011●捜査開始
「逮捕歴はあるぞ。暴行の現行犯だ。」
「ふ~ん。プロの狙撃屋にしてはうかつじゃない?」
「いえ、それがエイミーさん、ちょっとおかしいんですよ。」
「なにが?どういうこと、ジン?」
「この人、どうも無言で後ろから近づかれると、反射的というか、本能的に攻撃するようです。」
「それって、すごいの?」
「イヨにはわかんないだろうけどな。俺たちは真剣に身を守る体制に入ると、そういう反応をとるんだ。」
「じゃあ、今度、アキラさんの後ろから、こっそり近づいちゃうね。」
「や、やめろ!それは危険だあ!」
「冗談、冗談。でも、ジンさん、わたし、すごくこの人に違和感があるの。」
「さすがは日の巫女ですね。データを見てください。」
コードネーム、ブリッツ。
アジア系の外見であるがルーツは不明。
本名、年齢、国籍、不明。指紋、DNAなど未採集。
偽名は多数。ジューク・南郷の名で宿泊したことがある。
だが、筆跡はどれも一致していない。
ハワイのアスレチック・ジムにおいて、
暴行の現行犯での逮捕歴が記録されている。
貸し切りだったはずが、現地に着いたばかりの海兵隊員たちが、
トレーニングをしようと入室した際、無言で彼の背後から近づいたのである。
パンチを顔面に受けた兵長は左側の歯をすべて失い、顎骨を骨折した。
貸し切りの場に無断で入ったこともあり、
怪我の程度にも関わらず、釈放された。弁護士が優秀だったせいもある。
これ以外にも、事情聴取を受けたことがあるが、
いずれも逮捕には至っていない。
「なぜ、逮捕に至っていないんだ?あっ、この件なんて、銃器も見つかり、容疑濃厚、こいつが犯人じゃないか?」
「現場の警部が、起訴は不可能だと考えたようです。無理もない。銃には指紋もなく、男には硝煙反応も検出されませんでした。何より、夕暮れ時、強い横風が吹く中、3km離れたビルの一室を狙撃する。それもビルとビルとの間のわずかな隙間を縫ってスコープに捉えた標的を撃つことができた、なんて常識的に陪審員を納得させることはできない、という判断だったようですね。」
「だが、エイミーは同じような条件下で撃たれたんだろ?」
「そうです。ビルの屋上に銃が残っていました。ライフルマークがオオガミさんの車内から見つかった銃弾と一致しています。」
「うーん、あやしいよな。」
「あやしいですね。」
「あやしいわよ。」
「メカロイドのわたしだって、そう思います。」
「未成年のわたしだって、わかるよ。」
捜索開始だ!やっと肉体派の俺の出番だ!




