第2部 : 日常のひとときへ
更新が遅れてしまいすみません!
少し体調を崩していましたが、ようやく回復してきました。待っていてくれた方、本当にありがとうございます。またこれから頑張って更新していきますのでよろしくお願いします!
翌朝――
久しぶりに、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
数秒間、天井をじっと見つめた。
通知はない。
警告もない。
突然のクエストもない。
ただ、朝が訪れているだけだ。
ゆっくりと体を起こした。
そして、思い出した。
昨日のこと。
白崎さん。
あの会話。
僕の過去。
あの抱擁。
彼女の温もり。
僕が去る前に、彼女が僕の手を握ってくれたあの感触。
気づく前に、僕の顔に小さな笑みが浮かんでいた。
「……」
僕は慌てて顔をこすった。
「……なんで笑ってるんだ?」
そして、その翌日、大騒動が始まる――
教室に入ると――
「……なんだか……すっきりしてるね」
私は足を止めた。
「……おはよう」
リクはすでに席についていた。
私は準備に少し手間取ってしまい、
みんなは私より先に到着していたのだ。
彼は目を細めた。
「……いや、マジで」
「……怪しい顔してる」
私はカバンを置いた。
「……変なこと言うなよ」
「……寝たんだ」
私は固まった。
「……何?」
「……寝たんだ」
「……どうして知ってるの!?」
リクは、私が想像しうる限り最も馬鹿げた質問をしたかのような目で私を見た。
「……だって、今日は命がけで戦ってるような顔をしてないから」
「……それ、褒め言葉じゃないよ」
「……褒めるつもりじゃなかったし」
私が返事を返す前に――
「高橋くん」
私は顔を上げた。
白崎さんがちょうど教室に入ってきたところだった。
一瞬、私たちの視線が合った。
すると彼女は微笑んだ。
「……おはよう」
「……おはよう、白崎さん」
なぜか、私たち二人ともすぐに目をそらさなかった。
残念ながら――
リクはすべてを見ていた。
当然だ。
「……面白いな」
「……やめて」
「……何も言ってないよ」
「……顔が言ってるよ」
彼が言葉を続ける前に――
教室のドアが開いた。
見慣れた金髪の少女が入ってきた。
そしてすぐに僕を見つけた。
「……レン」
僕はため息をついた。
「……おはよう、アイ」
彼女はためらうことなく近づいてきた。
すると突然、足を止めた。
目を細めて。
「……まさか……昨夜、寝たのかよ???」
私は彼女をじっと見つめた。
それからリクを。
そしてまた彼女を。
「……あなたたち、どうしたのよ?!」
アイはまばたきをした。
「……ん?」
「……なんでみんな知ってるのよ?!」
「……だって、明らかだから。」
「……そんなこと、明らかじゃないわ!」
「……明らかだよ。」
「……違うわ。」
「……明らかだよ。」
「……お互いに同調するなよ。」
リクは頷いた。
「……ありえない。」
「……裏切り者。」
「……最初から君の味方なんかじゃなかったよ。」
近くのクラスメート数人が笑った。
白崎さんさえも、慌てて目をそらした。
アイは首を傾げた。
まだ僕を見つめている。
「……もっと笑ってるよ」
僕はまばたきをした。
「……そうかな?」
「……うん」
「……いや、笑ってないよ」
「……笑ってるよ」
「……やめて。」
「……いや。」
私はうめいた。
チャイムが鳴った。
それ以上いじめられるのを救ってくれた。
そう思った。
席に着くと――
見慣れた青い画面が突然現れた。
私はそれを一瞬見つめた。
そしてため息をついた。
「……ああ。」
当然だ。
安らかな睡眠の記録は、正式に終了した。
私は少し背もたれに寄りかかった。
まあいいか……
今日のナンセンスなクエストは何だ?
画面がちらついた。
デイリークエスト1:大切な人と過ごす
デイリークエスト2:大切な思い出を振り返る
デイリークエスト3:幸せな思い出を作る
「……」
私は三つのクエストをじっと見つめた。
それから天井を。
そしてまたクエストを。
「……これらは全部つながってる。」
私は小声で呟いた。
怪しいほどにつながっている。
大切な人と過ごす。
大切な思い出を振り返る。
幸せな思い出を作る。
つまり……
システムは私に誰かと過ごすことを求めている。
画面が再びちらついた。
そしてすぐに――
私の表情が曇った。
「大切な人を選んでください」
「……」
「……」
「……くそっ!」
またかよ!
神様、このシステムから私を救ってください!!!
