第5章 私を昇進させたシステム……そして、私を捕まえてしまった
第3話〜第5話は長めになってしまいましたが、今後は読みやすさを意識して、分量を調整していきます。
足が滑りそうになった。
よろめきながらも、なんとか顔面から地面に突っ伏すのを免れた。
「何だ、これは……?!」
私は急停止し、画面を凝視しながらショックで息を切らした。
画面はただそこに表示されたままだった。
全く動じることなく。
まるで、私を死の淵に追いやったことなどなかったかのように。
[未読通知37件]
[デイリークエスト利用可能]
[メインヒロインとの交流:過剰]
[必要なアクション:役割が更新されました]
「……ああ。」
私はまばたきをした。
「……そうだった。」
「……この端末。」
「すっかり忘れてた。」
その事実に、予想以上に強く胸を打たれた。
5時間のタイマー。
間違いなく切れていた。
「…絶妙なタイミングだな。」
「…俺を殺しかけたぞ。」
さらにメッセージが次々と表示された。
[ヒロイン好感度 +2]
[ヒロイン好感度 +1]
[ヒロイン好感度 +1]
[ヒロイン好感度 +2]
「……やめて。」
「……待って、待って、待って。」
私は目を細め、さらに通知がポップアップするのを眺めた。
好感度が上昇した。
一度。
二度。
三度。
そして、さらに何度も。
「……一体全体?」
私は画面を呆然と見つめ、理解しようとした。
「……まさか……私のすべてのやり取りがカウントされたって言うのか?」
「…白崎の私への好感度が、その回数分も上がったって言うの?!」
「…それって――」
「…ありえないよ。」
画面がもう一度点滅した。
新たな通知がポップアップした。
[ロール更新中…]
「…ロール更新?」
「…まさか、私が思ってるようなこと、やってないよね?」
[以前の役割:エキストラ #37]
[更新後の役割:エキストラ #29]
私は呆然として立ち尽くした。
「…#29?」
数秒間、それを凝視した。
「…待って。」
「…待って。」
「…まさか私が――」
「…昇進?」
それ以外の解釈のしようがなかった。
「…37位から29位へ…」
「…それは大幅な上昇だ」
「…ランクは一体何で決まるんだ?」
「…なんだか怖くなってきた」
「…このまま続いたら…」
「…どこまで上がるんだ?」
私はゆっくりと息を吐き出した。
「…いや。」
「…忘れてくれ。」
だって今――
私にはもっと大きな問題が山積みだった。
私は顔を上げた。
そして前を向いた。
私の家。
そしてその真前に立っていたのは――
「…彼女だ。」
母が玄関口に立っていた。
腕を組んで。
ただ待っている。
「…ああ。」
「……もう終わりだ。」
システムの画面が静かに閉じた。
まるで、それだけで十分すぎるほどのダメージを与えたかのように。
私は一歩踏み出した。
何度も何度も。
そのたびに、ますます気が進まなかった。
「……考えろ。」
「……何か言い訳を考えろ。」
「……何でもいいから。」
「……勉強してたんだ。」
「……まあ、それは本当だ。」
「……でも、どこで勉強してたの?」
「……女の子の家で。」
「……もういいわ。」
私はドアの前で立ち止まった。
「……遅かったわね。」
彼女の声の調子はとても穏やかだった。
あまりにも穏やかすぎる。
本当に、本当に穏やかすぎる。
「……えっと……」
私は無理やり笑顔を作った。
「……やあ、お母さん。」
彼女はただ私を見つめていた。
黙って。
警戒しながら。
細部まで分析するように。
「……どこに行ってたの?」
「……リクの家にいたんだ」と私は答えた。
すぐには反応がなかった。
「……何をしてたの?」
「勉強してた……数学」と私は答えた。「あと……えっと……アニメもちょっと見たよ。」
「…それが遅れた理由ね。」
沈黙。
彼女は私を見つめた。
警戒しながら。
「…ふむ…」
「…わかったわ。」
待って――
待てよ。なんでこんなに簡単なんだ?
