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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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どーでもいーじゃん(3)


「君が剛司君か。」


その男は、俺の頭のてっぺんからつま先まで、

まるで品評会でも始めたかのようにじっくりと観察した。

俺はその目線から逃げるようにして、頭を下げる。


「……そう緊張しなくても良い。じきに慣れる。」


何と返事すれば良かったのだろう。俺は答えに窮した。

彼を見上げていると、ポンと彼の手が自分の肩に下りて来た。


「よろしく。」


氷のように冷たい手だった。服の上からでも、それが分かった。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



「あれ、うのぽん?」


ハッと我に返った時には、のがみんが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。

俺は何も言わずに、ハンバーグ定食の残りをかけこむ。


「……なんか、うのぽんも大変そうだねえ……」


のがみんは俺との距離を測りかねているような、

励ますような、慰めるような、憐れむような、何ともいえない表情で、

一瞬俺を見たのち、スパゲティをかみしめながら食堂を見渡している。

その時ちょうど俺は食べ切って、箸を投げ捨てるように置いた。


「別に大変じゃねーじゃん。ってか、そんなに俺の事気にしなくていーよ。

「え?でも……」

「俺のことなんかつまんねーじゃん。それよりゲイカップルでも探したらいーんじゃね?」


そう言い切った俺は、のがみんが食べ終わるのも待たずして、

席を立ち、食堂の外へ、風通しの良い場所へと出ていった。

彼女が後ろから俺を追いかける素振りは無い。

本来なら、のがみんには悪い事をしたと思うべきだろうが、

いまの余裕の無い俺に、これ以上誰かを相手に話し続けることは不可能だった。


深く考えるのは自分らしくないことなど承知しているが、

うまくいかないこと、どうにもならないことが身の回りで増え始めて、

それから思い出したくもない過去が、ふとした瞬間に、

記憶の塊から水滴が落ち、そこから水たまりが広がっていくように、

俺の脳の中である勢力を持ち始めるに至っていた。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



部活の練習を夜遅く終えた俺は、なるべくゆっくり寮に向かって歩いた。

ついでに、ショッピングモールに立ち寄って、文房具を買い足したから、

俺は門限ギリギリになって、ようやく寮にたどり着いた。

寮の玄関に上がるなり、勝田の姿が目に入って、向こうもこちらを見た。


「お、宇野お疲れさん!」

「ハロハロー。もーみんなご飯食べちゃった?」

「そうかもな!今日はバスケ部遅かったみたいだな。」

「まーね。試合近いし。」


勝田と他愛のない会話をしながらすれ違い、

俺は一度部屋で鞄を置いてから、もう人も少ない食堂へと向かう。

常に立っているからすぐ目立つ、神様の姿がない。恒太も居ないようだ。

気兼ねなく一人で食べようと思ったが、

入口近くの席に座っている、石川慎悟と目が合った。


「お、うのぽんも遅かったの?」

「ハロハロー。まーね。」

「そっか、せっかくだから一緒に食べない?」

「そーしよーじゃん。じゃ、取って来るわ。」


石川慎悟、転校生にして達也らの最後の幼なじみは、

転校当初のおどおどした様子をほとんど見せなくなった。

が、会話の節々に、どこか他人との距離を測りかねているような、

何かを恐れているような、そんな雰囲気を醸し出していて、

そんな彼の誘いを無下にするわけにはいかなかった。


料理を頼んで、のんびりと席へと戻る。

そういえば慎悟がサッカー部に入りしばらく経った。

せっかくだからその話も聞いておいたほうが良さそうだ。


「慎悟さー、サッカー部の調子はどうなの?」

「ああ、楽しいよ?まだ先輩も残ってるし、勝田たちが居るから、レギュラー争いはかなり厳しいかな。」

「へー。そもそも二年からレギュラー取れる方がおかしーんじゃね?」


うちの寮生で同じ学年に、勝田や秋山、志田の三人を中心にして、

サッカー部メインメンバーが揃っているため、彼らの噂を耳にすることも多い。

中でも勝田はサッカー部の次期部長にして、既にレギュラーを取っている。

久しぶりに復帰したばかりの慎悟では、レギュラーは厳しいだろう。


「勝田はすごいよ。サッカー部ではエース級だし、頭も良いらしいしさ。今さら思うけど、この学校は文武両道できる人が多すぎだって。」

「あー確かにじゃん。でも、そんなの一部だけじゃね?」

「とか言って、うのぽんも文武両道でしょ。バスケ部でベンチ入りしてるんだろ?それに、成績も優秀で。」

「根も葉もないうわさじゃね?」

「事実だって!ちゃんと聞いてるから。」


慎悟はそんな事を言いながら、軽くため息をついた。

達也を見ていても思うが、上を見上げて嫉妬する事の多い奴だ。

客観的に考えて、そこまでして上を見る必要はないのではなかろうか。


「別に気にしなくてもいーんじゃね?」

「ん、まあね。でも試験順位が下の方で部活も並だとやっぱさ……」

「達也もそーだけどさ、色々考え過ぎじゃね?バルガクは学力の上下差が結構激しいから、気にしても無駄じゃん。」

「達也もそうなの?」

「まーね。でもあいつはあいつで何だかんだ勉強して、テストでは平均よりだいぶ上の方に来たみたいじゃん。」

「そっか。達也は真面目だから、やっぱ尊敬しないとなあ。」


もうほとんど食べ終わっている慎悟は、腕を組んでうなずいている。

友人に対して尊敬できると言える時点で、慎悟も素直に真面目だと思うが、

それは彼や達也らの幼なじみの関係が、若干特殊だからかもしれない。

あまり二人で面と向かって話す機会も無いことだし、

ちょっと気になっていた部分を、ここでぶつけてみることにした。


「やっぱ慎悟たち幼なじみの関係って、おもしれーじゃん。」

「え、何が?」

「離れ離れになってもすぐ一緒に戻るってか、絆が強いというかさ。」

「ああ、確かにそうかもね。でも、結構いろいろあったけど。」


そう言って慎悟は苦笑いしたので、

俺は直球に、その場で思いついた質問を投げかけた。



「じゃ、それでもこうやってまた上手くいくって、最初から確信してたの?」


慎悟はポカーンとしていた。

あまりにも独りよがりな質問すぎて、意味が分かってもらえなかったらしい。


「いや、離れ離れになってた時いろいろトラブルがあったわけじゃん。又聞きした話だけど。それでも、慎悟がバルガクに転校しよーってなったじゃん?」

「うん?」


「それって、よっぽどの決意がないと無理じゃね?だって……家を出るってことじゃね?」


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