表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/30

第1部:隠された感情と過去の記憶

白崎の視点:


「……つまり、こいつが君を親友として奪ったってことか、ふん……」


愛里は高橋の袖を掴みながら、何気なく彼に身を寄せた。


肩が触れ合うほどに。


二人の間では、それがごく自然なことのように見えた。


そしてなぜか――


その光景に、私の胸が少し締め付けられた。


奇妙だった。


本当に奇妙だった。


だって、私は知っていたから。


もちろん、分かっていた。


二人は幼なじみだ。


私が彼に出会うずっと前から、互いを知り合っていた人たち。


何年もの思い出を共有してきた人たち。


だから、二人の間に漂うこの温もり――


この自然な親密さ――


当然のことのはずだった。


それでも――


アイリが何気なく彼に触れるたびに――


あるいは、ごく自然に「レン」と呼ぶたびに――


私の心の奥底で、何かが落ち着かなくなる。


まるで、胸の奥でゆっくりと広がる、小さな不快な痛みのように。


「……どうして……?」


みんなの話を聞きながら、私は優しく微笑んだ。


でも心の中では――


思考がごちゃごちゃしていた。


だって、高橋が彼女とあんな風に笑っているのを見て――


二人がどれほど自然に寄り添っているかを見て――


私はふと、あることに気づいたからだ。


愛里は、私が関わっていない記憶の中にいた。


私が彼と経験したことのない物語。


私が彼の人生に現れるずっと前から存在していた瞬間。


そしてなぜか――


その気づきが、一瞬だけ私を奇妙なほど遠くに感じさせた。


「…バカみたい……」私は静かに思った。


こんな風に感じる権利なんて私にはない。


愛理は彼にとって大切な人だ。


それは明らかだった。


それなのに、なぜ彼女が彼に近づくたびに、胸が少し痛むのだろう?


