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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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どーでもいーじゃん(5)


いつも通りの朝、クラスの教室に入ると、

何となくいつもより静かな気がして、気のせいかと思っている内に、

のがみんが慌ただしく近づいて来て、嬉しそうに言った。


「ねえ、今日『お嬢』お休みなんだってえ!」

「あー、なるほどじゃん。」

「え、何があ?」

「何でもねーじゃん。」


「お嬢」こと鈴木美沙子がいると、何らかのトラブルが起きる。

今日普段より落ち着いているのは、彼女が欠けているからだと納得した。

と同時に、尻拭い役の住田洋次も、今日はいつもより穏やかな日になるだろう。


「ねえ、今日住田くんフリーだからあ、お昼ご飯の時、突撃しなあい?」


前言撤回。野上は水を得た魚のように生き生きとしている。

住田にとっては、今日もいつもと同じく慌ただしい日になりそうだ。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



「良かったねえ!『お嬢』が居ないから、今日はひと息つけるねえ。」


住田と三人、食事をとり始めて間もなくして、野上が切り出した。

野上にとっては、「お嬢」は住田とテル君の恋を邪魔する者に他ならず、

居なくても良い、居ない方が良い存在にあたるのだろう。

しかし、住田の思いは、野上の思惑とは別にあった。


「『お嬢』もあれはあれで大変なんだぜ?どうしてもイメージが先行してるけど、悪い奴じゃないんだ。」

「そうなのお?」

「……的外れな感覚を持っているのは確かだがな。」


住田は、どうやら「お嬢」のことをそれほど悪く思っていないようだ。

思い返すと、テル君と別れた辺りから、

底無しの明るさはどこへやら、何となく影を帯びたように暗くなった。

あれから一週間が経って、かつての明るさを少しずつ取り戻しているものの、

やはりどこか寂し気な雰囲気をまとっている。

それと同時に、「お嬢」に対する感情がわずかに変わったように見える。

呆れたような諦念から、身に添うような同情へと。


「住田さー、テル君のことはもう吹っ切れた?」


遠回しに訊くのも面倒で、俺は住田に直接質問をぶつけた。

野上は一瞬戸惑うような表情をこちらに向けたものの、

当の住田は、何ら表情を変えること無く質問に答えた。


「どうだろうな。今すぐには考えられんかな。」

「ふーん。でも、また付き合う可能性狙ってんじゃね?」


「いや……テルの気持ちがこっちに向かない限り、もう難しいんだろ。俺だってガキじゃないんだ。諦めだって肝心さ」


住田は哀愁を帯びた微笑みで、そう述べた。

住田とテル君。あれだけ昔から一緒に居たこの二人が、

些細な事ですれ違って、それぞれ別の道を歩くことになってしまった。

野上はともかく、達也や恒太まで関係の修復を望んでいるようだが、

あいつらの考えと、俺の思っている事は少し違っていた。


「そもそも、これまでピッタリ気が合ったことが奇跡だったんじゃね?」

「……そうなんかもな。」


ちょうど住田はハンバーグ定食を食べ終わって、

俺たちに一瞥をくれると、そのまま席を立って食堂を後にした。

その後姿を見つめていると、野上が頬を膨らませる。


「もお!傷心の洋次君に何でそんな傷つくようなこと言うのよお!」

「別に大したこと言ってないじゃん。」

「言ってるよお!やっぱりうのぽん、なんか変だよう!」


体のどこかから、ギクリと音がした気がした。

……俺は今、いったい何をしているんだ?



「やっほやっほ!うのぽんのがみん今日も元気!?」

「ハッ!相変わらずシケた飯を食っているのだな庶民たちよ!」


ふと生まれた疑念から、深い思考の渦に流され始めた俺を、

ものすごい勢いと共に登場した、綿華と神様が邪魔をした。

顔をしかめた俺とは対照的に、野上は両手を合わせて喜んだ。


「あらあ❤綿華姐さんに神様!新しいBLの嵐を見つけたのお!?」

「別に見つけてないわよ。」

「ハッ!野上君、ちょっと自重したらどうかね?」

「腐女子はいつでも腐り続けるのよお!自重はしません❤」


「ハロハロー。わざわざ食堂で話しかけてくるとか、珍しいじゃん。」

「そうね。二人がすーみん(住田)とお話ししてたみたいだから、ちょーっと気になって来てみたのよ。」

「ハッ!神はただの付き添いである。」


綿華はテル君とクラスメイトであることを利用して、

テル君と住田の関係に踏み込もうとし続けている。

神様にはそこまで他人に干渉すべきではないと言われているようだが。


「まだ住田とテル君のこと気になってんの?やりすぎじゃね?」

「そうね、あたしなりに責任を取らなくちゃと思ってるのよ。」

「責任?」

「テル君に本音を言えってそそのかしたのはあたしでもあるからさ。すーみんが、テル君に甘えたままの関係は良くなかったのは事実だけど。」

「それで、今度はくっつかせようとしてんの?勝手じゃね?」

「どうかしらね。結局テル君とすーみんが両方納得がいく形なら良いんだけど、なんか二人とも、無理してるように見えるのよねーあたしには。」


テル君の最近の様子はよく知らないものの、

確かに綿華の言う通り、住田はどこか無理をしているようだった。

しかし、それを俺たち第三者がどうこうするなんて、

お門違いではないだろうか。神様も半分あきれ顔だった。

野上は輝かしい目で綿華を見ている。こいつはダメだ。

そして、綿華は怪しむような目で、俺の事を見ていた。


「なんかうのぽん、今日は突っかかるわね?」

「そんなことねーじゃん。」


「よく知らないけど、うのぽんもあんまり抱え込んじゃダメよ?ま、うのぽんはそういうの突っ込まれるの嫌いだろうから、あたしゃ追求しないけどね。」

「ええ!?姐さんナニを突っ込むんですかあ!?」

「ハッ!野上君は黙っていたまえ。」


「別になんも隠してねーじゃん。けど、余計なことまで深く突っ込まれるのって誰だって嫌じゃね?」

「ええ!?攻めはともかく受けは」

「ハッ!野上君はいい加減にしたまえ。」


綿華は挑戦的な目つきで俺の顔をじっくりと見た。

が、すぐにフッと息を漏らして、豪快に笑い始めた。


「あっはっはっ!うのぽんと口喧嘩するつもりはないわ。どうやらすーみんのこともあんまり教えてくれないみたいだから、撤退するとしますか!」

「ハッ!綿華君はもう少し迷惑を考えるべきではあるぞ。」

「ちゃお!楽しくやんなさいよ!」


綿華と神様はそう言って、俺たちに背を向けた。

彼女らの背中に、野上が「私は協力しますう!」と言葉を投げかけたが、

綿華は笑い、神様は呆れながら、食堂を出ていった。


テル君の気持ちも、住田の気持ちも、俺は同情してしまう。

周りの人間に知られたくないことまで踏み込んでくる、

良く言えば面倒見が良くて、悪く言えばお節介な奴らに、

俺もまた、辟易してきたところである。


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