第2部:罰則が発効する
学校に近づくにつれて……
何かがおかしいと感じた。
いや――本当に、何かがおかしい。
最初は、ほんのわずかな気配だった。
こちらに向かって歩いてきた女の子が、突然足を止め……そして静かに道を譲った。
もう一人の女の子は、私の横を通り過ぎようとした瞬間、体を硬直させ――
そして、完全に進路を変えた。
「……?」
私は眉をひそめた。
すると、さらに気づいた。
前方の女子たちのグループが……
私が近づくと同時に、ばらばらに分かれていく。
まるで私が、彼女たちが触れたくない何かであるかのように。
いや――
近付きたくない何かであるかのように。
歩いていると、私の周りに小さな隙間ができ始めた。
見えない境界線。
誰もそれを越えようとはしない。
誰も近づこうとしない。
周囲の足音さえも……遠くに聞こえる。
まるで、人混みの中で孤立させられているかのように。
……一体全体……?
何人かの女の子が私を一瞥し――
すぐに目をそらした。
他の子たちは、それを隠そうともしなかった。
じっと見つめてきた。
冷たい視線。
警戒した視線。
嫌悪の視線。
一人の女の子が本能的に友人の腕を掴み、私の進路から引き離した。
別の娘は、私が通り過ぎる際に一歩後ずさった。まるで私が何かを仕掛けてくるかのように。
今、彼女たちの声が聞こえる。
ささやき声。
かすかだが、雑音をかき分けるほど鋭い。
「なんであの男子、白崎と一緒にいるの…?」
「…なんか怖いよね…?」
「あの人、なんか嫌な感じ…」
「近づかないで…」
胸が少し締め付けられた。
周囲の空気さえも重く感じられた。
まるで、もうここに居場所がないかのように。
そもそも、ここにいるべきではなかったかのように。
横をちらりと見た。
白崎はまだ私の隣を歩いていた……
だが、彼女でさえも、今、それを感じ取ったようだった。
彼女は距離に気づき、わずかに目を動かした。
視線。
私たちの周りに漂い始めた沈黙。
そして、その時、私ははっとした。
…待って。
ペナルティ。
…待って――まさか――
その瞬間――
私の目の前に半透明のスクリーンが現れた。
[背景キャラ#29に対する全女子の好感度が100減少しました]
やっぱり冗談じゃなかったんだ。
これ…
これがペナルティだったのか。
「これ、めっちゃおかしいよ……」
私は軽く拳を握りしめた。
何か手を打たないと…
白崎が怪しんでくる…
なんて変な状況なんだ…
その時、別の考えが頭をよぎった。
…待て。
「すべての女の子」…?
…それって、母や妹も含まれるってこと…?
画面が再びちらついた。
[好感度が極めて高いキャラクターは、大きな影響を受けません]
…ああ。
私は小さく息を吐いた。
そうか…それなら納得だ…
当然だ。
母と妹…
二人は僕のことをすごく愛してくれている…
そう簡単に影響を受けるはずがない。
「高橋くん?」
私は我に返った。
白崎が僕を見ていた。
「……高橋くん?」
「あ、はい、白崎さん!どうしました?」
彼女は少し首を傾げた。
「何考えてたの?いつもぼんやりしてるみたいだけど……」
彼女は微笑んだ。
僕は慌てた。
「え、えっと……ああ……ごめん……」
すると突然、彼女の表情がわずかに変わった。
「…なんか、ちょっと…変な感じがしない?」
彼女は辺りを見回した。
私の心臓がドキッと跳んだ。
「い、いや、そんなことないよ」と私は慌てて言い、平静を装った。「何が変なの?」
ちょっと待てよ……
白崎さんも……女の子だ。
だからシステムの影響は彼女にも及んでいるはずなのに――
でも……
朝、彼女はいつも通り私に話しかけてきた。
今だって……
彼女は私のすぐ横を歩いている。
ためらいもなく。
恐れることもなく。
……なぜ?
なぜ彼女は平気なんだ?