リストがゆっくりと現れた。
名前。
顔。
私の身近な人たち。
そして、考えもせずに――
私の視線はすぐに一つの名前に向かった。
白崎葵
私は動きを止めた。
昨日の記憶が自然と蘇った。
アパート。
ピザ。
会話。
抱擁。
彼女が耳を傾けてくれたこと。
彼女がそばにいてくれたこと。
指が動こうとした。
あと少しで。
それから、クエスト画面を見返した。
大切な人と過ごす。
大切な思い出を振り返る。
幸せな思い出を作る。
少し考えた。
大切な思い出……
それなら簡単だ。
子供の頃の思い出のほとんど――
良い思い出のほとんど――
には、アイがいた。
星ノ宮の緑の野原。
バカみたいに走り回ったこと。
迷子になったこと。
日が沈むまで遊ぶこと。
一緒に叱られること。
頭に浮かぶ思い出のほとんど――
そこに彼女はいた。
そして二つ目のクエスト。
大切な人と過ごす。
教室の入り口の方へ目を向けた。
今、アイは中村と、全く意味のないことで言い争っていた。
いつものことだ。
そしてなぜか――
その光景を見て、私は微笑んでしまった。
ああ。
答えは明らかだった。
白崎さん……
今、私の心が傾いているのは、おそらく彼女だろう。
その気づきだけで、私は一瞬、固まってしまった。
「……この……感情は……」
そして、私はすぐにその考えから目を背けた。
でも、今日のクエストは?
間違いなく、アイのためのものだ。
私は選択ボタンを押した。
選択:立花愛里
画面が消えた。
「……」
私は頬杖をついた。
どうか、この選択を後悔させないで。
私の声を聞いたかのように――
部屋の向こう側から、愛が突然私を指差した。
「……レン」
「……何?」
「……今、失礼なことを考えたね」
「……それって、どうやってわかるの?」
「……幼なじみの直感だよ」
「……そんなのありえないよ」
「……あるよ」
「……もうダメだ」
中村はうなずいた。
「……そうだね」
「……なんで彼女に同意してるの?」
「……だって、彼女の言う通りだから。」
今日学校に来たことを、すぐに後悔した。
それから、いつものように通常の授業が始まった――
アイリの視点:
……彼が笑っている。
その考えが、本来あるべきよりもずっと長く、私の頭から離れなかった。
私の視線は、また前の席へと向かった。
レンは葵と話をしていた。
別に変わったことじゃない。
ただの普通の会話だ。
それでもなぜか……
目が離せなかった。
数ヶ月前なら、レンが笑っているのを見るのは当たり前だった。
あの頃の彼は、いつも走り回っていた。
いつも笑っていた。
いつも話していた。
いつも、その日思いついた馬鹿げたことに私を巻き込んでいた。
私の記憶にあるレンは、明るかった。
うるさくて。
騒がしくて。
どうしようもなく元気いっぱいだった。
今、私の目の前にいるレンは……
違っていた。
悪い意味ではない。
ただ……
違っていた。
あれから何年も経って、彼と葵に再会した時、私はとても幸せだった。
馬鹿みたいに幸せだった。
今でも、それを思い出すと胸が温かくなる。
私は彼を見つけ出したのだ。
幼い頃、多くの時間を共に過ごしたあの少年を。
私が……
……
頬が少し熱くなった。
いや。
否定しても意味がない。
自分自身に対して。
もう、そんなことはしない。
私は視線を下げた。
私はまだ彼を愛している。
その思いは驚くほど自然に湧き上がった。
ずっとそうだった。
私の顔に、小さな笑みが浮かんだ。
彼がどんなに変わっても……
どんなに時間が経っても……
私はまだ彼を愛している。
その気持ちだけは、一度も変わらなかった。
一度たりとも。
それでも……
私は再び視線を上げた。
レンは、アオイの何かに応じて、小さく笑った。
そしてアオイも、それに応えて微笑んだ。
その光景が、私の胸の奥で何かを揺さぶった。
居心地の悪い何か。
自分でもよく理解できない何か。
だって、今レンが見せているその笑顔は……
今までとは違うように感じられたから。
子供の頃の、あの無邪気な笑顔でもなかった。
最近彼が浮かべていた、疲れたような笑顔でもなかった。
それは……
もっと軽やかで。
自然で。
そしてなぜか……
その笑顔を引き出しているのは、自分ではないような気がした。
ペンを握る指が、わずかに強まった。
昨日、何があったのだろう?