その時――


愛里はまた彼の方を見ながら、明るく微笑んだ。


「……実は……レン……」


「……ん?」


「……本当に覚えてないの?」


高橋は少し首を傾げた。


「……何を?」


愛里は瞬きをした。


「……葵、実は同じ――」


心臓が飛び上がりそうになった。


瞬時に――


私は立ち上がった。


「……あ、あ!」


彼女が言い終わる前に――


私はアイリの手をしっかりと掴んだ。


「……あの……アイリ……」


レンも中村も驚いた様子で私の方を見た。


私は慌てて笑顔を作った。


「……ちょっと、一緒に来てくれる?」


部屋を出た瞬間――


私は、ずっと止めていた息を静かに吐き出した。


「…葵?」


二人で階段を下りながら、愛理は困惑した表情で私を見つめた。


「…さっきは一体何だったの?」


「…ご、ごめん…」


私は無理やり小さな笑みを浮かべた。


「…ちょっとだけ、君を止めたくて…」


私たちは静かに台所に入った。


上の階から聞こえていた男子たちの声は、遠くでかすかに聞こえる程度になった。


すると愛理は軽く腕を組んだ。


「…わかった」


「…じゃあ、説明して」


私は少しうつむいた。


「…高橋くんには知られたくないの…」


「…何を?」


「…私が子供の頃、あなたたちと同じ近所に住んでいたってこと」


アイリはまばたきをした。


「…え?」


「…でも、レンならそれを聞いてきっと驚いて、喜ぶと思う」


「……それこそが理由なんだけど……」


「……ん?」


私は静かにためらった。


「……なんだか変な感じがする……」


アイリは少し首を傾げた。


「……どういう意味で変?」


「……だって……」


私は視線をそらした。


「……あの頃、まともに話したこともほとんどなかったし……それに……一度も顔を合わせたことさえなかったんだもの。」


「……たぶん……彼は……私が存在することさえ……知らなかっただろうし。」


私は弱々しく笑った。


「……だから、今になって急にその話を持ち出すのは、なんだか変な感じがして……」


アイリは一瞬、黙って私を見つめた。


そして――


彼女の表情がゆっくりと変わった。


「……待って……」


「……ん?」


「……どうして、私が話していた男の子がレンだって分かったの?」


私の心臓が少し跳ねた。


「……え……?」


「……私が名前を言い終わる前に、あなたが遮ったから」


「……それに、彼が近所のあの男の子だって、もう知っていたみたいだし……」


愛里は怪訝そうに目を細めた。


一瞬――


私は固まった。


そしてすぐに――


「……あ、あ、ただ当てただけ……」


「……当てた?」


「…小さい頃、あなた、高橋くんの話をよくしてたよね…」


アイリはまばたきをした。


「…え?」


「…彼がじっとしてくれないって、私に愚痴を言いに来てたじゃない…」


「…あちこち走り回って、みんなをトラブルに巻き込んでたって…」


思わず小さな笑みがこぼれた。


「…それで、次の日また彼と遊びに行ってたし…」


「…あ、あおい…」


「…それに、彼が危険なところに登って落ちてしまった時、その後もなぜか笑顔だったって、20分近くも話してたことあったよね…」


「…そんなこと思い出さないでよ—!」


彼女の顔はたちまち真っ赤になった。


私は静かに少し微笑んだ。


「…あの頃、本当に彼の話をよくしてたね…」


「…あ、あのは、彼がうざかったからよ!」


「……うん」


「……『うん』なんて言わないでよ——!」


アイリの顔は今や真っ赤だった。


だが、ゆっくりと――


その照れた表情が和らいでいく。


彼女の視線は、二階の天井へとわずかに向かった。


高橋がいる部屋の方へ。


そして、キッチンに入ってから初めて――


彼女の声は、より静かになった。


より率直に。


「……でも、彼は本当に変わったわね……」


私は黙って彼女を見つめた。


「……あの頃は、いつも騒がしかったわ……」


彼女の唇に、かすかな笑みが浮かんだ。


「……いつも走り回って……」


「……いつもみんなを巻き込んで……」


台所は静まり返った。


「……アイリ……」


彼女は小さく笑った。


弱々しい笑い声だった。


「……変よね……」


「……あれから何年も経つのに……」


彼女の指が、袖をわずかに強く握りしめた。


「……彼に再会した瞬間……」


少しの間が空いた。


「……心が、まるで……」


彼女は言葉を途中で止めた。


そしてすぐに視線をそらした。


「……ちっ……」


「……恥ずかしい……」


「……アイリ……」


一瞬――


彼女は黙り込んだ。


そして静かに――


まるで言葉がうっかりこぼれてしまったかのように――


「……う、うん……」


彼女の声はわずかに震えていた。


「……私……彼のこと、好き……」


私は思わず目を見開いた。


アイリ自身も、口に出して言ってから驚いたような表情を浮かべていた。


あんなにストレートに認めるつもりはなかったかのように。


一瞬――


僕は本当に息を止めた。


「……え……?」


愛理自身も固まってしまった。


そんな言葉が口をついて出るなんて予想していなかったかのように。


彼女の青い瞳がゆっくりと見開かれた。


「……あ……」


そしてすぐに――


彼女は慌てて視線をそらした。


「……待って、違う――」


「……その、つまり……」


「……うっ……」


彼女は慌てて顔の一部を隠した。


「……なんで今、そんなこと口に出しちゃったんだろう……」


僕はただ黙って彼女を見つめるしかなかった。


なぜか――


目の前にいる、いつも陽気でべったりな幼なじみが、急に違って見えたからだ。


もっと脆く。


もっと正直に。


台所には、気まずい沈黙が漂った。


すると、アイリは弱々しく笑った。


「……すごく恥ずかしい……」


「……アイリ……」


「……まだ誰にも言うつもりはなかったのに……」


彼女はぎこちなく微笑んだ。


「……でも、あれから何年も経ってまた彼に会ったら……」


彼女の指が袖を少し強く握りしめた。


「……予想以上に早く、あの気持ちが戻ってきてしまって……」


台所は再び静まり返った。


アイリはゆっくりと自分の手を見つめた。


そして、そっと――


「……たぶん……」


少しの間が空いた。


「……ずっと、彼のことが好きだったんだと思う」


私の胸が少し震えた。


「……あの頃も?」


彼女は静かに笑った。


「……うん……」


「……彼が私をイライラさせた時だって……」


彼女の唇に、また小さな笑みが浮かんだ。


「……彼がバカなことをした時だって……」


「……みんなを大騒ぎに巻き込んだ時だって……」


彼女の声はさらに優しくなった。


温かみを帯びて。


「……彼が笑うたびに……」


「……なぜか、彼の周りのすべてが明るくなる気がした……」


私は黙って聞いていた。


愛里は今、窓の方を見つめていた。


「……引っ越した後……」


「……そのうち彼のことは忘れるだろうと思っていた……」


彼女の口元から、かすかな笑いが漏れた。


「……でも、結局忘れられなかった……」


「……どこへ行っても……」


「……どれほど時間が経っても……」


彼女の瞳がわずかに柔らかくなった。


「……心のどこかに、レンはずっとそこにいた……」


空気が妙に重く感じられた。


感情がこもっている。


そしてゆっくりと――


アイリは再び微笑んだ。


今度は本物の笑顔だった。


「……そして突然……」


「……ここでまた彼に会えたの……」


彼女は信じられないというように、小さく笑った。


「……信じられないことよね……?」


「……まるで運命みたい……」


私は思わず息を呑んだ。


運命。


その一言が、胸の奥で痛々しく響いた。


なぜなら、今のアイリを見て――


彼女が今も抱き続けている長年の想いを見て――


彼と再会した後の、彼女の瞳に宿る幸せを見て――


胸の奥で何かが揺れ動いた。


心の奥底で、静かな声が囁いた。


…俺に…


…勝てるのか…


…運命そのものに…?





