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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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どーでもいーじゃん(7)


  ○   ○   ○   ○   ○   ○



「二人きりにして大丈夫だったの?」

「ハッ!宇野君と落合君の間でたいそうな喧嘩など起きるはずもなかろう。」


落合、宇野それぞれの部屋はルームメイトがいるため、

石川と上川は自分たち二人の部屋を、落合たちに譲ることにした。

食堂に残された二人がそうして思案を巡らせていると、

ちょうど夕食を食べ終わった織田直樹が、

我関せずという様子で、二人の横を通り過ぎようとした。


「あ、直樹ちょっと待って!」

「何だ?」


織田を止めたのは石川だった。

彼に対しては苦手意識のある上川の様子を気にかけつつも、

石川は単純に織田との距離を縮めるつもりで、ある提案をする。


「一緒にお風呂行かない?そんなこんなで俺たちも時間を潰さなきゃいけないみたいだし、どうせ行くなら一緒に行こうよ。」

「そうだな。行くか。」


「は、ハッ!君たちで勝手に行くが良い!神は風呂には行かん!そもそも神が庶民と一緒に風呂に入るなどという下賤で野蛮なことは」

「え、神様普通に汚いんだけど。じゃあいつもどうしてるの?」

「ハッ!……人間が去った頃に使うだけだ。」

「なんか恥ずかしいの?そういえば神様もゲイなんだっけ?でも別に誰も神様のこと興味ないから、裸を見ようって思わないと思うよ?」

「ハッ!普通に傷つくわ!」


石川と上川は愉快なやり取りを繰り広げるのだが、

織田はそれを、ただ無表情に眺めているだけであった。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



「あの……色々とすみません。なんかみんなで追求しすぎちゃって、うのぽんに迷惑をかけたみたいで……」


神様らの片付いた部屋に入り、とりあえず二つ椅子を拝借して、

腰掛けた途端に、俺は恒太に謝られた。

ただ謝るだけのために、俺とわざわざ二人で話がしたかったのだろうか?

そんなはずはないだろう。


「その割に、俺と話がしたいって事は、あんま納得してねーみたいじゃん。」

「……いえ……その……」


恒太が何をしたいのかが見えてこない。

目の前に居る煮え切らない恒太を見て、俺は徐々にイラつき始めていた。


「てかさ、俺の事なんてどーだっていーじゃん。何でそんなに気になるわけ?」

「それ!……それなんですけど……」


俺の質問とほぼ同時に、恒太に一瞬すごい勢いで切り返されて、少しひるんだ。

が、まだ沈黙は続いた。どうやら恒太の中でも考えはまとまっていないらしい。

一つため息をついて、室内を見渡した。

本棚に、神様は変な宗教の本ばかり、慎悟はサッカー雑誌ばかり、

偏ってる二人だなと思っていた所で、恒太は話を切り出した。


「あの……ずっと隠してたんですけど。」

「んー、何?」


「僕、中学校の頃……不良だったんですよね。」


まず俺は耳を疑った。いきなり何の冗談だ?

今もこうして、恒太はヘコヘコと頭を下げながら話している。

不良とかヤンキーなんて、恒太には一番似合わない言葉だった。


「兄弟仲があんまりよくなくて、その……グレちゃって。悪い友達作って、学校で暴れまわってました。犯罪には手は出してないんですけど……」

「……冗談じゃね?」

「冗談じゃないです。今こそこうして、僕は一応進学校に入りましたけど、中学の頃の僕には考えられない事でした。」


恒太は苦笑いをしながらも、どうやら冗談を言っているわけではなさそうだ。

……自分の言いたくない過去。隠していた理由は何となく分かるが、

何故そんな話を突然始めたのかは、まだ俺には見えていなかった。


「僕にとっては全ての悪い原因になってた家を、出ようと思って……それで、地元から遠くて、寮のあるバルガクを高校に選んだんです。自分の口調を隠すために、敬語まで使ってムリヤリキャラを変えて、最初は大変でした。」

「……なるほどじゃん。」

「去年、同じ部屋だった時に、菊池先輩には相談に乗ってもらったんですけど、自分が元不良だなんて黒歴史、誰にも知られたくなかったんです。特に……今僕と仲良くしてくださってる人たち……それに、達也さんには。」


菊池先輩にそこまで話していたとは驚きだったが、

誰にも話したくない、その気持ちは分かる気がしていた。

その時既に、恒太の話は自分の境遇と重なってきて、

恒太が何故こんな話を始めたのか、俺は悟り始めていた。


「……達也には言ってもいーんじゃね?そういう偏見ない奴だし、まっすぐだから認めてもらえるじゃん。」

「あ、僕は認めてもらいたいわけではないんですけど……うーん、まだ達也さんに話すのは勇気が足りないです……」

「ふーん……」


いつの間にか恒太の相談話のように聞こえてきたが、

恒太に言いながら、その言葉は自分にも返ってきている気がした。


そう、俺は……何が何でも、自分の過去を隠そうとしている。

出来ることなら、あの過去を消し去りたい、無かったことにしたい。

過去を捨てる思いで家を出たのは、恒太と全く同じだった。


恒太は俺がそんな思いを抱えている事に気づいているのではないか、

だから、こんな話を始めたのではないだろうか。

俺の抱いた疑念は、すぐに確信へと変わった。


「……だから、僕は無理にうのぽんから何かを訊きだそうと思っているわけでは無いんです。僕もそういう過去があって、興味本位に知られたいわけじゃないから、だから……うのぽんの気持ちも、分かるというか……」

「…………」

「あ、あの、おこがましいのは承知なんですけどね、僕なんかがうのぽんの何を分かったって言うんだろう、とは思いますが……」

「……別にいーよ。」


恒太に言葉を返しながら、俺は自分の決意を確認した。

それでも俺は、今の時点では、誰にも何も言うつもりはない。

……俺が抱えているものは、他人にとっては何の意味も持たない。

辛い思いを積極的に共有しようなんて、バカげてる。

恒太みたいな良い奴だからこそ……俺の事を心配なんて、して欲しくないんだ。


「……でもすみません、もう一つ、おこがましい事を言わせてください。」

「……何?」


恒太はそう言ったかと思うと、大きく息を吸い込んだ。

そしてすぐ、いつもの自信なさげな表情はどこかへ行ってしまった。

額にはシワが寄り、目つきは悪く、拳を固く握りしめて、

それからゆっくりと、思いを口にした。


「……どーでもいい、とか言ってんじゃねえよ。」

「え?」


「俺の事なんてどーでもいいとか言って、俺たちが剛司の事をどう思うかまで、お前が全部決めてんじゃねえっつってんだよ!」


恒太はさらに声を荒げた。



「俺らはダチなんじゃねえのかよ!!ちったぁ頼りやがれ!!」


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