でもその時――
「……あなたの話を確認するために、お友達に電話してみます」と彼女は淡々と答えた。
「……えっ、何だって?!」
「……どうして?何かあったの?何かおかしいみたいだけど」彼女は怪訝そうな顔をした。
「……あ、えっと……いや……何でもないよ」
彼女は携帯電話を取り出した。
番号をダイヤルした。
スピーカーモードにした。
もうダメだ。
「…出ないでくれ…」
「…絶対に出ないで!」
プツッ。
「もしもし、高橋さん?」電話の向こうからリクの声がした。
リクが電話に出た。
やった…さよなら…リク。会えてよかった。
「リク」と彼女は続けた。「レンは今日、君の家に行った?」
沈黙。
「…うん…」
「勉強してたんだ…二人で。」
その場で倒れそうになった。
やった!
それが私の親友だ!
でもその時――
母はかすかに微笑んだ。
それは不気味な微笑みだった。
「…そう」と母は言った。
そして――
「…どの単元を勉強してたの?」
死のような静寂。
完全な沈黙。
…ダメだ。
…いや、いや、いや。
…なんでこんなこと聞くんだ?
うちの母さんはIQ1000だ。
私はゆっくりと電話の方を見た。
まるで、テレパシーで彼に答えを送れるかのように。
________________________________________
リクの視点
「…どの単元…?」
脳がフリーズした。
やばい。
考えろ。
早く考えろ。
…ここにある選択肢は一つだけだ…
…もし間違えたら、彼は死ぬ。
…いや――俺たち二人とも死ぬ。
一瞬の沈黙。
「…数学」と俺は言った。
「…数学を勉強したんだ」
沈黙。
…うまくいくように。
…どうかうまくいってくれ!!!!!
________________________________________
再びレンの視点
「……ああ」
母はうなずいた。
「……数学か」
「……うん」
そうだ。
彼はやった。
やったぞ!!!
安堵のあまり、倒れそうになった。
だがその時――
母は急に私の方を向いた。
「……ちょっと待って。」「……どのアニメを見たの?」母が私に尋ねた。
……これと何の関係があるんだ?!
「お母さん」私はできるだけ平静を装って言った。「その名前で何をするつもり?」
「だって……あなた、アニメなんて見ないじゃない……」
「…名前を言え。」母は私を睨みつけた。
「…わかった。」
「『天使は悪魔の隣に住んでいる』を見たんだ。」と私は言った。
一瞬の沈黙が流れた。
そして…
「…わかったわ。」
母は再びスマホに向き直った。
「…リク。」
「…はい、高橋さん?」
「…どんなアニメを見てたの?」
これで間違いなく俺は死んだ。
________________________________________
リクの視点
「…アニメ?」
…ダメだ!
…待て、違う、違う、違う——
…あいつ、前に言ってた…
…あの恋愛アニメのこと——
…『天使は悪魔の隣に住んでいる』ってやつ。
…違う…
「『天使は悪魔の隣に住んでいる』だよ」と私は答えた。
やった!
完璧だ!
___________________________________
再びレンの視点:
沈黙。
そして……
「……わかった」
「……いいよ」
彼女は電話を切った。
ためらいもなく。
尋問は終わった……
切り抜けた。
本当に切り抜けた!
________________________________________
[僕とリクは親友だから、すごく離れていてもマインドリンクで会話してる!]
リク:おい…なんとか切り抜けたよ…
僕:ありがとう、兄弟!!!
リク:その「ありがとう」ってどういう意味だよ?お前のトラブルに巻き込んでしまって本当にごめん。
僕:あの質問に答える方法、他になかったんだ!
リク:……まあいいや、少なくとも逃げ出せたんだし。
僕:ああ、愛してるぜ、相棒!!
リク:ゲイだな。
僕:わかった、いいや、取り消す。
リク:えっと……明日、ランチおごってよ
私:……夢でも見てて。無理だわ――
リク:へえ、そう……じゃあ……高橋さん、あなたの愛息が女の子と――
私:わかったわかった! 明日ランチおごるから! 満足?
リク:うん! すごく!