どうして彼女は――
その考えを言い終える前に――
誰かが突然、後ろから私にぶつかってきた。
「――ヒイイイ、レンッ!」
「……リク?!」
私は振り返った。
そこに彼がいた。
相変わらずの馬鹿げたニヤリとした笑み。
「あ、そうそう——白崎さん!こんにちはー!」
白崎は瞬きをしてから、小さく礼儀正しい微笑みを浮かべた。
「こんにちは、リ…リクくん。」
リクは突然、まばたきをした。
「…待って——僕の名前を知ってるの?」
彼は白崎を見た。
「レンが教えたの?」
白崎は軽く頷いた。
「うん……君たち、親友だよね?」
沈黙。
リクは固まった。
そして――
「マジかよ――レン、そんなこと言ったの?!」彼は叫んだ。「信じられない――泣いちゃう――人生で一番幸せな日だ――」
「あれは一度きりのことだったんだけど……」
リクはまるでそこが自分の居場所であるかのように、瞬く間に私たちの間に割り込んできた。
「うわ、うわ、うわ……これ、どういう状況なんだ?」彼は私たちを交互に見ながら言った。「レン……朝……女の子と……学校へ歩いて……? 夢か?」
「黙って」私は呟いた。
リクは身を乗り出し、私の顔をじっと見つめた。
「……お前は誰だ? 本物のレンはどこへやった?」
「俺は文字通り、ここにいるよ」
「いや、ありえない。本物のレンは人と関わるのを避けるんだ」
「……そんなことないよ――」
白崎は小さく笑った。
リクはすぐに彼女の方を向いた。
「ほら? もう君の前で嘘をついてるよ。これは危険だ」
「ち、ちょっと――!」
白崎は笑いをこらえようと、口元を軽く覆った。
「彼、そんなに悪い人じゃないと思うけど……」
「騙されないでよ」とリクは劇的な口調で言った。「こいつ、昔、ゲームで俺に負けたからって、丸3日間も俺を無視したんだぜ」
「あれはたった一度のことだし、それに君、チートしたでしょ!」
「俺はそれを『戦略』って呼んでるんだ」
「ネットでコンボを調べてたじゃない!」
「あれは『リサーチ』って言うんだ」
白崎はまたクスクスと笑った。
「……あなたたち、本当に仲がいいのね」
「残念ながら、そうね」と私は言った。
「『残念ながら』?」リクは胸を押さえた。「これだけのことを一緒に乗り越えてきたのに? 思い出も? 絆も?」
「どんな絆?」
「僕が君の社交生活を背負って歩いているってことさ」
「そんなこと頼んだ覚えはないわ」
「君には必要だったんだ」
「そんなこと——」
白崎はすっかり笑い転げていた。
「素敵だと思うわ……」彼女は優しく言った。「お二人、すごく仲が良いものね」
「ほらな?」リクは彼女を指差した。「彼女には分かってる。君も白崎さんから学ぶべきだよ」
「ああ、そうだね。」
リクはニヤリと笑った。
「それで、白崎さん」彼はさりげなく話を続けた。「レン君はあなたの家ではどうだった? 行儀は良かった? 数学はどれくらい得意なんだ?」
白崎は一瞬、固まった。
「…え、えっと……」
彼女の顔は少し赤くなった。
「あ、あの……役に立ってくれたわ……」
「おぉっ、役に立ったんだ?」リクは片眉を上げた。「どんな風に役に立ったの?」
「リク」
「うん、レン?」
「黙って」
「わかった、わかった」彼はくすくす笑った。
「あ、そうだ、ところで――」彼はシロサキを見ながら言った。「今日、この人が僕にご馳走してくれるんだ」
「……え?」
白崎はまばたきをして、私を見た。
私はため息をついた。
「……ああ。わかった。覚えてるよ。」
そして、私は小声でつぶやいた――
「でも、まだ朝食も食べてないのに……その前に何か食べないと……」
白崎は少し首を傾げた。
「……なんで彼にご馳走してるの?」
私が答えるより先に、リクが即座に口を開いた。
「だって俺は、感謝されるべき最高の友達だからさ」
私は彼を見た。
「……あ、待って」
彼はまばたきをした。
「言い忘れてたんだけど……」
「……何?」
「私たちの計画はうまくいかなかった。」
沈黙が流れた。
「……だから、今日はご褒美なしね」
「……待てよ――何だって?!」リクが叫んだ。「どういう意味だ?!俺は文字通りお前を救ったんだぞ――」
白崎は戸惑った様子で、私たちの間を見比べた。
「……救った……?」
私はため息をついた。
「……わかった、いいよ。説明してあげる」
私は気まずそうに頭の後ろをかいた。
「昨日……私が遅くなった時……ママに理由を聞かれたの」
白崎は少し身構えた。
