041⚫️波長に乗せて & 042⚫️朋あり、遠方より来る
041⚫️波長に乗せて
「あぶな〜い!ゼルダン、心理操作もするんだあ〜!」
「ハリーが長年、ゼルダンを離れられなかったのは、このせいですな。」
「でも、彼、やっぱりヒトが恋しかったのね。戻ってきたもの。」
「そうですね。人間不信に陥らせる波長より、積み重ねた思い出が勝ったんですね。これはいいネタだ!」
「わたしのグレッグは、タフなんです!あっ、ルドルフもだいじょうぶな人だもん!」
「よっしゃあ、この波長に乗せて、M78に同調や!回収作業データ、発信するでえ!」
042⚫️朋あり、遠方より来る
ハリーは、惑星ゼルダンでひとり、暮らしていた。
もともと彼は、孤独な旅を続ける者だった。
相棒は宇宙艇の人工知能のみ。
彼の歴史心理学説は学会でも受け入れられなかった。
失意のうちに、ハリーは母星を後にした。
旅の途中、エンジントラブルが起き、
彼の宇宙艇は運よく、惑星ゼルダンに不時着した。
そこで彼は、不思議な生命体と交流し、惑星上での生きるすべを教わった。
情報を交換し、共有する奇妙な交信だった。
だが、同時に夢の中でも、目覚めた後も、
過去の傷や妄想が、幻影となって彼を揺さぶった。
対人恐怖が心を苦しめる。
この惑星でひとりきりで生きていく。
それは、ある意味で彼には理想だった。
しかし、やがて耐えられなくなる。
故郷に帰りたい。宇宙艇の修理を思い立つ。
彼の記憶を共有するようになった、ゼルダンの生命体がその手助けをしてくれた。
彼らは、ハリーの「故郷への思慕」という新たな感情を学習したのだ。
宇宙艇の修理が整うまでに、生命体は救難信号も出してくれる。
無人救援艦とのランデブーのタイミングがピッタリだった。
彼が無事帰還した時、自分に生命体と共有した知識が残っていた。
だが・・・彼の博識をもってしても、それは言葉にも数式にも還元できなかった。
まるで、記憶そのものが彼の中で、
非言語的な「情報流」として生きているようだった。
テーブルには焼き立てのパンが並び、
「月刊レシピの天国」を見ながら、調理をする。
数少ない古い友が、今日、訪ねてくる。
かつて孤独だったハリー・キャラバンは、もう孤独ではない。
彼の中にはゼルダンの広大な記憶と、地球の温もりが共存していた。