私はゆっくりと息を吐いた。
「…危なかったな」
母がまた私をじっと見つめた。
「…次は、もっと早く帰ってきなさい」
「…は、はい」
「…もちろん」
「…お姉ちゃんが帰ってきたわ」と、母はまるで何気ない口調で言った。
私はまばたきをした。
「…ああ。」
「……ひかりが戻ってきたわ」と、母はまるで何気ない口調で言った。
沈黙。
「…え?」
「…えっ?!!?」
寝室へ駆け込み、ドアを勢いよく開けた。
「おいっ――!」
彼女はそこに立っていた。
私の机のそばで、
スケッチブックをぎゅっと握りしめて。
私のスケッチブックを。
「…何してるんだ?」と私は怒りを込めて尋ねた。
彼女はゆっくりと私の方を向くと、
そして、満面の笑みを浮かべた。
「…あら~」
「…これが、ずっと描いてたものか」
「…返せ!」私は素早く一歩踏み出した。
遅かった。
彼女はページをめくった。
「……わあ。」
「……本当に見事な出来ね。」
「……返せって言っただろ——」
素早く身をかわしながら、彼女は言った。
「……みんな女の子よ」と付け加え、またページをめくった。
「……髪型も服も、それぞれ違う女の子たち。」
顔を上げ、彼女は私をニヤリと笑った。
「…変態のお兄ちゃん」
「…おい――!」
「…ただのアニメの絵だよ!」私は言い返した。
「…で?」
「…それが普通なんだ! 男子高生にとっては!」
彼女は片眉を上げた。
「…本当に?」
「…そうだよ、普通だ!」
「……本当に?」
彼女は一ページを見せてくれた。
「……でも、それならなんでこれ、5時間もかけて描いたみたいに見えるの?」
「……だって、これ、すごく難しかったからさ」
リク:えっと……明日、ランチおごってよ
私:……夢でも見てて。無理だわ――
リク:へえ、そう……じゃあ……高橋さん、あなたの愛息が女の子と――
私:わかったわかった! 明日ランチおごるから! 満足?
リク:うん! すごく!
私はゆっくりと息を吐いた。
「…危なかったな」
母がまた私をじっと見つめた。
「…次は、もっと早く帰ってきなさい」
「…は、はい」
「…もちろん」
「…お姉ちゃんが帰ってきたわ」と、母はまるで何気ない口調で言った。
私はまばたきをした。
「…ああ。」
「…ところで、お姉ちゃんがあなたの部屋にいるわよ。」
沈黙。
「…え?」
「…えっ?!!?」
寝室へ駆け込み、ドアを勢いよく開けた。
「おいっ――!」
彼女はそこに立っていた。
私の机のそばで、
スケッチブックをぎゅっと握りしめて。
私のスケッチブックを。
「…何してるんだ?」と私は怒りを込めて尋ねた。
彼女はゆっくりと私の方を向くと、
そして、満面の笑みを浮かべた。
「…あら~」
「…これが、ずっと描いてたものか」
「…返せ!」私は素早く一歩踏み出した。
遅かった。
彼女はページをめくった。
「……わあ。」
「……本当に見事な出来ね。」
「……返せって言っただろ——」
素早く身をかわしながら、彼女は言った。
「……みんな女の子よ」と付け加え、またページをめくった。
「……髪型も服も、それぞれ違う女の子たち。」
顔を上げ、彼女は私をニヤリと笑った。
「…変態のお兄ちゃん」
「…おい――!」
「…ただのアニメの絵だよ!」私は言い返した。
「…で?」
「…それが普通なんだ! 男子高生にとっては!」
彼女は片眉を上げた。
「…本当に?」
「…そうだよ、普通だ!」
「……本当に?」
彼女は一ページを見せてくれた。
「……でも、それならなんでこれ、5時間もかけて描いたみたいに見えるの?」
「…だって、これ描くの難しかったんだもん!」
「…細かいところが怪しいわね」
「…それって一体どういう意味なのよ?!」
彼女は本を人質にしたまま、近づいてきた。
「…それで…」
彼女は首をかしげて、さらに顔を近づけた。
「… 「あなたのタイプは?」
「…みんな… いや、誰もじゃない!!」
「…嘘つき。」
彼女はいくつかのページを見せてくれた。
「…ロングヘア… ショートヘア… シャイなタイプ… 明るいタイプ…」
彼女は私を振り返った。
「…明らかに、前もって考えてたでしょ。」
「…でも、これはただの熱意なんだ!」
「…わかった…」
「…スケッチブック返して!」
彼女は笑いながら背を向け、スケッチブックをテーブルに戻した。