私にはわからなかった。
そしてなぜか……
それが気にかかった。
とても。
だって最近、レンと一緒にいるときはいつも……
二人の間に、見えない距離があるような気がしたから。
物理的な距離じゃない。
私は相変わらず彼の腕を握っていた。
相変わらず毎日彼と話していた。
できる限り彼の隣に座っていた。
でも時々……
彼がどこか遠くを見つめているような気がした。
私が届かないどこかへ。
そして今――
彼が葵とあんなに自然に笑っているのを見て……
その感覚がさらに強まった。
私は……
嫉妬していた……
まさか……
いや、だからといって葵が嫌いってわけじゃない……違う。
実のところ、彼女のこと大好きだ。
何しろ彼女も、私にとって大切な幼なじみなんだから。
ただ……
……彼ともっと一緒にいたい。
その思いが自然と湧き上がってきた。
彼が何を考えているのか知りたい。
昨日何があったのか知りたい。
私は……
私の視線が和らいだ。
彼にも、私と一緒にあんな風に笑ってほしい。
「……」
私はその考えから素早く目を背けた。
顔が熱くなった。
だって、レンがどんなに変わっても……
私はまだ……
「……立花さん」
私はまばたきをした。
「……ん?」
私は少し振り返った。
リクが横から私を見ていた。
表情は無表情。
でも、その目は……鋭い。
「……またやってる。」
私は眉をひそめた。
「……何を?」
彼は少し前方に首を傾げた。
「……前の席をじっと見てる。」
一瞬、体が固まった。
「……そんなことしてない。」
即座の返答。
早すぎる。
リクはため息をついた。
「……やってたよ。」
私はすぐにまた前を向いた。
「……やってないよ。」
「……やってた。」
「……繰り返さないで。」
「……なら、やめるんだ。」
私はまた舌打ちをした。
「……うざい。」
「……バレバレだよ。」
私は少し目を細めた。
「…そんなことないわ」
リクは椅子に背もたれかけた。
「…十七回」
私は固まった。
「…何?」
彼は私を一瞥した。
「…君、レンと白崎さんを十七回見てた」
ペンを握る手が強くなった。
「…なんで数えてるの?!」
「……退屈だったから。」
私は彼を睨みつけた。
「……気持ち悪い。」
「……ありがとう。」
私は再び顔を背けた。
「……じろじろ見てなんかいない。」
沈黙。
リクはすぐには返事をしなかった。
そして――
「……レンのせいだろう?」
その言葉で、私の指が止まった。
ほんの一瞬。
ほんの一瞬だけ。
「…何?!」
私の声は、意図したよりも少し冷たく響いた。
リクは表情を変えなかった。
「…君、彼を見てるんだろ」
沈黙。
私は再び前を見た。
レンは白崎さんの言葉に、小さく笑っていた。
胸が少し締め付けられた。
「い、いや…そんなことない!」
私はもう一度言った。
今度はもっと小さな声で。
だが、リクはそれ以上追及してこなかった。
ただ、背もたれにもたれかかった。
「…そう言いたいなら、そう言っておけ。」
私は前を見つめた。
でも、もう黒板なんて見ていなかった。
レン……
また、思考がふらついた。
昨日。
今日。
彼のあの小さな変化。
彼の様子が……軽やかになっていたこと。
幸せそうだったこと。
そして、もう――
彼を笑顔にさせているのは、私だけじゃなくなったという事実。
私の目つきは少し和らいだ。
だが、ペンを握る手は緩まなかった。
「……バカ」
私は呟いた。
でも、それがリクのことを指しているのか、
それともレンのことを指しているのか、自分でもわからなかった。
レンの視点:
ようやくチャイムが鳴った。
授業がこんなに早く終わったなんて、気づかなかった。
それとも、ずっと気が散っていただけなのかもしれない。
生徒たちが鞄をまとめ始めたので、私は軽く伸びをした。
「……やっとか」
私は小声でつぶやいた。
すると――
頭の中でシステムが微かに点滅した。
私はため息をついた。
そう……クエストだ。
大切な人と過ごす。
大切な思い出を振り返る。
幸せな思い出を作る。
「…つまり、彼女と二人きりでいなきゃいけないってことか」
視線が自然と向いた。
アイ。
リクはドアのそばで、だらりと鞄を片付けていた。
「…今日はレストランのシフトがあるんだ」
アイが動きを止めた。
彼女は少し振り返った。
「…レストラン?」
リクは頷いた。
「……アルバイトだよ。」
アイは一度まばたきをした。
そして――
「……仕事してるの?」
リクは彼女をじっと見つめた。
「……うん。」
「……いつから?」
「……ずっと。」
「……仕事してる人には見えないけど。」
「……ありがとう?」
私は二人を眺めながら、静かにため息をついた。
