015●単独で行くで
エンターサプライズ号と8隻の僚艦は、防壁の再構築を行う。
「僚艦3号、反応しません。向こうからは接触しようとしています。」
「あかん、あかん!‘その他’、’もひとつ’、カットせい!一時的に撤退する。‘操舵手’、緊急離脱や!」
ごめんやで、3号!必ずここへ、もどってくる!それまで待っててや!
惑星表面がゆらゆらと揺れる。
まるで真っ赤なスカーフを振っているようや。
100年前の漂流者の記録と記憶。艦内で再生する。
万一に備え、副長のクドーが単独で精査する。
「うーむ。これは確かに、漂流者のハリーのものですな。不時着した宇宙艇の型番が一致する。」
クドーの落ち着いた、渋い声が艦内の動揺を鎮める。
「なるほど。ハリーはゼルダンで、自生する植物を食べていますな。食用に適したものや、群生場所の情報を集団意識体から得ていたのか・・・。」
網膜型端末を操り、クドーは作業を続ける。
「さらに、惑星ゼルダンを脱出する方法まで。ほお、艦艇の修理をしているな。指先が見える。・・・救助信号はハリーの記憶をもとに、集団意識体が発したのか。ハリーはゼルダンの軌道上まで、宇宙艇で自力脱出している。そこで無人救助艦に救出されている。ランデブーのタイミングがピッタリだ。」
‘操舵手’、‘その他’、‘もひとつ’、そしてわたしは、
クドーの言葉を聞き逃すことなく、同時に記録も取っている。
「そうか。ハリーはゼルダンに恩義を感じ、人類が押し寄せることを懸念したのだな?いや、これはゼルダンが集合意識体と同化している。我々の歴史より遥かに長い記録と記憶。明るみにでれば、どのように扱われるか、わからんという危惧が見える。ハリーの意識か、惑星の意図か、判別できん。」
クドーは端末を取り、ため息を吐いた。
「艦長、一概に攻撃的なものではないようです。ただ、どれだけの記録を保存しているのかは、わかりません。その内容によっては、有益にも有害にもなりえます。」
それは、むずかしい判断やな。というて、報告せんとあかんしなあ。
「よっしゃ、通信機能をカットして、もう一回、軌道上にもどろ。僚艦はゼルダンの影響を受けへん宙域で待機。本艦だけで行くで。」




