036⚫️嘘はいけません
ブリッツの銃が回収された。
その性能に、関係者は息を呑んだ。
有効射程4km。しかも携行可能。
それは、もはや銃ではなく、小型の誘導ミサイル発射装置だ。
ただ、ミサイルと違うのは爆発せず、ピンポイントで人を狙うということ。
多殺傷ではなく、個別標的を狙う兵器。
そして、それを扱える者は、超人的な技量を持つ者に限られる。
ブリッツは、その稀有な持ち主だった。
拷問も薬剤も適用されないが、厳しい尋問が繰り返される。
直接の容疑は‘殺人未遂’と‘銃刀法違反’。エイミーとアキラに発砲している。
しかし、ふたりとも怪我どころか、掠り傷ひとつない。
長距離狙撃を為したことは、証拠も挙がるが器物破損にとどまる。
しかも、国内で逮捕されたのは、これが初めて。つまり、初犯だ。
国際的にデータを見ても、ハワイでの軽微な傷害事件が1つあるだけ。
ブリッツは完全に黙秘している。
この場合、どれだけの量刑になるのだろうか?
壁のスクリーンには、狙撃銃の設計図と軌道解析が映し出されている。
ココアが端末を操作しながら、説明する。
「判例データベースによれば、殺人未遂でも、被害者が無傷で初犯の場合、懲役3年から5年が相場です。」
エイミーが椅子の背にもたれながら、眉をひそめる。
「ちょっと待ってよ、私、3発も撃たれたのよ。それで、たった数年?」
ジンが腕を組み、冷静に答える。
「未遂ですからね。法的には、結果よりも行為と意思が問われる。でも、結果が出ていない以上、量刑は軽くなりますね。」
アキラが苦笑しながら、机を軽く叩いた。
「俺は、顔面に弾、喰らったぞ。命に別状はないが、それこそラッキーなケースだ。やつにとってはな。」
ココアが続ける。
「銃刀法違反も加算されますが、罰金か懲役1年程度。初犯で反省の意思があれば、執行猶予がつく可能性もあります。」
エイミーが立ち上がる。
「じゃあ、あいつ、数年で出てくるってこと?! また同じことをやるに決まってるのに?」
ジンが静かに言った。
「それが法の限界です。感情ではなく、構造で裁く。でも、次は未遂じゃ済まない。ですが、今回のように捕まえられるかどうか。」
「うーん、こんなことなら、ちょっとは怪我しとくんだった!」
「アキラ、それって無理だったんじゃない?」
「無理でもなんでも、医者のところに行って、痛いとかなんとか言って診断書もらえばよかった!」
「オオガミさん、どこから見ても健康体ですよ。」
「心的トラウマを負ったんだあ!」
「うーん、苦しいなあ。アキラさん、ずっと陽気だもの。」
「オオガミさん、嘘はいけません。」
「はーい・・・。」




