なんか、もちろんない。

全くの闇だ。ハンドライトなしでは、全然見えん。

リーダーが支給された端末の着用を指示した。

うわっ、見える!昼間と同じようだな!

雪は白く、針葉樹は緑だ。これなら問題ない。


処理する廃屋群の近くまで来た。

リーダーは会話をしないように、と言う。

廃村だから、別に喋っても、だれもうるさい、何て言わないと思うんだけどな。

でも、報酬のためだ、言うこと、聞かなくちゃ。


家屋が見えてきた。準備にかかろう。


突如、ジングル・ベルの音楽が大音響で響く!

四方から照明があたり、闇が昼間のように変わった。

端末を取って目を細める。

赤い衣装のサンタが、袋を背負って現れた。

4人もいる!えっ、背負った袋からプレゼント?!

みんなポカーンとしてる。

・・・ああ、そうか、これ番組のサプライズ企画かあ!

年末だから、困っている人を助けるって企画だよな!


プレゼントの包みを開ける。すごーい!ギフト券に、高価な文具。

時計に温泉の招待券・・・しかも、往復の交通費込みだあ!

みんな小躍りしてる!いい番組だなあ!


「で、リーダーを捕まえて、あとは村長さんの家で大宴会なのね。」

「ジン、こんなことして予算は大丈夫なのか?また、局長とモメないか?」

「ラボと折半です。話はつけてあります。さて、それでは、あまり期待できないですが、リーダーの尋問にうつりましょうか。」

「アキラさん、エイミーさん、サンタ姿がとてもよかったです。メリー・クリスマス!」

そういって、ココアがクラッカーを鳴らした。

平和な響きだった。


―このパターンって、公国へのテロの対策と同じ?

―そうね。マイロードらしいよね~。

―ルシファー、今回も出番なしだったわね。

―わたしは出撃するとは、まったく思ってなかったぞ。

―あら、どうしてよ?

―ジョン・スミスが力づくで変革を起こすなら、マイロードはまったく逆だからな。こんなところで、素人集団をねじ伏せるはずがない。

―なるほどね。年末年始は穏やかなほうがいいしね。

―じゃあ、ルシファー、メリークリスマス!

―ふん。たかだか地球起源で続いているイベントだろうが。

―でも、騒げるんだからイイんじゃない?

―ほらほら、みんな実体空間に集まってるよ!はやくおいでよ!


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