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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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ネガティブ・アスリート(9)


一位でバトンを受け取ったのは部長会、城崎先輩。

彼は陸上部部長であり、当然の脚力。ものすごいスピードで圧倒します。

続いて執行部、花園先輩。オールラウンダーな生徒会長が、

陸上部相手に少しずつ差を縮めていきます。


そして先頭の城崎先輩が半周ほど回った頃……。

いよいよ菊池先輩のバトンが、「奇跡の子」織田直樹に渡ったのでした。


そこからは、まさに「奇跡」。

数秒もかからず花園会長を追い抜き、そのまま城崎先輩を追い詰め、

勝利を確信していたチーム部長会を唖然とさせると、

そのまま勢いを落とさずに、直樹くんがトップに踊りつめました。

会場全体がもはや叫び声とも取れない熱狂の渦に包まれて、

直樹くんは残りの一周もペースを落とさないまま走り抜きました。



「うおおおおお!!!直樹すげえええええええ!!!!!」

「何なんだあいつ!すごすぎだろおお!!!」


うちのクラスのテントも、関係ない人まで含めて叫びあがっています。

隣の佐久馬様も、珍しく空いた口がふさがらない様子で、

対照的に正くんは、もはや当たり前といった、特に驚きはない様子です。


「……すっげえな、直樹。」

「……そうですね。」


達也さんと僕も、歓喜に叫ぶと言うよりはただただ驚くばかりで、

これが「奇跡の子」か、と実感していました……。




「直樹よくやったけろ!チーム寮生、優勝だっぺー!!!」


後藤先輩と直樹くんが中心となって、チーム寮生は優勝に打ち震え、

結局二位を守り続けた部長会の城崎先輩はそれを驚嘆の目で見つめ、

それから、最下位ですが花園先輩は意外と涼しい顔をしていました。


「……皆さんには頑張ってもらったのですが、なかなか力及ばず。不甲斐無い結果におわってしまいましたね。」

「俺らなりに頑張ったさ!それじゃまた、体育祭最後までバッチリ運営していこうぜ!」


表情は明るいものの、どこか寂しそうな表情の花園会長を励ますように、

桜塚紅くんのお兄ちゃん、桜塚副会長が彼の肩を支えました。



「城崎君、お疲れさま。」

「……周防、お前は読んでいたか?織田直樹にあれほどの力があったと……」


優勝を逃して悔しいチーム部長会、議長と副議長が話し込んでいます。

実は直樹くん、正くんに代わって軽音楽部部長も務めているため、

唯一の二年生にして部長会に参加しているのです。

つまり、その気になれば彼をチームに勧誘する事もできたわけです。


「いいえ。まさか文化系クラブの二年生部長に、そんな逸材が紛れ込んでいるなんて……誰も気付けなかったと思うわ。」

「そうだな……織田直樹、今後目の離せない存在になるだろう……」



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



さて、僕の三つ巴リレー実況はここまでとして、

後はまた僕も自分の競技に戻りたいと思いますが、

とりあえずリレーから帰って来た直樹くんをみんなが祝福しており、

今や勝田さんと共に、クラスの中心でワイワイもてはやされています。

クラスの隅にいる僕と達也さんが話し掛けに行くにはハードルが高いです★


「それじゃー、俺戻るわー。直樹が暇になったらよろしく頼んますー。」


ずっと一緒に観戦していた正くんもクラスへと戻り、

(佐久馬様はいつの間にか消えていました。渡様のフォローでしょうか。)

僕と達也さんはポツンと取り残されました。

グラウンドでは一年生男子による棒倒しが始まっていて、

何となく達也さんと二人、呆然とその競技の様子を見つめていました。


一年生男子、上半身裸で掴みあいをしているわけで、

怪我の多い競技らしく、万全を期すため、

保健委員長の綿華さんと、保健室の先生二人が、そばで待機しています。

なんか三人でワイワイお喋りしてますね。仲良さそうです。

ところで最近の高一男子の発育はすごいですね。肉体が美しく仕上がって……


「……なあ、恒太。」

「は、はい!何でしょうか?」


達也さんに突然話し掛けられてびっくりしました。

学校で変な妄想はするもんじゃないです。みんなも気を付けようね★


「なんか直樹、俺たちから遠ざかっちまったな。」

「……え……」

「チヤホヤされてよ、元々そうあるべき奴だったのかもしれないけど……」

「そ……それは……」



「おい。」


達也さんに何て返せばいいか、言葉を選んでいたその時、

急に背後から、背丈の高い屈強な男性に声を掛けられました。

威圧感ならだれにも負けない六道さんです。相変わらず怖いです。


「そろそろ騎馬戦始まるぞ。」


……そういえばそんなのもありましたね。忘れてました。

いつの間にか、テントの生徒はほとんど集合場所に移動しており、

僕らは六道さんに呼ばれる形で、集合場所へと急いで向かいました。



「何やってたんだ?忘れてたのか?」


同じ騎馬のもう一人のメンバー、直樹くんが不思議そうに訊いてきました。

そういえばさっきのリレーの後、まだ言葉をかけていなかったのですが、

なんだか達也さん、クラスリレーの後とは違って、

何となく声をかけづらそうにしています。うーむ珍しい。

直樹くんはいつだって直樹くんですから、ここは僕の頑張りどころです。


「な、直樹くん……さ、さっきのリレー、すごかっ」

「この前の練習では達也が上に乗っただろ?でも達也は力が弱いから、確かに軽いけど、別の奴の方が良いと思うんだ。」


当の直樹くんに遮られました★僕の安定の影薄いボイスのせいです。

そして、直樹くんの提案は、非常にもっともらしいもので、

達也さんはあまり力がないため、敵の騎馬の帽子を奪えないのです。


「ケッ……じゃあ直樹、お前がやったら良いんじゃないか?リレーで活躍したお前だし、次もエースとして目立った方が良いだろ。」


承諾した達也さんですが、どうも棘のある言い方に聞こえました。

直樹くんはそんな嫌味に気づくわけもなく、簡単に納得してくれました。


「そうだな。それなら六道が先頭で、達也と恒太が二人後ろで支える。それで俺が上で良いな?」

「問題ない。」

「さっさとそうしようぜ。」

「だ、大丈夫です……」


直樹くんの提案で、騎馬のフォーメーションの変更が決まりました。

なかなか理想とはいえ、本番一発勝負でちょっと不安はありますが、

その辺も「奇跡の子」なら大丈夫かな、と思えてきます。

ところで、落合豚が上じゃなくて良かった。

デブすぎてみんなを押しつぶしてしまいます★


そんなこんなで、二年生最後のプログラム、騎馬戦が始まったのです。


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