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第1部 : 5分間のサバイバル

「白崎さんに近づいて、口説くって?!」


「みんなの目の前で?!」


「正気じゃないよ!!」


リクは一瞬、私をじっと見つめた。


そして――


「……そうするしかないんだ」


私は固まった。


「……何?」


「……そうするしかないんだ」と彼は繰り返した。「さもないとマイナス200だ」


「…それって精神的脅迫じゃないの!!」


「システム的脅迫だ」と彼は訂正した。


「…嫌だ」


「…同感」


私は教室の方を見た。


それからまた画面へ。


そしてリクへ。


「…そんなこと言えるわけないよ」


リクは肩をすくめた。


「……じゃあ、学校で一番嫌われる男になるのを楽しんでくれ。」


「……助けてくれないのね。」


「現実を見てるだけさ。」


「……無理よ……」


「……レン。」


「……何?」


リクは少しニヤリと笑った。


「……君、これくらいならラブコメを十分に見てるだろ。」


「……現実ではそんなことないわ!」


「…まあ」彼は私の肩をポンと叩きながら言った。「おめでとう。」


「…え?」


「ついに君もラブコメのワンシーンを味わえるんだ。」


「…そんなのいらない。」


「残念だね。」


二人で教室の廊下に着くと、私は自分の人生の選択を疑い始めた。


私は深呼吸をした。


そしてもう一度。


「…よし。」


私の手がゆっくりとドアを開けた。


教室の喧騒が瞬時に押し寄せてきた。


生徒たちの話し声。


椅子が動く音。


普通だ。


すべてが普通だった。


ただ一つを除いて――


私。


私の視線はすぐに彼女を見つけた。


白崎さん。


窓際の席に座っている。


相変わらず落ち着いている。


別の女の子と静かに話している。


「…なんであの子が…」私は呟いた。


「だって、メインヒロインだから」と、背後からリクが囁いた。


「……黙って」


「慣れちゃダメだよ」


「……今はいい」


教室に入った。


一歩一歩が、いつもより重く感じられた。


心臓の鼓動が、異常に速かった。


彼女が私に気づいた。


金色の瞳が、こちらへと向いた。


「……高橋くん?」


頭が真っ白になった。


「…こんにちは…白崎さん」


彼女の友人は、嫌悪と恐怖の混じった表情で私を一瞥し、私が近づくとその場を離れた。


最高だ。


完璧な観客だ。


「二人とも、どこに行ってたの?」白崎が私たちに尋ねた。


「私、私たちは…えっと、その…」私は言葉を探した。


「…ん?」


教室全体が急に騒がしく感じられた。


それとも、ただ僕の鼓動がそうさせただけなのか。


言え。


今、言え。


僕は彼女を見た。


本当に彼女を見つめた。


ピンクの髪。


穏やかな瞳。


少し戸惑ったような表情。


喉が乾いた。


「…君は――」


僕は言葉を止めた。


「……君、今日すごく……か、か、かわいいね……」


04:59


静寂。


完全な静寂。


教室のざわめきさえ、一瞬消え去ったように感じた。


白崎は固まった。


[メインヒロイン好感度:+20]


彼女の瞳がわずかに見開かれた。


「……えっ?!」


彼女の隣にいた女子が、静かに息を呑んだ。


「待って――今、彼、まさか――」


「今、彼女を――」


「ブ――」


ささやき声が瞬く間に広がった。


僕は死ぬかと思った。


白崎の顔がゆっくりと赤らんでいった。


「……タ、高橋くん……?」


「あ、あの――」


画面が再びちらついた。


[5分間、いちゃつくようなやり取りを続ける]


[失敗条件:会話を離れる/沈黙が10秒以上続く]


「……今日の髪、すごく似合ってるよ」


「……えっ――?」


「それに、目も……うーん……すごく……輝いてる」


「……た、高橋くん――」


「笑顔もね――そのおかげで、話しやすいし――」


彼女は固まった。


完全に。


[好感度 +5]