「女の子の家にいたなんて、正直言えなかったし……」私はつぶやいた。「ママ、大騒ぎしただろうし」
リクは誇らしげに胸を張った。
「そこで俺の出番さ」
僕は彼を無視して話を続けた。
「だから、嘘をついて、リクの家にいたって言ったんだ。」
白崎はまばたきをした。
「…ああ。」
「そう」と僕は言った。「つまり、厳密に言えば、彼が僕を庇ってくれたわけだ。」
「厳密に?!」リクが食ってかかった。「俺が君を背負ったんだぞ!命を懸けたんだ!君のママは怖いんだぞ!」
「… 「怖くないよ。」
「俺の魂の奥底まで見透かされたんだぞ、レン。」
白崎はもう我慢できなくなった――
彼女は笑い出した。
「そ、そうか……」
リクは劇的な仕草で私を指差した。
「それなのに、この恩知らずは俺のタダ飯をキャンセルするなんて!」
「だって」と私は冷静に言った。「君の計画は失敗したから。」
「失敗?!」
僕は白崎を一瞥した。
「……今朝、彼女が僕の家に来たんだ。」
陸は固まった。
「……ああ。」
「そう」と僕は言った。「だから、その嘘は半日も持たなかったわけだ。」
白崎は少し気まずそうな顔をした。
「ただ、本を返しに来ただけなのに……」
「……そのせいで、俺たちの正体がバレちゃった」と、私はつぶやいた。
「そんなことないわ――!」彼女は慌てふためいた。
リクは突然、頭を抱えた。
「……もう終わりだ」
「何?」
「俺の名声……」彼は大げさに言った。「消えた。台無しだ。すべてを賭けて、結局は何も得られなかった……」
「何も賭けてなんかいないわ」
「お前の母さんに立ち向かったんだぞ!」
「……それは戦争じゃない」
「俺にとっては戦争だ」
白崎はまた笑った……だが、その表情はすぐに和らいだ。
「……ごめんなさい……」
僕たちは二人とも彼女を見た。
「わざと……台無しにしようとしたわけじゃないの」と彼女は静かに言った。「ただ本を返しに来ただけなのに……知らなかったの……」
私はすぐに首を振った。
「いや、いや――大丈夫だよ」
「ああ」とリクが付け加えた。「君のせいじゃない。こいつがパニックになって、俺を巻き込んだだけだ」
「……ねえ」
白崎はまだ少し不安そうな顔をしていた。
「……本当?」
「ああ、白崎さん」と私は小さな笑みを浮かべて言った。「気にしないで」
それから、私は一瞬言葉を切った。
「……その一方で……」
彼女は顔を上げた。
「僕の母さん、君のことをすごく気に入ってるみたいだよ」
「……え?」
彼女の顔は瞬く間に赤くなった。
リクはゆっくりと彼女の方を向いた。
「……おや?」
リクは少し身を乗り出し、大げさに囁いた――
「気をつけて。もし母さんが君を気に入りすぎたら、もう帰れなくなるかもしれないよ」
「リク」
「何? ただ言ってみただけだよ」
白崎は恥ずかしさを隠そうと、顔を少し覆った。
「……あなたたち、意地悪ね……」
「彼だけだよ」と私は即座に言った。
「裏切り者」
「あなたたち、本当に……すごいわね」
「ほら?」とリクが言った。「彼女だって同意してるじゃないか」
「そんなこと言ってないわ」
「言わん言わん」
「言ってないわ」
「……言ったわよ」
「……言ってない」
私たちが言い争っている間、白崎は優しく微笑んでいた。
そして、一瞬――
また、いつもの感覚に戻った。
だがその時――
リクの表情がわずかに変わった。
「……ん?」
彼は辺りを見回した。
一度。
そしてまた。
「…ねえ、レン」
「うん?」
「…なんか、ちょっと変な感じしない?」
心臓が飛び上がりそうになった。
「…変?どういう意味?」
「さあ……」彼は呟いた。「なんか……」
彼の視線が周囲をさまよった――
あの距離感。
あの視線。
ささやき声。
「えっと…いや…何もおかしくないよ…」と私は答えた。
すると突然――
彼はまた笑った。
「えっ、もしかして俺、考えすぎかな」
私は無理やり小さく笑った。
「うん…何もおかしくないと思うよ」
「…そうか」
彼の声には納得した様子がなかった。
彼の視線はさまよい続けていた。
観察している。
考えている。
すると突然――
彼は私の手首を掴んだ。
「……!」
「ねえ、白崎さん――先に教室に行ってて、僕たちは後で追いかけるから……」と、リクが突然言った。
「え……わかった。でも、あなたたち二人はどこへ――」
「おい、レン」と、彼は静かに言った。
彼の口調は完全に変わっていた。
「話がある。」
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