「…君の絵、悪くないよ。」
「…何?」
「…実は結構上手いよ。この絵で女の子を魅了できるかも。」彼女はさりげなく言った。
「…女の子を魅了する必要なんてない。」
「…えっ、マジで~~~?」
彼女は振り返った。
「…じゃあ、一生独身でいるつもり?」
「…それはお前の知ったことじゃない!!」
「…かわいそうなお兄ちゃん。」
「…ほら! さっきの取り消す!」
「……あなたは妹を溺愛するタイプね」と、彼女は私の胸を突いた。
「教えて、お兄ちゃん……私の体、魅力的だと思う? 妹コンプレックスがあっても構わないわよ」と、彼女はからかうように言った。
「君のは小さすぎる……あんなに小さいものを持っている人に妹コンプレックスなんて抱けないよ」
「……つまり、私のおっぱいがもっと大きかったら、私に惚れてたってこと?この変態……えっ……今、何て言ったの?!」
僕は大笑いした。
彼女は僕に飛びかかって、殴ろうとした。「このバカな兄ちゃん!!!このアホ!よくも私のものが小さいなんて言えるわね?!」
「…もういい、もういいよ。『痛っ、妹ちゃん、パンチがどんどん強くなってるね』」と、僕はニヤリと笑って言った。
「大嫌い…」彼女は僕を殴り損ねると、そう言った。
「…からかってるだけだよ」僕はただ彼女に微笑みかけた。
すると彼女は突然、僕に抱きついてきた。
「お兄ちゃん、会いたかった…」
「えっと… 「ふむ…おかえり」僕は彼女の頭を撫でた。
「…まあ、おじいちゃんの家じゃちょっと退屈だったけど、それでも楽しかったよ」
「ちゃんと行儀よくしてた?」
「うん、したよ…あ、そうそう、おばあちゃんにチョコレートをいっぱいもらったの!ママには内緒…全部食べさせてもらえないから」
「うん…一気に全部食べちゃダメだよ」
「うん、うん」彼女はそう言いながら腕を引っ込めた。
「そうしないと虫歯になって、歯医者に行かなきゃいけなくなるよ」
「いやぁ~歯医者には行きたくない!」彼女は立ち上がりながら言った。
「じゃあ、チョコレートを少し分けてよ……」と、私は期待を込めて言った。
「……いや、あんたには何もあげないよ、ダメな兄ちゃん!」
「ママ!!ヒカリがチョコレートを持ってるよ――」
「あんた! もう、いいわ、少しあげるわ。」
「いい子だね。」
「うるさい。」彼女はそう言うと、私の部屋から出て行った。
…このカオスな状況が、なんだか普通だ。私は微笑んだ。
お風呂に入って夕食を済ませ、母と父、そしてヒカリに「おやすみ」と告げて、まっすぐ自分の部屋へ戻った。
ドアを閉めると、私は深く息を吐き出し、ベッドに倒れ込んだ。
「…なんという一日だ。」
頭はまだ、今日起きたことすべてを整理しきれていなかった。
システム。
白崎さん。
愛情。
「……本当に疲れた。」
数秒間、天井を見つめながら横になっていた。
すると――
ちらつき。
「……まただ。」
目の前に青い画面が現れた。
招かれざる客。
望まれない存在。
[現在の役割:脇役 #29]
「……#29か……」
私は黙ってそれを見つめた。
「……これが一体どういう意味なのか、まだよく分からないな」
「…これは良いことなのか?」
「…それとも…単に…マシなだけ?」
画面はしばらく静止したままだった。
そして――
変化した。
[デイリークエスト未達成]
[ペナルティ発動]
「…え?」
私は少し体を起こした。
「…待って。」
「……ペナルティ?」
もう一行が表示された。
[好感度マイナス適用]
「……それ、良くないな。」
「……全然良くない。」
そして――
次の行が表示された。
[全女性ターゲット:好感度-100]
沈黙。
「……何?」
「……一体どういう意味だ?」
「……すべての女の子?」
「……-100?!」
「……正気じゃない。」
私は画面を睨みつけた。
「……冗談だろ。」
「……そんなの普通じゃない。」
まるで私の考えに応えるかのように――
新たな一行が表示された。
[ペナルティは明日の朝から発効]
「…明日の朝から…?」
「…まだ始まってないってこと?」
「…最高だ。」
「…つまり、先取りで苦しむってことか。」
私はゆっくりと息を吐き出し、ベッドに倒れ込んだ。
「…これはまずい。」
「…本当にまずい。」
「…でも…」