レンの視点に戻る:


「…で。」


リクは劇的に椅子に背もたれかけた。


「…君の幼なじみ、頭おかしいよ。」


俺は即座に笑った。


「…おい。」


「…いや、マジで。」


彼はドアの方を指差した。


「…さっきまで俺の部屋の掃除を手伝ってたかと思えば」


「…次の瞬間には、俺の存在そのものを言葉で攻撃しやがって。」


「…それ、まさにアイそのものだな。」


「…それに、なんであいつは俺を『ゴミ処理係』って呼び続けるんだ?!」


俺はさらに大笑いした。


「…まあ、それに関してはちょっと君のせいだけど。」


「…裏切り者。」


「…お前は文字通り、彼女に生物学的危険物を掃除させたんだぞ。」


「…そんなにひどくなかったよ。」


「…リク。」


「…まあ、ちょっとだけ悪かったかも。」


私は微笑みながら首を振った。


でも正直なところ――


今でも――


心のどこかで、まだ全てを完全に受け止めきれていなかった。


何年もぶりにアイと再会したこと。


突然、リクの家の中に彼女が立っているのを目にしたこと。


そしてなぜか――


彼女もシロサキさんのことを知っていたという事実。


「……マジでさ……」


信じられないというように、私は小さく笑った。


「……なんてクレイジーな偶然なんだ……」


「……ん?」


「……アイとシロサキさんが、まさかお互いを知っていたなんて、まだ信じられないよ……」


私は少し背もたれにもたれかかった。


「……本当に久しぶりだ……」


「……あの頃は、文字通り子供だった……」


一瞬――


ぼんやりとした昔の記憶が頭をよぎった。


夏の陽射し。


駆け抜ける足音。


私の名前を呼ぶ大きな声。


そして突然――


長い年月を経て、再び私の前に立つアイ。


今は大人になっている。


変わっている。


でも、どこか昔と変わらない。


「…… 正直、現実味がないな」と私は呟いた。


リクはしばらく静かに私を見つめていた。


そして、少しニヤリと笑った。


「…今日は妙に感情的だな」


「…黙れ」


「…いや、マジで」


彼は大げさに私を指差した。


「…この30分間で、先週一週間分よりも多く笑ってるぞ」


「…そんなことない」


「…その通りだよ」


私は小さく笑いながらため息をついた。


「…でも、彼女はすごく変わったよ」


「…ん?」


「…昔は、もっとすぐに怒ってたんだ」


「…それって、なんだか想像しづらいな」


「…信じてよ」


私は小さく笑った。


「…時間とともに、穏やかになったんだ」


それから、私は心の中で少し微笑んだ。


「……少なくとも、私の前ではね。」


リクは即座に大げさにうめき声を上げた。


「……ああ、そうか。」


彼はまたドアの方を指さした。


「……彼女は君にだけ優しいんだ!」


「……その間、俺は10分おきに生き残りをかけて戦ってるんだ。」


私は大笑いした。


「……たぶん、君が何かで彼女を怒らせたんだろう。」


「……ただ、俺がそこにいただけだ。」


「……なるほど、それで納得だ。」


「……お前もかよ?!」


私はさらに大笑いし、リクは劇的に椅子に後ろへ倒れ込んだ。


「……親友に裏切られた……」


「……スキルの問題だ。」


「……その言葉、もう使うなよ。」


それからしばらく笑い合った後――


私の笑顔は、またゆっくりと和らいだ。


「……それでも……」


私は静かにドアの方へ視線を向けた。


「……ああ……」


「……何しろ、彼女は僕にとって大切な幼なじみだからね」


それを聞いて、リクは静かに視線をそらした。


そして、少し間を置いて――


彼は突然、呟いた。


「……いいだろうな」


「…ん?」


彼は軽く肩をすくめた。


「…あんなに長い間、自分を理解してくれて……信頼を裏切らない人がいるってのは」


なぜか――


その言葉に、私の胸が少し締め付けられた。


リクがそう言ったことで――


ふと、別のことを思い出してしまったからだ。


居心地の悪い何かを。


私の表情が徐々に変わった。


「…ねえ…」


「…ん?」


「…さっきのシステムペナルティ、覚えてる…?」


リクは瞬きをした。


「…どれ?」


「…学校の女の子たちが急に無視し始めて、まるで犯罪者みたいに私を見るようになったやつ…」


「…ああ…」


私は少しうつむいた。


「……あの時、君がどんな気持ちだったか、なんとなく分かった気がする……」


「……あの頃……」


リクは黙り込んだ。


私は静かに続けた。


「……でも、僕には白崎さんと話すことができたし……」


「……彼女はペナルティの影響を受けなかったから……」


「……でも、君は……」


私は少し躊躇した。


「……君は、あのデマを一人で抱え込んで……」


「……レン」


リクはすぐに私の言葉を遮った。


彼の声は、いつもよりきっぱりとしていた。


「……今は自分の過去について話したくない」


一瞬――


私は少し固まった。


それから静かに――


「……わかった」


その後、部屋には沈黙が満ちた。


重苦しい沈黙が。


続きが気になる方は、ぜひブックマークしていただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