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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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どーでもいーじゃん(6)


何の変哲もないある日の部活後。

そこからさらに自主練をしてから帰り、また門限ギリギリに寮に到着した。

最近はこうして、ギリギリに寮へ帰り、ほとんど一人でご飯を食べる。

しばらく、寮で恒太や神様の顔を見ていない。


今日はさすがに誰も居ないだろう、と食堂のドアを開けると、

そこには一人黙々とチャーハンを食べる織田直樹がいた。

遠い目をしている織田に近づくのはためらわれたが、

俺も自分の夕食を受け取ってから、織田の向かいの席を陣取った。


「ハロハロー。直樹君も遅いんだね。」

「ああ。」


そういえばあまり二人きりで話したことはなかったかもしれない。

ぶっきらぼうに反応して、後は黙々と自分の食事を進める織田を見れば、

恒太の言っていた「話しづらさ」の意味がよく分かる。


「体育祭は大活躍だったじゃん。」

「そうか?」

「全部勝ったんじゃね?」

「俺はそれが当たり前だからな。」


もはや嫌味にすら聞こえないほど、

織田は表情を変えずに、俺のラーメンを見ながら言った。

完璧人間の織田に対して、俺は少しだけ、意地悪をしたくなった。


「それだと、達成感みたいなのってないんじゃね?」

「無いな。まず俺には感情が無いからな。」

「ふーん。じゃあ『奇跡の子』は、努力なんてのも縁がない話じゃん。」


と、ひねくれた言い方で織田に迫ると、

急に織田は冷めた目で、俺の方をじっと見つめた。


「何も努力をしてないと思うか?『奇跡の子』はみんな、生まれた時から奇跡を起こせたわけじゃないぞ。」

「俺は『奇跡の子』じゃねーし、分かんねーじゃん。」


何となく、あえて感じの悪い答え方をしてみた。

織田は表情は変えないままではあるが、徐々に口調がキツくなっているような、

まくしたてるような、そんな話し方になってきた。


「並大抵じゃない努力があってこそ、『奇跡の子』だ。俺にはよく分からないが、近所の公園で遊んだり、友達とゲームしたり、そんな幼年期への憧れもなくはないな。」

「それって『奇跡』と違うんじゃね?」


「そうかもしれないが、結果だけ見れば人為的だろうと『奇跡』は『奇跡』だ。常人が『奇跡』を妬む気持ちも理解できるが、そんな浅はかな嫉妬は、俺たちがどれ程の事をやらされてきたか知らないだけだ。」


ヒートアップしたのか元々こうなのか、織田は早口でそう言い切った。

織田の目は、無色透明で、俺越しにどこか遠くを見ている。

……恒太は、織田とどう接していけば良いか、何かできることはないか、

色々と思い悩んでいるようではあったが、

正直、織田に対しては、何ら心配する必要なんてない気がしていた。

なぜなら、しばらく接していれば、「ある事」に気づくからである。


「なー、織田ってやっぱりさー。」



「じゃん!」「ハッ!」

『石川&上川の「川」コンビ登場!』


俺の質問を何やら奇妙な奴らが遮った。慎悟と神様だった。

まるでヒーローが変身前に必要とするようなポーズまで決めて、

二人の揃った声は、人の少ない食堂にこだました。

当然ながら俺は、そんな派手な二人に何と答えるべきか分からず、

静かで落ち着いた雰囲気が、二人を圧殺した。


「で、何だ?」


二人にチラリと目を向けただけで、織田はまたこちらを向き直り、

俺の質問の続きを聞こうとした。さすがに呆れた。


「とりあえず、今はお二人に構ってあげた方がいーんじゃね?」


「ハッ!石川君、だから言ったのだ。神はそもそもこんな登場の仕方は反対であり、さらに上川というのはあくまで世を忍ぶ仮の名であるからして」

「でもさ、若干失敗したけど、うのぽんを元気づけるにはこれくらいした方が良いと思ったんだよな。」


織田は話を続けるのを諦めたのか、またチャーハンを食べ始めた。

何やら神様と慎悟はひそひそ声で打ち合わせを始めたが、

神様はともかく、慎悟の言葉には聞き捨てならない部分があった。


「誰を元気づけるって?」

「そりゃうのぽんでしょ。色々と悩んでるみたいだしね。」


慎悟は自信満々に言い切った。

話し相手に片っ端から心配されるようでは、俺もなかなか参っているようだ。


「気のせーじゃん。慎悟にこの前話したことなら別に気にしなくていーよ。」

「そうなの?せっかく神様にも頼んで、盛り上げたかったのに。」


先程のぶっ飛んだ行動は、慎悟の提案によるものだったらしい。

俺がきちんと説明すると、納得してくれた慎悟に対して、

神様はいまだ納得がいかないという様子で、自信満々の笑みを浮かべていた。


「ハッ!あながち間違いではないと思うがな。今の君の悩みについて、綿華君にも問い詰められていたのは記憶に新しい。」

「それはいつものことじゃね?あの人、他人への興味が尽きないし。」

「ハッ!そう言うと聞こえは良いがな。ともかく茶番は終わりだ。君にとっておきのゲストを呼ぼうではないか。」


神様は高々と言い放って、自らの後方に手を広げた。

「あ……どうも……」


ぺこぺこと頭を下げながらそこに立っていたのは、恒太だった。

いつも以上に申し訳なさそうな表情をしている。

たった一日話していないだけで、ずいぶん久しぶりに顔を見た気がした。


「ハッ!とっておきのゲストの正体は何を隠そうこの男!」

「恒太じゃん。」

「……あの……なんかすみません、僕はこんなつもりじゃなかったのに……」

「謝る必要ないよ!僕らは恒太の手伝いをしたかっただけだから!」


慎悟の発言から考えるに、どうやら慎悟&神様が突然現れて、

俺の様子や悩みを根掘り葉掘り聞こうとしたのは、

全て……恒太の疑念が基になっているらしい。

こうして、恒太が居た堪れない様子で立っているのもうなずける。


「みんなして俺に探り入れてくると思えば、全部恒太が仕組んだことだったんだね。」

「あ……その……」

「昨日、俺が元気ないとか何かあったかとか気にしてたじゃん。大方、それをみんなに相談したんじゃね?」

「……その通りです……でも僕は……」


「そんなどーでもいーことによく時間割けるね。正直いー迷惑じゃん。」


これ以上余計な詮索をして欲しくない。

それをハッキリ伝えるために、あえて俺は厳しい口調でそう告げた。


「そんな言い方……恒太はうのぽんを心配してるからこうやって」

「あの!……すみません、慎悟君……神様も」


俺に言い返そうとした慎悟を止めて、ついでに神様も制して、

恒太は自信もなさげに、ただし混じり気のない声で、こう言った。



「うのぽんと……二人だけにしてくれないでしょうか?」


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