私は少し首を回し、再び天井を見つめた。
「…もしこれが全部…何でもないことだったら?」
「…つまり…」
「…このシステムが突然、どこからともなく現れたんだ。」
「……意味が分からない。」
「……好感度を計測する?」
「……役割を与える?」
「……ペナルティ?」
私は軽く鼻で笑った。
「……はあ、そうかい。」
「……こんなものが現実の生活に影響を与えるなんてありえない。」
「……たぶん、ただの……」
「……何かの幻覚なんだろう。」
「……それとも、私が考えすぎなだけなのかも」
私は目を閉じた。
「……その通り」
「……きっとそうなんだ」
「……明日はいつも通りになる」
「……すべてが元通りになる」
「…このペナルティってやつ…」
「…実際には何の影響もないはず。」
少しの間が空いた。
「…だよね?」
沈黙。
「…うん。」
「…そうだね。」
私は横を向いて、毛布を少し引き寄せた。
「…うっ…」
「…頭が爆発しそうだ。」
「…もう考えるのはやめる。」
「……寝る。」
そうして――
私は目を閉じた。
自分に言い聞かせるように――
明日はただの普通の一日だと。
信じてくれ……
そうじゃなかった。
翌朝――
少なくとも、朝のはずだった――
何かが私を揺さぶるのを感じた。
「起きろ。」
「…ううっ…」
「起きなさい。」
「…あと5分だけ…」
鋭い指先が私の額を弾いた。
「痛いっ!」
私は飛び起きた。
「…何でそんなことするの?!」
母が腕を組んで、ベッドの横に立っていた。
「あなたの友達が会いに来たのよ。」
「…友達…?」
まだ半分寝ぼけたまま、目をこすった。
「…こんなに早く…?」
母は私をじっと見つめた。
「…早くないわよ。」
「…もう登校時間だよ。」
「…ちゃんと時間通りに学校に着く生徒たちは、もう準備を始めているわ。」
一瞬の沈黙。
それから母は淡々と言い放った――
「……でも、あなたはいつも遅刻するわね」
「……はあ」
「……ねえ――」
「とにかく」と母は私の言葉を遮り、「ドアのところへ行きなさい」
「……彼女を待たせないで」
沈黙。
「……彼女?!」
待て。
頭が真っ白になった。
僕に女友達なんていないのに……
嫌な予感がよぎった。
ゆっくりと――
ベッドから起き上がり、階下へ降りた。
まだパジャマ姿のまま。
髪はボサボサ。
「……変な話じゃないといいけど」
ドアを開けた。
そして――
私は固まった。
「……え?」
そこに立っていたのは――
きちんとした制服姿で。
落ち着いていて。
動じることなく。
こんな出会いを果たすには、あまりにも早すぎる時間に――
白崎だった。
「……待って」
「……待って――」
「シ、白崎さん?!」
私の声はひっくり返った。
「な…何でここにいるの?!」
私は慌てて手で髪を整えようとした。
なんで今、こんなことになってるんだ――
彼女は瞬きをした。
そして――
彼女の顔に、かすかな赤みが差した。
「…起きたばかり?」彼女は優しく尋ね、小さな笑い声を漏らした。
「…あ、ああ…そうだよ…」
「僕は…朝が弱いんだ…」
私が立ち直る間もなく――
パチン。
「痛い――!」
母が背後から現れ、私の頭をツンと突いた。
「そうよ、そうよ、あの子はいつも遅刻しちゃうの」と母は言った。
「……お母さん――」
「彼女を見習いなさい」
「彼女はもう登校の準備ができていて、早くここに来ていたのよ」
「……せめてまともな学生らしく振る舞おうよ」
「……ああ、わかったよ」と私は呟いた。
私は白崎の方へ振り返った。
残っていた尊厳を少しでも取り戻そうと。
「……あの……白崎さん……」
「……何か用?」
彼女は軽く頷いた。
そして何かを差し出した。
「……これ」
「……昨日、本を忘れたでしょ」
「……うちで勉強してた時ね。」
沈黙。
母が口を開いた。
「……ちょっと待って。」
「……何?!」
私は凍りついた。
完全に。
もう終わりだ。
ここまで私の物語を読んでくれた皆さん、ありがとう。
いい思い出だった。
皆さんのことは忘れない。
……もしかしたら、あの世でまた会えるかもしれない。
ご安心ください。レンはどこにも行きません。彼の物語はこれから展開していきます。これはまだ始まりに過ぎません。ぜひ読み続けてください!!!ありがとうございます!!!