彼女の脳は明らかに処理が追いついていない。


「…待って…」


「それと、君の声も…穏やかで…なんだか…落ち着くし…」


「…えっ?」


隣にいた少女はゆっくりと身を引いた。


「…一体何が起きてるの…」


ささやき声が広がり始めた。


「あの人、また始めたよ—」


「告白してるの――?」


「まさかこれが現実だなんて――」


「静かにして、聞いてるんだから――」


04:21


「……あと、えっと――君の字、すごくきれいなんだよね――実は気づいてたんだけど――」


「……気づいてた……?」


「うん――それに姿勢もすごくいいし――いつも背筋を伸ばして座ってるし――かっこいい――」


「…かっこいい…?」


「うん。それに、みんなにすごく優しくしてるし…」


「…タ、高橋くん…やめて…」


彼女は顔の一部を隠した。


耳はすっかり真っ赤になっていた。


「…な、何が起きてるのか分からない…」


「俺もさ」と、僕は小声で呟いた。


「…何?」


「何でもないよ…」


03:37


「……あと——君、すごく頭がいい——怖い感じじゃなくて——役に立つ感じの——」


「……や、やめて——」


「あと——えっと——いい匂いもするし——待って、これ変な言い方だった。」


「確かに!」誰かが大声で囁いた。


「……高橋くん——!」


[好感度 +25]


「た、高橋くん…なんで…」彼女は真っ赤になって、混乱していた。


死にたくなった。


その場で。


即座に。


02:50


「…あと、えっと…笑うとき…それが…いい。」


「…い、いい…?」


「うん。大声じゃないけど、かといって静かでもない。ただ…いい感じ。」


「…私…もう…無理…」


[好感度 +5]


彼女はショートしそうだった。


手をそわそわさせ、


視線をきょろきょろさせ、


顔はすっかり真っ赤になっていた。


「…なんでそんなこと言うの…?!」


「だって――」


私は言葉を止めた。


システム。


「…だって、そう言いたかったから。」


沈黙。


その一言が響いた。


ささやき声さえも一瞬止まった。


「……あなた……言いたかったの……?」


「……うん。」


[好感度 +5]


02:05


彼女の目がわずかに見開かれた。


そしてまた視線を下げた。


完全に圧倒されている。


「……私……どう返事すればいいか分からない……」


「……返事なんてしなくていいよ。」


「…それだと、かえって…。」


「…ごめん。」


「…違うの、ただ…」


彼女は言葉を続けられなかった。


01:42


僕は話し続けた。


そうしなければならなかったから。


「…君は、一緒にいてすごく気楽なんだ。」


「…僕…」


「それに…君と話していると、心が落ち着く気がする。」


彼女の指がノートをぎゅっと握りしめた。


「…高橋くん…」


「…うん?」


彼女は顔を上げた。


ついに。


あの気まずさを乗り越えて。


彼女は気づいた。


その躊躇いを。


ぎこちない沈黙を。


不自然なリズムを。


「……言いにくそう……でしょ?」


私は固まった。


「……え?」


「……無理に言ってるみたい……」


……


「……いや、僕は……」


「……無理しなくていいのよ……」


彼女は優しく言った。


「……あの……高橋くん……」


小さくて、照れたような微笑み。


「……ありがとう……」


……


一瞬――


すべてがスローモーションになった。


あれは戸惑いじゃなかった。


あれは恥ずかしさじゃなかった。


あれは……本心だった。


そして、それは僕の言ったどんな言葉よりも強く胸に突き刺さった。


00:39


「……うん。」


僕は少し目をそらした。


「……本気だよ。」


00:10


「…それに――君は本当に大切な人なんだ。」


彼女は瞬きをした。


「…大切な人…?」


「ああ。」


________________________________________


00:00


________________________________________


[タスク完了]