アイは首を傾げた。
「…なんでレストラン?」
リクは肩をすくめた。
「…金。」
簡潔な答え。
アイは彼をもう一秒ほど見つめた。
それからゆっくりと頷いた。
「…へえ。」
リクは少しニヤリと笑った。
「…驚いた?」
「…ちょっと。」
「…立花さん、がっかりだよ。」
「……中村くん、私はがっかりしてないわ」
すると――
二人は同時に視線をそらした。
「二人、すごくお似合いのカップルになるわよ」私は笑った。
「ありえない!」二人は声を揃えて叫んだ。
リクは気だるそうに手を振った。
「……帰るよ」
そして、私を一瞥した。
「……帰り道で死なないようにね」
「……お前が先だ。」
「……死ぬつもりはないから。」
二人はニヤリと笑い、私は彼に手を振った。
そして彼は去っていった。
教室のドアの前で――
白崎さんはまだ中にいた。
机の上には生徒会の書類が広げられていた。
彼女は私に気づくと顔を上げた。
「……高橋くん。」
私は足を止めた。
彼女はノートを少し閉じた。
「……もう帰るの?」
「……うん」
私は頷いた。
短い沈黙。
それから――
私は頬を軽く掻いた。
「……待ってようか?」
白崎さんは瞬きをした。
「……待つ?」
彼女は机の上の書類を見た。
そして、そっと首を振った。
「……時間がかかるから。」
短い沈黙。
それから、もっと柔らかい口調で――
「……退屈しちゃうよ。」
僕は即座に答えた。
「……僕は退屈しないよ。」
その言葉に、彼女は一瞬言葉を詰まらせた。
それから、小さく、静かな笑みを浮かべた。
「……それでも。」
「……もう帰ったほうがいいよ。」
アイリが前に踏み出した。
「…… 「葵!!!」
白崎はまばたきをした。
「…ん?」
愛里は腕を組んだ。
「…残るつもり?」
「…生徒会の仕事。」
愛里は軽く舌打ちをした。
「…ふん。」
「…生徒会って残酷だね。」
白崎は優しく微笑んだ。
「…そんなにひどくないよ。」
愛里はすぐに首を振った。
「……そうよ。」
「……そんなことないよ。」
愛里は彼女をしばらく見つめた。
そしてため息をついた。
「……働きすぎだよ。」
白崎は少し目をそらした。
「……そうかも。」
沈黙。
そして――
愛里は突然、一歩近づいて彼女を抱きしめた。
軽く。
ためらいはなかった。
ただ、温かかった。
「……無理しないで。」
すると、彼女の肩の力が抜けた。
「……温かいね。」
アイリはまばたきをした。
「……そういうことじゃないの。」
白崎は小さく、柔らかく笑った。
「……わかってる。」
そして、一瞬だけ優しく抱擁を返した。
「……大丈夫だから。」
愛里は少し身を引いた。
「……そうね。」
白崎は微笑んだ。
「……うん、うん。」
私は静かにその様子を見ていた。
邪魔してはいけないような気がした。
愛里が私の方を向いた。
「……行こう。」
私は頷いた。
「……うん。」
私たちは歩き出した。
後ろで――
白崎が軽く手を振った。
「……また明日。」
「……うん。」
私は少し手を上げた。
「……またね。」
愛里も手を振った。
「……書類仕事に殺されないでね。」
白崎は微笑んだ。
「……大丈夫。」
そして私たちは教室を出た。
廊下を歩くのは、私とアイリだけ。
誰も話していない。
聞こえるのは足音だけ。
私の。
そして彼女の。
その音が、人影のない廊下に微かに響き渡る。
「……」
「……」
私たちは並んで歩き続けた。
急ぐこともない。
言葉もない。
ただ、二人の間に漂う、あの静かな親しみ。
もう気まずさを感じない、そんな親しみ。
廊下が途切れた。
校門が見えてきた。
外の空気は、何かが違う。
暖かくて。
軽やかで。
開放的だ。
私たちは一瞬立ち止まった。
私はアイリをちらりと見た。
そして視線をそらした。
「…ねえ」
彼女は少し振り返った。
「…ん?」
短い沈黙。
私は頬を掻いた。
「…今、時間ある?」
アイリはまばたきをした。
「…うん。」
僕は続けた。
「…見せてあげたいものがあるんだ。」
沈黙。
しばらくの間、彼女はただ僕を見つめていた。
まるで僕の表情を読み取ろうとしているかのように。
そして――
彼女の頬が、ほんのり赤くなった。
「…見せてくれるの?」
「…うん。」
アイリは少し目をそらした。
そしてまた私を見つめた。
「……いいよ。」
少しの間が空いた。
それから彼女はうなずいた。
「……うん……いいよ。」
彼女の顔に柔らかな笑みが浮かんだ。
「……いいよ。」
「じゃあ、行こう。」私も微笑み返した。
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