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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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どーでもいーじゃん(1)

あの二人の仲が悪かったことを、最初は気づかなかった。

そういうものだと思い込んでいたから。それが普通だと思っていたから。

だからあの雨の日に、リビングから叫び声にも似た声がして、

目が覚めた俺は忍び足で、リビングに近づいていった。


「……のよ?」

「……にも責任があるだろ。」


俺が寝ぼけていたのもあって、二人の声は良く聞こえなかったが、

何となくそのドアを開けてはならない気がして、

俺はリビングのそばに立って、耳を澄ましていた。

そして、俺ははっきりと聞いてしまった。


智里ちさとと剛司の事は好きにしてくれ。

 あの子たちなんか、俺は別に居なくたっていいんだ。」


リビングから差し込む光が、廊下の闇に溶けていく。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



まだ夜闇の抜けない夜、俺は嫌な夢を見て目が覚めた。

隣のベッドからは、一年生の寝息が聞こえる。

闇に目が慣れた俺は、ベッドから降りて机に近づく。


その引き出しの奥に、開けられないまま眠っている一つの封筒。

暗くて差出人も見えないが、俺はそれが誰からの手紙であるかを知っている。

しかしそれをそっと戻し、また俺はベッドへと戻った。

起きるにはまだ早い。もうひと眠りしよう。

あの記憶とは何か別の、少し愉快な事を考えながら――。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



呆然自失の俺のそばに、後ろから誰かが歩み寄ってくる。

驚きもせずに振り返ると、そこには三つ年上の姉、智里が立っていた。


「……何か聞いたの?」

「……いや……なにも……」


俺はとっさに嘘をついた。

これが夢なのかそうじゃないのかも分からなかった。

でも、信じたくなかった。だから嘘をついた。


姉はそのまま俺のそばに立ち、黙って俺を抱きしめた。

どう表現したらいいか分からない感情がうずまいて、

何となく胸が熱くなるような、そんな気持ちがあった。

しばらくすると、姉は俺を離し、俺の目を見ながら言った。


「剛司、もう寝よう。また、朝は来るから……」



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



目が覚めると、朝が来ていた。

七時半。バスケ部の朝練にはもう間に合わない時間だった。

隣のベッドにはもう一年生の姿もない。

起こしてくれても良かったとは思うが、俺も彼もお互い不干渉で、

お互いの生活の事など、何となくしか把握してないから、

こういうものだと理解している。仕方なく俺は洗面所に向かった。



髪型にあまり納得のいかないまま朝食を取っていると、

向こうからちょっと驚いた様子でこちらに向かってくる、

坊主頭で下がり眉が特徴的な、恒太の姿が目についた。

恒太が目の前にやって来た時、俺は先に声を掛けた。


「ハロハロー。」

「あ、おはようございます……あの、うのぽん、朝練は……?」

「サボッた。面倒だし、別に行かなくてもいーんじゃね?」

「そ、そうですか……」


恒太はもう食べ終わったらしく、

どうやら単純に俺のことを気にして近づいてきたらしい。

まだ何か聞きたそうな、しかし我慢しているような、そんな顔をしていた。

が、恒太は何も聞いてこない。会話が止まって、俺は黙々と食べ続けた。


「あ、あの……うのぽん、もう食べ終わりそうですね。」

「そーじゃん。」

「良かったら……が、学校一緒に行きませんか?」

「いーじゃん。」

「あ、はい……」


ネガティブな恒太は、俺相手にも誘うのに度胸が要るようだ。

恒太のためにも、俺はなるべく早く食べきって、

それで鞄を取りに一回部屋に戻った。


部屋の奥、窓のそばで机がひっそりと立っていて、

何か誘い込まれるような不思議な感覚を受けた。

俺はその感覚を断ち切って、鞄を手に廊下で待つ恒太の元へ戻る。


「あ、そういえば今日雨らしいですよ。傘持って行かないと……」

「なるほどじゃん。」

「体育祭の時、降らなくて良かったですね。あ、僕の場合降った方が良かったかも★」

「でも恒太、わりと活躍してたんじゃね?」


俺は恒太と階段を下り、傘を手に取って玄関を出た。

そういえば、一昨日の体育祭以来、恒太とは話していなかった。

……あの騎馬戦の作戦、神様と一緒に考えて、思い付きでやってみたとはいえ、

恒太には怪我をさせるかもしれなかったことを考えると、

いくらなんでもスルーしておけない事だと、俺はすぐ思い当たった。


「騎馬戦の時は悪かったじゃん。直樹くんがあまりにも強いから、一矢報いてやろーとちょー必死だったから。」

「え?ああ、もう大丈夫ですよ。」


恒太はケロッとした表情で答えた。

こういうのを根に持たないところが恒太らしい。

が、恒太はそれ以上に不思議に思った事があるらしかった。


「それより……なんかうのぽん、変な感じでしたよね……」

「変な感じ?」

「あ、いえ……何て言ったらいいか分からないんですけど、その……」


恒太はあの体育祭の時の俺の行動に、違和感を感じているらしい。

確かに、俺はあまり勝負ごとに一生懸命になるタイプではない。

しかし、去年のクラスマッチ然り、みんなが一致団結するときには、

それに乗っかってやるものだ。それが義理というものではなかろうか。

恒太は言葉を選びながら、不安そうに俺を見る。


「直樹くんって確かにすごいんですけど、彼はやっぱり足りない部分もあるというか、決して悪い人じゃないっていうか……」

「恒太何が言いたいの?」

「いや、直樹くんのこと、嫌いになったんじゃないかって……」

「あー元々何とも思ってないよ。むしろ色々オールマイティですげーじゃん。」


それを聞いて恒太はちょっとホッとしたかと思うと、

また心配そうな表情で俺を見つめるのだ。


「それならうのぽんが元気ないのは……何かあったんですか?」

「はー。……いーじゃん。」

「……え?」


俺はため息をついて恒太を見つめ返す。慌てたような表情だった。

自分の顔が徐々にひきつっていくのを感じた。俺は生唾を飲んだ。


「俺の事なんて、どーでもいーじゃん。」


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