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010●やられたあ!
部屋の空調は心地よく、窓の外には都市の灯りが滲んでいた。
21階、南向きの角部屋。静かで、落ち着いた空間。
彼は、’取引先’の電話を取りながら、窓辺に立っていた。
報告は順調だった。この商談がまとまれば、一度家に帰ろう。
「ああ、問題ない。明日、いつものところで、な。」
声は落ち着いていた。
だが、どこか不安を感じる。
何か不吉なものが、近づいてくるような、そんな予感。
彼は、ふと窓の外に目をやった。
何も見えない。この高さと同じビルは3kmも向こうだ。
例えスナイパーが狙ったとしても、この距離ではどうしようもあるまい。
夜景から目を離す。会話に集中する。
「それでは、また連絡するよ。」
電話を切った瞬間だった。 何かが、空気を裂いた。
ドスン、という鈍い音が、胸の奥から響いた。
何が起きたのか理解できなかった。 視界が揺れる。足元が崩れる。
手にしていた携帯端末が、床に落ちる。
窓のガラスが爆発するように砕け、強い風が部屋に入り込んで来る。
冷たい夜気が、肌を撫でる。
彼は、ゆっくりと膝をついた。
胸元に広がる赤い染みを見ながら、ただ一つの思いが浮かんだ。
やられた・・・。
そして、何もかもが、静かに暗転していった。