終わった。


________________________________________


その言葉が口をついた瞬間――


教室全体が爆発した。


「おい、今のは何だ――」


「これ、生放送の告白か――」


「マジか――」


僕は一歩後ずさった。


心はすでにどこかへ。


体はここにある。


かろうじて。


その時――


リクが突然、僕の肩をドスンと叩いた。


「うわっ、レン――マジでやったのかよ?!」


「……え?」


彼は大声で笑った。


「まさかお前が『挑戦』をやり遂げるなんて思わなかったぞ!」


静寂。


教室が固まった。


「……挑戦?」誰かが繰り返した。


リクはニヤリと笑った。


「ああ、そうだよ——昨日賭けに負けたんだ——5分間、ずっと口説き続けなきゃいけなくて——」


「何してるの?!」私は彼に小声で囁いた。


「お前の命を救ってるんだ」彼は小声で返した。


白崎は固まった。


「…そ、それって…挑戦…?」


「…ああ」リクはすらすらと続けた。「本気でやるなんて思わなかったけど――見てよ、彼――本気モード全開で――」


「あいつ、頭おかしいよ――」


「尊敬するよ――」


場の空気が変わった。


真剣な雰囲気から――


カオスな雰囲気に。


そして、笑える雰囲気に。


白崎はうつむいた。


「……そ、そう……」


一瞬の沈黙。


それから、小さな息遣い。


「……本当に驚いたわ……」


「……ごめん」と、僕は静かに言った。


「……いいえ……」


彼女は軽く首を振った。


「……大丈夫……」


「何かおかしいって、もう気づいてた……君が急にそんなこと言い出すはずないから」


彼女は僕に微笑みかけ、それから少し照れくさそうにしていた。


「……よくやった……お題にしては……」と彼女はつぶやいて、自分の席へ戻っていった。


リクが身を乗り出した。


「……生き残ったな」


「……お前は伝説だ、リク!」


「…どういたしまして。でも、課題はまだ終わってないよ。」


「…ああ… それでもお前を愛してるぜ、兄弟!」


彼は何気なく手を振った。


「じゃあ、ちょっとトイレに行ってくる。」


「…ああ、いいよ。どうせシステムがそんなに早く課題を出してくるわけないし…」


「名言だな」と彼は呟き、部屋を出て行った。



沈黙。


ちょうど3秒間。


そして――


「おい、高橋。」


「…は?」


男たちが突然、僕を取り囲んだ。


「昨日、シロサキさんと歩いてるの見たぞ。」


「ああ――今日だって!」


「二人で登校してきたんだろ?!」


「説明しろ。」


「どういうことだ?!」


「……これ、尋問か?」


「彼女と付き合ってるのか、そうでないのか?」一人が直接的に詰め寄った。


「……違う」


「じゃあ、さっきのは何だったんだ?!」


「……挑戦状だ」


「そんなの信じろってのか?!」


「……俺自身も、ほとんど信じてないよ」


彼らはさらに身を乗り出した。


「…正直に言えよ。」


「…正直に言ってるよ。」


沈黙。


すると、一人が鼻で笑った。


「…おい…一体どうやって彼女に近づけたんだ?」


「…そうだな。」


「お前は文字通り、後ろの席で一人で座ってるだけだろ。」


「女の子とは話もしないくせに。」


「みんなの中で…彼女が君を選んだって?」


「…彼女が俺を選んだわけじゃない。」


「じゃあなんでいつも一緒にいるんだ?!」


「…偶然さ。」


「そんなの偶然じゃねえよ。」


「お前の運は異常だ。」


「お前は主人公みたいな生活を送ってるんだな――」


「黙れ」と、もう一人がきり出した。「本気だぞ。」


口調が変わった。


少し鋭くなった。


「……彼女とふざけるな。」


「……何?」


「彼女は、ただ挑戦だからって弄ぶような相手じゃない。」


「……俺はそんな――」


「なら、彼女に近づくな。」


沈黙。


その言葉が突き刺さった。


私が返事を返す間もなく――


椅子が動いた。


静かに。


「……もういいわ」


声が止んだ。


全員の。


私は少し振り返った。


白崎が立っていた。


彼女の表情は、もう慌てた様子ではなかった。


穏やかだ。


