035●驚かない男の驚愕
ブリッツは、いつ、いかなる時も感情が揺れない。
4対1。それでも彼の脳裏には、事態打開の戦略が鮮やかに浮かんでいる。
彼は行動を開始する。ジンに向かって鋭い右ストレート。フェイントだ。
だが、見破れぬフェイントこそ、最も危険な一撃。
スピード、威力、殺意。すべてを備えた拳が空気を裂く。
同時に、脚部へ低く鋭いキック。
二重の攻撃が、まるで一つの動作のように融合している。
ジンは左腕刀で拳を流し、膝を折りたたむようにしてキックを躱す。
だが、ブリッツは止まらない。半回転して軸足を変える。
遠心力を乗せた左脚回し蹴り。ジンは屈む。髪が風圧でなびく。
その瞬間、ブリッツは右側への逃走ルートを得る。
地を蹴る。爆発的な加速。まるで弾丸のように、一直線に駆け抜ける。
行く手にはココア。常識ならば、止められるはずがない体重差。
しかし、ココアは常識の外にいる。
ブリッツの突進を受け止め、その体を巴投げの軌道に乗せる。
ブリッツの体が円弧を描いて地面へ。彼は体を丸め、衝撃を殺す。
着地と同時に前転。アンクルキャリーからリボルバーを抜く。
回転の勢いを利用して、起き上がり再度、加速する。
その前に、アキラが立ちはだかる。至近距離。ブリッツは引き金を引く。
彼の手にかかれば、リボルバーもフルオートのように機能する。
全弾がアキラの頭部に集中。完璧な射撃。即死のはずだ。
しかし、アキラは動く。
まるで紙片が触れただけのように、無傷で迫ってくる。
ブリッツが驚く。本人でさえ、驚きという感情を忘れていたのだ。
それでも、ブリッツは拳銃を打器に変え、一撃を放つ。
アキラはその動きに合わせ、目にも止まらぬカウンターキック。
鳩尾につま先が突き刺さる。
ブリッツは肘でブロックするが、間に合わない。体がわずかに浮く。
ブリッツは後方へ跳ぶ。距離を取る。
リボルバーの残弾はゼロ。
即座に拳銃を後方のココアに投げる。ココアは紙一重で避ける。
ブリッツはその隙に新たな退路へ進む。今度はエイミーが回り込む。
ブリッツは逆方向へ跳ぶ。そこには、また、ジンがいる。
ブリッツは拳を振るう。
ジンが迎えるように手刀で受け止める。衝撃がブリッツの腕を痺れさせる。
その瞬間、アキラが背後からブリッツの脚を払う。バランスが崩れる。
エイミーが腕を取り、肩を支点にして投げる。仰向けに地面に叩きつける。
そのまま腕を操作し、うつ伏せに。
腹ばいのブリッツに、体重を乗せて手首を極める。
ブリッツは、初めて息を荒げた。
「いやあ、チームプレーって、いいもんですねえ。」ジンが爽やかな顔で言う。
「ずるいぞ、ジン。あんた、反撃しなかったじゃないか。俺、顔面に銃弾喰らったぞ。この時期の俺じゃなかったら、あの世にいっちまってるぞ。」
「アキラさんに花を持たせたんですよ。もう、何の傷跡もないじゃないですか。すごいなあ。」
「オオガミさんだからこそ、成し遂げられたんですよね。かっこよかったですよ。」
「いやあ、ココアがそう言ってくれるんだから、まあ、いいか。けどよ、4対1っていうのは、こいつ、卑怯だと思ったかな。」
「ちょっと!あなたたち、いつまで喋っているのよ!わたしに押さえさせてばかりいないで、手錠とかカーボンファイバーのロープとか、出しなさいよ!」