だが、何かが違う。


「……騒がしいわ」と彼女は優しく言った。


「…えっ?」男の一人がまばたきをした。「白崎さん、僕たちただ――」


「…それに」彼女は続けた。


「…あなたたち、何かを誤解しているわ」


沈黙。


「…高橋くんは何も悪いことなんてしていないわ」



それで彼らは黙り込んだ。


完全に。


「…たまたま一緒に歩いていただけ」と彼女は付け加えた。


「……それに、彼を私の家に勉強しに来るよう誘ったのは私よ」


少しの間が空いた。


「……待って」


「……えっっっ?!」


彼らは皆、互いに囁き始めた。


「……彼女の家で……?」


「……彼が彼女の家に行ったの?!」


「……まさか……」


「……この男が……?!」


「…なんで?どうやって?」


彼女の視線が、一瞬だけ私の方へ向けられた。


そしてまた彼らの方へ戻った。


「…だから、彼にそんなふうに詰め寄らないで」


「…僕たちはそんなこと…」


「…したわよ」と彼女は静かに言った。


怒りはない。


声を荒げることもない。


だが、断固とした口調だ。


「…彼にとって気まずいんだから」


それで決まりだった。


「……あ、ああ……ごめん……」


「そういう意味じゃなかったんだ……」


「うん、ただ冗談で……」


一人、また一人と――


彼らは引き下がっていった。


ぶつぶつと呟きながら。


私たちの間をちらちらと見比べながら。


「……ありえない……」


「……やっぱりわけがわからない……」


「……ラッキーな奴だな……」


人だかりはゆっくりと散っていった。


騒ぎは収まった。


元通りになった。


ほぼ。



私は息を吐いた。


「…ありがとう、白崎さん」


「…いいのよ」と彼女は静かに答えた。


「…困ってるみたいだったよ」


「あの…白崎さん…」


「ん?」


「…たとえ挑戦だったとしても…」


私の声は次第に小さくなった。


「…僕が言ったこと…」


彼女はまばたきをした。


「…そう?」


今度はしっかりと彼女を見つめた。


「…あれは、実は本当だったんだ。」



沈黙。


「…僕は」


彼女の目がわずかに見開かれた。


そして――


彼女の顔がまた赤くなった。


あっという間に。


「…た、高橋さん……」


その時、私は気づいた。


やばい。


「待って――違う――その、全部じゃないんだ!!――」


「え?」


「その……例えば……字がきれいとか……あと……人に優しいとか……あと……あと……」


自分で自分の首を絞めている。


「……あと……えっと……ノートの書き方とか……あと……えっと……全体的な人柄とか……」


彼女は顔を完全に背けた。


「……そう……」


「……うん。」


「……それが……言いたかったこと……?」


「……そう。」


沈黙。


危険な沈黙。


「……高橋。」


「……うん?」


彼女は私を見なかった。


「……あなたは言葉が下手ね。」


「……分かってる。」


「……本当に下手。」


「……ごめん……」


短い沈黙。


「最初は、私…本当に…あなたが騙そうとしてるんだと…」


そして――


とても小さな声で――


「…バカ。」


「…え?」


私はまばたきをした。


「…何?」


まだ私を見ていない。


「…何でもない。」


「…絶対に何か言ったよ。」


「…言ってない。」


「……言ったよ。」


「……言ってない。」


「……言ったよ――」


「……授業に集中して。」


「……えっと……まだ授業は始まってないけど――」


「……高橋。」


「……は、はい?」


彼女はようやく私を一瞥した。


ほんの一瞬だけ。


まだ動揺している様子だった。


でも、今はそれ以外にも何かがあった。


「……ただ……そんなこと、軽々しく言わないで。」


「……?」


ほんの少しの間が空いた。


「……だって……」


彼女はためらった。


そしてまた視線をそらし、ごく小さな声で何かを言った。


「……影響があるから……」


「え?」


「何でもない……」




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